テラーノベル
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ある日の朝、いつものように1人の少女が教室に入ってきた。
山田鈴子。彼女は学年トップレベルの拗らせ陰キャだ。
山田鈴子
鈴子はいつもボカロを有線イヤホンから流しながら登校していた。
クラスメイトの女子
山田鈴子
鈴子は机にカバンを置き、荷物を取り出した。 うさぎ、ピンク、リボン。 全てが可愛いもので統一されていた。
山田鈴子
誰にもみせる訳じゃない。 それでも、自分が満足出来ればそれでいいのだ。
カバンの中がピンクまみれな中、一つだけ真っ黒な小さなノートが入っていた。
山田鈴子
それは鈴子の妄想が詰め込まれた禁断の書だった。 すずこが今まで妄想したあらゆる事柄が、全てこのノートに書き残されている。
昨日はこのノートに、自分のコードネームのアイデアをまとめていた。 いちばんお気に入りな候補は、 『月詠クロエ』だった。
山田鈴子
鈴子は思いついたように隠れてノートを開き、ペンを走らせた。
『 世界観設定 ルナ・レクイエム 観測者第十三位 終焉の白兎 』
山田鈴子
そう、彼女は高校生にもなって未だに厨二病を拗らせていた。
キーンコーンカーンコーン
予鈴がなった。 こうして、鈴子の日常は今日も幕を開けた。
夕焼けは、今日も綺麗だった。
教室の窓から見える空は茜色で、部活動へ向かう生徒たちの笑い声が廊下に響いている。 そんな当たり前の放課後。
山田鈴子は、自分の席で小さく息をついた。
山田鈴子
カバンを抱え、誰にも気づかれないように教室を出る。
人と話すのは苦手だった。 嫌いじゃない。
でも、何を話せばいいか分からない。 話しかけられると頭が真っ白になる。
だから今日も、静かに帰るだけ。 ───そのはずだった。
清水ヤマト
少し高めの落ち着いた声。 鈴子の肩がぴくっと震えた。
振り向くと、数学教師の清水ヤマトが立っていた。
長い袖を捲った白いシャツ。 細い目は鈴子を見つめていた。
山田鈴子
清水ヤマト
ヤマトは1枚のプリントを持っていた。 それは昼休みに探していた数学のプリントだった。
山田鈴子
山田鈴子
清水ヤマト
山田鈴子
鈴子のプリントを受け取ろうとした手が少し震えていた。 ヤマトは一瞬だけその様子を見ていた。
清水ヤマト
清水ヤマト
清水ヤマト
山田鈴子
清水ヤマト
山田鈴子
清水ヤマト
山田鈴子
ヤマトはにこっと笑って職員室へ入っていった。 鈴子は固まったままだった。
山田鈴子
山田鈴子
顔が熱い。 ちゃんと返事ができていただろうか。 変な声じゃなかっただろうか。
そんな事ばかり考えながら、すずこは校舎を出ていった。
夜。
鈴子は自室で数学の問題集とにらめっこをしていた。
山田鈴子
誰も聞いていないひとりごと。 ───その時だった。
────キィイイ……
耳鳴り。窓ガラスが震える。
山田鈴子
外に出て空を見上げる。 夜空に黒いひびが入っていた。 まるで、空そのものが割れているような。
次の瞬間、その裂け目から‘’何か”が落ちてきた。 人の形をしている。 でも顔がない。
影だけでできたような物体。 地面に着地すると、街灯が一斉に消えた。
山田鈴子
周囲の人は普通に歩いている。 誰も気づいていない。
影だけが、ゆっくり鈴子の方を向いた。
ぞわりと背筋が凍る。 目なんてないはずなのに。
見られている。
そう確信した。
影がこちらに向かって走り出した。速い。 鈴子は逃げようとするも足が動かない。
山田鈴子
その瞬間。
───パンッ!!
乾いた銃声。 影の頭が吹き飛んだ。
山田鈴子
誰かが鈴子の前に立っていた。
黒いロングコート。 右手には拳銃。
振り返ったその人物を見て、鈴子は目を見開いた。
山田鈴子
昼間まで数学を教えていた先生は、別人のような目をしている。
清水ヤマト
低い声。 その直後、空の裂け目から何十体もの影が降ってきた。
山田鈴子
ヤマトは無線に手を当てる。
清水ヤマト
冷静な報告だった。 その直後。
ビルの屋上。 道路。 電柱の上。 黒い戦闘服の人影が次々と現れた。
銃声。 爆発。 閃光。 街全体が戦場になる。
なのに、通行人は誰一人として気づかない。 スマホを見ながら歩いている。 コンビニへ入っていく。 笑いながら帰宅している。
まるで世界がふたつ重なっているようだった。
山田鈴子
清水ヤマト
山田鈴子
清水ヤマト
ヤマトは振り返らない。 ただ銃を打ち続ける。
一発。また一発。 無駄がない。 影が次々と消えていく。
だが、その中の一体だけ、他のとは違った。 大きく、異様な圧力。 それはまっすぐ鈴子を捉えた。
ヤマトの表情がはじめて変わる。
清水ヤマト
巨大な残響が飛んだ。 狙いは鈴子だった。
ヤマトが間に入る。 しかし間に合わない。
山田鈴子
山田鈴子
山田鈴子
その時。近くで誰かが吹き飛ばされた。
保全局の隊員だった。 手から離れた拳銃が、アスファルトを滑って鈴子の足元へ転がってくる。
鈴子は反射的にそれを拾った。 重い。冷たい。手が震える。
山田鈴子
大きな残響がどんどん迫ってくる。 心臓が痛い。息ができない。
その瞬間、鈴子の頭の中で、現実がふっと遠のいた。
???
知らない声。でも鈴子は知っている。
自分が何年もノートに描き続けてきた設定。 世界を滅ぼす黒き魔獣。 選ばれし観測者。 月光を宿す聖銃。 全部、自分の妄想。
山田鈴子
山田鈴子
山田鈴子
山田鈴子
山田鈴子
鈴子は小さく笑った。
山田鈴子
こんな状況なのに、少しだけ楽しかった。
山田鈴子
山田鈴子
パンッ。
弾丸が一直線に飛ぶ。 残響の核を正確に撃ち抜いた。 巨大な体が崩れる。
───静寂。 鈴子は我に返った。
山田鈴子
山田鈴子
ヤマトも少し驚いた顔をする。
清水ヤマト
山田鈴子
鈴子は顔を真っ赤にしてしゃがみ込んだ。 厨二病セリフを大好きな先生にガッツリ聞かれてしまった。
山田鈴子
ヤマトは倒れた残響を確認し、ゆっくり鈴子のほうに歩いてきた。
清水ヤマト
ヤマトは黒い戦闘服を着ていて、学校と少し印象が違って見えた。 赤い瞳が鈴子をじっと見つめていた。
山田鈴子
清水ヤマト
それだけ言って、鈴子の手から銃を抜き取る。
山田鈴子
そのとき、ヤマトが片耳に装着していたイヤホンから声が響いた。
保全局職員
保全局職員
数秒の沈黙がおちてから、再び声が響く。
保全局職員
清水ヤマト
保全局職員
鈴子は話の意味が全く理解できていなかった。
山田鈴子
ヤマトは通信を切り、しばらく黙って鈴子を見た。
清水ヤマト
山田鈴子
清水ヤマト
山田鈴子
清水ヤマト
山田鈴子
清水ヤマト
清水ヤマト
山田鈴子
清水ヤマト
鈴子の顔から血の気が引いていった。
山田鈴子
山田鈴子
山田鈴子
山田鈴子
ヤマトは黙って聞いていた。
清水ヤマト
その一言に鈴子は少し安心する。
山田鈴子
清水ヤマト
山田鈴子
清水ヤマト
ヤマトは空を見上げる。 まだ裂け目は閉じていない。
清水ヤマト
清水ヤマト
山田鈴子
清水ヤマト
山田鈴子
清水ヤマト
清水ヤマト
その言葉に鈴子は息を止めた。
山田鈴子
もちろんヤマトにそんなつもりはなかった。
守れる場所に置く。 それが一番合理的だから。 ただ、それだけ。
でも鈴子にとっては違った。 人生で初めて、誰かに必要だと言われた気がした。
山田鈴子
小さな返事だった。 ヤマトは踵を返す。
清水ヤマト
山田鈴子
清水ヤマト
鈴子はもう一度だけ学校を振り返る。 昼間までいた教室。 テスト。明日の数学。 全部、同じ場所にある。
なのに、自分だけがもう戻れない気がした。
夜風が吹く。 空には、まだ黒い裂け目が開いていた。
羽海汐遠
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コメント
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第1話、めっちゃ刺さったわ…!陰キャで厨二病拗らせてる鈴子が、まさか自分のノートの設定が現実になるとは思わん展開、熱すぎる🔥「終焉の白兎」とか「月詠クロエ」ってワード、厨二心くすぐられるし、先生がまさかの戦闘員ってギャップがもう最高。ラストの先生の「世界の裏側です」で一気に引き込まれたわ。続きが気になる…鈴子がどう成長していくのか、めっちゃ楽しみ!