TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

タモツ

……ここ、どこだよ…………?

歩き続けてから、どれくらい経ったのかわからない

タモツ

スマホを使おうにも圏外だし……

同じような景色は続く

タモツ

(そもそも、この道で合ってるのかさえ──)

小道沿いに進むと、森を抜けた

タモツ

タモツ

……ん? あそこにいるの──

池のほとりに人がいた

タモツ

よかった。オレ以外にも人がいた……!

タモツは安堵し、池のほとりへ向かった

シートを引き、羽根付きのパーカーを来た青年が腰を下ろしていた

タモツ

あの、すんません……

タモツ

ちょっと、お尋ねしたいことが──

また来たんだね

タモツ

……え?

ぼくのこと覚えてない?

タモツ

(──どっかで会ったっけ?)

タモツ

タモツ

(いや、初対面のはず……)

タモツ

(誰かと見間違えてるとか?)

まぁ、しかたないか

突っ立っているのもなんだから

こっちで少し休まない?

歩き回ったんでしょ?

森の中を歩きまわり、タモツは疲れていた

遠慮しなくていいからさ♪

タモツ

……それじゃあ、お言葉に甘えて…………

タモツはシートの上に腰を下ろした

お腹空いてない?

バスケットの中はビスケットが入っていた

遠慮しなくていいよ

タモツ

…………

タモツ

(文字が書いてある……)

それビスケットレターって言うんだ♪

タモツ

ビスケットレター?

アイシングで文字を書いて

宛名で1枚、メッセージで1枚

それをイチゴジャムでサンドするの

おいしいよ♪

宛名には『ドードー』と書かれていた

タモツ

ドードー?

ドードー

こっちでのぼくの名前☆

ほかのビスケットレターにも、文字が書かれていた

宛名『to なつみ』 メッセージ『愛してる』

タモツ

(……なんだ、コレ?)

タモツ

(もしかして、こいつが書いたのか?)

ドードー

ドードー

ねー、ぼくがそれを書いた思ってんの?

ドキッ

タモツ

(なんでわかったんだ……?!)

ドードー

心外だな〜

ドードー

言っておくけど、ぼくが書いたんじゃないからね?

ドードーは自分宛てのビスケットレターを口にした

もぐもぐ

タモツ

(……これにも『to なつみ』て、書かれてる)

ほとんどのビスケットレターの宛名には『to なつみ』しか、書かれていなかった

タモツ

(……なつみ? どこかで…………)

タモツ

タモツ

(……ああ、そうだ……)

タモツ

(うちの店の常連さんじゃないか……)

タモツ

(なんで、忘れてたんだろう……?)

ぐうぅぅ

タモツ

…………

急に空腹感を覚え、ビスケットレターをひとつ取った

『to ██』 メッセージ『二度と現れないで!』

タモツ

(なんだ、コレ……?)

宛名は塗りつぶされ、メッセージは拒絶を示していた

もぐもぐ

ビスケットの風味と、イチゴジャムの甘酸っぱさが口の中に広がる

それでも、空腹感が満たされない

もうひとつビスケットレターを取る

『to ██』 メッセージ『いい加減にして!』

明らかな拒絶に戸惑いつつも、タモツはビスケットレターを口にする

もぐもぐ

『to ██』 メッセージ『あんたなんかと、付き合う気はないわ!』

ズキっ

タモツ

(……頭が…………!)

頭を押さえる

江原なつみ

いつもうちのショートケーキを買ってくる常連のお客さん

気さくで人柄もよくて、いつしか彼女に惹かれていった……

しばらくして、江原なつみに思いを伝えた

なつみ

……ごめんなさい

なつみ

わたし、彼氏がいるの

あっさりフラれた…………

諦めきれなかったオレは彼女をつきまとうようになった

なつみ

二度と現れないで!

警察に通報され、捕まった

それが原因で店から客足が遠のき、潰れてしまった…………

タモツ

(もう、オレには彼女しかいない……)

あれ以来、彼女は引っ越してしまい見つけるまで時間がかかった

なんとか、江原なつみの居場所を突き止めたが…………

なつみ

いい加減にして!

タモツ

オレはただ、あなたと……

なつみ

あんたなんかと、付き合う気ないわ!

なつみ

それに、わたしは彼氏と結婚するの!

タモツの中で“何か“が壊れた

なつみ

邪魔しないでよ!

タモツ

……なんで

タモツ

オレじゃないんだよ……!

隠し持っていたナイフで刺した

なつみ

……!

タモツ

どうして……!

何度刺したのかわからない

気づいたときには、彼女は動かなくなっていた

タモツ

……あ…………

自分の仕出かしたことが恐ろしくなり、タモツは首をナイフで刺し自殺した…………

タモツ

……そうだ…………

タモツ

オレは死んだんだ……

タモツ

彼女を道連れにして…………

タモツ

でも、それなら…………

なぜ、なつみがいない?

ドードー

助かったからだよ

タモツ

……助かった?

ドードー

きみに刺されたあと、まだ彼女は息があったんだ

ドードー

たまたま通りかかった人に助けられて

ドードー

病院に搬送されて、一命をとりとめたよ

タモツ

ドードー

いろいろあって、しばらくして彼女は結婚♪

ドードー

子どももいて幸せに暮らしてる

タモツ

ドードー

ちなみに、きみのことは全然覚えてないから

タモツ

そ、そんな……

タモツ

じゃあ、なんのために……オレは…………

ドードー

死に損じゃない?

ドードー

まあ、罪人のきみなら当然だけどさ

タモツ

……ウソだ

タモツ

そんなのウソだ……!

タモツ

彼女が、オレのことを覚えてないんだなんて……!

ドードー

待ちなよ

ガシッ

頭を抱え、そのまま駆け出そうした瞬間、タモツは首根っこを掴まれ、地面に倒された

タモツ

……!

ドードー

ねぇ、知ってた?

ドードー

これで5回目なんだよね〜♪

タモツ

……5回目?

ドードー

ぼくときみがこうやって会うの──

ドードー

ドードー

きみ、自分がループしてるって自覚ある?

タモツ

……ループ?

ドードー

最初ぼく言ったはずだよ?

『また、来たんだね』

ドードー

都合のいいときだけ、記憶を消すなんて

ドードー

器用だな〜

タモツ

ドードー

でももう飽きちゃった──

ドードー

あとはきみ一人でやればいいよ♪

タモツ

……え?

ドードー

きみはここで、永遠に彷徨い続ける

ドードー

まさに無限地獄

ドードー

自分以外、誰もいない世界にどれだけ耐えられるかな?

にこ

ドードー

せいぜい楽しんでね♪

ドードー

ドードー

──あ、お腹空いたら

ドードー

ビスケットレター食べていいよ

××× au pays des merveilles

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

100

コメント

2

ユーザー
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚