2人だけの甘い楽園。

真っ暗だ、

瑞希は背を向け、こちらに気づいていない。

司くんに殴られたのも

首輪や足枷をつけられたのも

どれもこれも、全部"夢"

だってここに瑞希がいるから

どうして後ろを向いてくれないのだろうか。

動く気配もない。

ベチャｯｯベチャｯｯ

顔の半分が溶け、下に落ちていく。

片目は落ち、顔の皮膚は爛れている

違うｯｯ、違うｯｯ

僕のせいじゃないｯｯｯｯ

元は司くんがｯｯｯｯ、

殺したの??

苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しいｯ

違うｯｯ、違う、違うｯｯ、

僕のせいじゃないｯｯ、

僕は何もやってないｯｯ、

だから何もｯｯｯｯ、

あたま、が、われそう…だ、

ゆめ、じゃ…なか、った､

なんで僕、生きてるんだろう、ｯ

ガタンｯｯ

司くんだ、司くんだ、司くんだ、司くんだ、司くんだ、ｯｯ

また殴られる、

また首輪が絞まってっ、

ガチャｯｯ、

震えて声さえも出ない

にげ、なきゃ、

おね、が…い、

う、ご、い…て、あし…、？

目眩と吐き気がする。

ﾋﾞﾁｬﾋﾞﾁｬ、

いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ

蹴られるｯ、殴られるｯ、殺されるｯｯ!!

意味がわから、ない

どうして、君が、

司くんが僕を抱き抱える。

押した､??

今僕、司くんを突き飛ばしｯｯ、

頭が痛い、

誰かに殴られているみたいに

われて、…しま、い…そう、だ

わけが分からない

どうして今、抱きしめられてるんだ？

ましてや、あんな暴力的だった彼が

僕を抱き、しめ、た？？

君にやられたのに

なぜそんな苦しそうな顔をするんだ、

こんなのどっちがやられたかなんて、分からないじゃないか、

ｼﾞｬﾗ、

足枷が彼の手によって外される。

頭は大混乱だ。

一体何を思って言っているのだろうか。

ﾋｮｲ

扉が音を立てて開いた。

初めてあそこから出た。

まさか、地下室だったなんて、。

大量の鍵と鎖。

言葉を失うほどだった。

恐る恐る首を縦に振る。

声や体が震える。

司くんがそっと優しく下ろしてくれる。

バタンｯ

それだけを言い残し、外に出ていってしまった。

昨日の彼とは全く違う。

付き合う前のキラキラした彼だ。

どうなっている、？？

かすり傷に水が触れる。

赤黒い痣だらけだ。

こわい、よ、

大きな窓から日が差してくる。

まぶ、しい、

鼻が詰まっているせいか

匂いが全くもって感じ取れなかった。

椅子を引かれ誘導される。

真っ直ぐ歩いていくが体の色んな部位が痛く、

やっとの思いで席に着く。

彼と対面になり座る。

目線をあげられない。

怖くてあげることが出来ない。

あまりの大きさに耳を塞ぐ。

ぽたぽたと涙が頬を伝う。

ガタンｯｯ、

体の痛みなんて関係ない

僕は一瞬にして彼の胸ぐらを掴む。

ずるずると下に座り込む。

仲間を失い、裏切られ、

心はぽっかりと穴が空いてしまった。

キッと睨みつける。

顔にぽたぽたと落ちてくる。

拳を握り締め、今にも消えてしまいそうだった。

なぜかまた、

涙が止まらない。

泣きたいわけでもないのに、

とま、らな、い

掠れ震えた声。

泣いているはずなのに、

今の彼はどこか少しだけ笑っているように見えた。

どうして、暴力を振ってきた彼を僕はここまで心配してるのだろうか。

確かに好きでは無い。

ただの興味本位かもしれない、

こんな状況になっても興味本位だなんて、

僕は、なんて馬鹿なんだろう思う。

彼と話していて昨日の狂った雰囲気はしない。

大丈夫、だか…ら、ｯ

表情が歪みだす。

衝撃の発言に目を疑う。

彼が体の力が抜けたみたいに倒れる。

頭を強く押え苦しそうだ。

言葉の意味を理解するべきだった。

心の隙が出来れば、

誰だって油断する。

おなか…、がｯ、

体が震えだして動けない。

いまさっきの彼とは全く違う、

油断した結果だ、

おねが、い

そう願わずには居られなかった。