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#怪異
イキリ火の玉
812
耐え内
233
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私の問いに先輩は机の上を指差した
そこに置かれているのは、どこにでもある透明なビニール傘だった
コンビニで売っているような安物。 持ち手には少し傷があり、ビニール部分もところどころ曇っている
先輩は傘を見ながら、資料を一枚めくった
最初の通報は三日前だった
駅前の交番に、一人の男性が傘を届けた
そう聞いた警察官に、男性は首を横に振った
男性は傘を差し出した
警察官は不審に思いながらも受け取った
その直後だった
傘の柄を握った瞬間、警察官も同じ感覚を覚えた
誰かに返さなければならない
誰に?
どこに?
何のために?
分からない
ただ、それだけが妙に強く頭に残った
交番では念のため怪異現象対策管理局へ連絡
調査員が到着した時には、傘は落とし物保管庫に置かれていた
調査員が傘を持ち上げる
その瞬間
手の中に、知らない光景が浮かんだ
雨
古い駅
走っている人
そして、誰かの声
____待って
調査員はすぐに手を離した
その日から調査が始まった
傘そのものには、特殊な反応はなかった
発熱なし
電磁的な異常なし
物理的な変形なし
自律行動もなし
ただし、触れた人間には共通して
「誰かに返さなければならない」
という認識が生じた
しかも、その感覚には個人差がなかった
調査員も
警察官も
保管担当者も
全員が同じことを言った
「誰かに返す必要がある気がする」
そこで管理局は、傘の来歴を調べることにした
製造元
販売店
拾得場所
周辺の防犯カメラ
落とし物の記録
そして____古い行方不明者届け
調査の途中で、一件の記録が見つかった
二十年前
この地域で、当時二十七歳の男性が行方不明になっていた
最後に確認された場所は、現在の駅から少し離れた旧駅舎付近
その男性が失踪した日は、激しい雨だった
そして遺族の証言には、こうあった
「あの人は、出かける時に必ず透明な傘を使っていました」
製造番号を照合すると、一致した
その傘だった
私が聞く
先輩は首を横に振った
先輩は資料を閉じた
怪異は、分からないものを分かったことにしちゃいけない
新人は黙った
それ以上のことはまだ証明されていない
コメント
1件
読み終わりました。透明なビニール傘が「誰かに返さなければならない」という共通の認識を触れた人に与える――この設定がすごく気持ち悪くて、でも惹き込まれました。特に「まだ証明されていない」で区切る先輩のスタンスが好きです。怪異を解明しようとする過程がこれからどう描かれるのか、後編が楽しみです。