リアル鬼ごっこ

髙地side

鬼でありながら、 みんなの帰還を誰より喜んでいる 大西の弾んだ声と共に 聞こえてきたのは、2人分の足音。

あぁ、よかった…。

また少し、肩の荷が降りた気がする。

北斗と西畑の無事を確認し、 大きく息をついた俺は 樹に視線だけを送った。

俺の目線を受けて 小さく頷いた樹も、 きっと分かっているはず。

まだロビーに集まっていないのが、 ジェシー道枝ペアだけになったことに。

西畑と2人でロビーに戻った北斗は、 疲れ切った顔をしている。

繊細な北斗のことだ。

神経を擦り減らすように 注意深く周りを見て、1日中 西畑を守ってきたであろうことは、 俺にも容易に想像できる。

よくやった。

そんな気持ちを込めて 北斗の肩を叩くと、 北斗は一瞬驚いたような顔をして、 すぐに小さく微笑んだ。

そんな北斗の様子に気づいた樹も、 優しく北斗の頭を撫でている。

くすぐったそうに笑う北斗は、 ようやく今日一日の緊張から 解放されたようだった。

あとはー。

藤原side

大吾の帰りを誰より喜んだんは、 昨日ゲームマスターに 鬼を任命された流星やった。

もう1人の鬼である恭平は、 なにわ男子が全員揃っていることに 安堵する様子はあったが、 みんなを襲わなければ ならない立場である以上、 その表情は曇ったままやった。

SixTONESさんから選ばれた、 最後の鬼、京本くん。

その彼は、心なしが顔色が悪い。

…。

何だか、嫌な予感がする。

みんながみっちーとジェシーくんの 帰りを待つ中、ふと大橋が口を開いた。

恭平がそう答えると、 大橋はあからさまに ホッとした顔をした。

良かった…。

まだ2人が罪を犯していないことが、 今の読めない状況の中で唯一の救いや。

でもー。

重い雰囲気の中、 樹くんが放った一言で 部屋の空気が一変した。

樹くんの問いに、京本くんは答えない。

北斗くんの息を呑む音が、 やけに大きく聞こえた。

京本くんの口が、わずかに動く。

声にならない声で 何かを告げた京本くんに 髙地くんが声を掛け、 森本くんが心配そうに 2人を見つめている。

髙地くん、森本くんの 沈んだ顔を見るのは、 ここに来て初めてのことやった。

何も起こらないでくれー。

直後、俺の願いは、 すぐに打ち砕かれることになる。

こんどははっきりと、 京本くんの口がそう動いたのが見えた。

今日あったことをポツポツと 語った京本くんの表情は、 その場にいる誰よりも苦しげで、 見ているこっちまで 心が痛くなるようやった。

途中で戻ってきたみっちーの 顔色も最悪で、すぐにでも 倒れてしまいそうな程に疲弊している。

そんな2人の様子を見とったら、 俺ら１０人は他に何も言えんかった。

こうして俺たちの命を賭けた デスゲームのイチニチメには、 静かに幕が降りたのだった。