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あの子が死んだ

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あの子が死んだ

1 - あの子が死んだ

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2020年08月06日

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私には、死者が見えている。けれど、私が見えるのは1人だけ。唯一私と仲良くしてくれた、あの子だけ。

あの子は、去年の夏、車に轢かれて死んだ。事故、だった。

いじめられて、一人ぼっちだった私に、唯一仲良くしてくれたあの子。

けれど、そんなあの子は、もういない。

彼女は彼女が轢かれた交差点で、ただ突っ立っている。

私たちは、互いに互いを無視している。目線だけで、会話を交わす。

私があの子を見ると、彼女も私を見る。ただ、それだけの関係。

私の、せいだ。

気がつけば、私は学校まで来ていた。

今の私は、中学3年生、の、はずだ。

あの子を失った日から、私の自我は薄くなっていった。

どうして……。

出てくる言葉は、いつもそれだけだ。

あの子の死が、信じられなかった。

一年たった今でも、私は朦朧とした意識のまま生きている。

生きて、いる。

教室に入り、自分の席を見ると、いつものように花が置かれていた。

私なんかの席より、あの子の席に置けばいいのに。

私が椅子を引くと、みんながこっちを向く。

何が面白いというのか。

隣のクラスに行くと、あの子がいた。彼女はきっと、自分が死んだことに気がついていないのだろう。

あなたは死んでいるんだよ、と、言ってあげるべきなのだろうか。

私には、分からなかった。

私はあの子の家についていった。こんなことをするのは、今日が初めてだ。

体が、勝手についていくのだ。どうしてなのか、それは私にもわからない。

昔は話しかけてくれたあの子の家のおばさんも、今では私を無視する。それは私の家族も同じだった。

ただ、驚くのだ。私が何かを動かしたり、触ったりするだけで。

凛ちゃん。

……桜。

桜と話すのは、一年ぶりだ。けれど、もっと長いこと話していないように感じる。

私、ずっと待ってたの。

ずっと、ずっとよ。

あなたが私に憑いてきてくれる日を、ずっと待っていたの。

そういう桜は、泣いていた。

凛ちゃん、あなたは……。

わかってる。

だから……言わないで?

……凛ちゃん。

最後に笑顔を見せてくれた桜に、私も笑顔を見せて。私は桜の家を飛び出した。

わかってる。

わかって、いたの。

本当は、一年前に死んだのは。

私、だったんだよね?

だから、みんな私の机に花を置いた。

だから、私が物を動かせば驚いた。

わかっていたのに、私は認めなかったんだ。

……悔しいなあ。

でも、もういいか。

私は駆け回った。愛しい家族のいる家。楽しかった学校。

そして、最後に私の埋められている墓地に来た私は。

みんな。

バイバイ。

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