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あれから何週間がたっただろう。

あの日、出ていってと

強く言われ帰ってしまった。

病院へ顔を出していなければ

連絡も取っていない。

短いようで長い1日を

ただただ過ごしているだけ。

少しだけ花で飾った生活が

一気に色が無くなった。

翔真

お前今日こそ瑠璃んとこ行ってやれよ

唯人

無理だよ

ここ最近は放課後を

教室で過ごしている。

あの場所はもしかしたら

彼女にあってしまうのではないかと

行っていない。

翔真

俺、昨日会いに行ったんだ

翔真

そしたらあいつ

翔真

お前の心配してた

翔真

告白しようと思ってたけど

翔真

あんなんじゃ無理じゃねぇか

そんなこと言われても

今更合わせる顔なんてない。

だってまだ来ていなかった梅雨が

今はもう終わっているのだから。

それくらいの期間

彼女に会っていない。

どんな理由で彼女に会えばいいのか。

翔真

いいから会ってやれよ

翔真

俺からのお願いだ

瑠璃

なんで来たの

いつもより重い扉を開け

彼女に姿を見せる。

彼女はこちらなんて見てはくれない。

初めて彼女に会った時みたいだ。

唯人

僕にはやらなきゃいけないことがある

唯人

マネージャーの仕事くらい

唯人

最後までやらせてよ

言い訳なんていくらでもある。

でもこれは僕に1番ピッタリな言い訳だ。

瑠璃

完成なんて

瑠璃

出来ないかもしれないのに?

唯人

完成出来なかったら僕が書くよ

唯人

僕は物語が途中で終わるのが

唯人

どうしても嫌いなんだ

それから僕はまた病院に通うことになった。

今度はちゃんとマネージャーとして。

一緒に話の展開を考えたりする。

2人で一緒に体験した

経験を活かしながら。

僕はその時初めて

物語を書くことの楽しさを知った。

あんなに苦痛で嫌いだった物語を

彼女のおかげで。

それからあっという間に1ヶ月がたった。

彼女の物語はもうほぼ完成したと

言ってもいいくらいには

出来上がっている。

物語が完成に近づくにつれ

彼女の体調不良も増えていった。

僕は不安な日々を過ごした。

物語が完成すると共に

彼女が僕の前から消えてしまうのではないかと

どうしても思ってしまう。

そんな暑い夏のこと。

突然彼女に呼び出された。

唯人

なんだよ

唯人

僕に悪人でもやれと言いたいのか

「今すぐ来てほしい」

そんな連絡だった。

普段の僕ならなんの迷いもなく行くだろう。

ただ常識を持っている僕だ。

こんな夜に病院に忍び込むなんて

躊躇うに決まっている。

瑠璃

本当に来たんだ

唯人

瑠璃が来いって言ったんでしょ

瑠璃

私を屋上に連れて行って

今日の彼女はいつもに増して

わがままを言う。

面会時間外に病院に来たのだ。

今更それはダメだという資格もない。

僕は出会った時と比べて

随分と細くなった彼女を

車椅子に移す。

骨董品を扱うかのように優しく。

見回りをしている看護師に見つからないように

ゆっくりと静かに車椅子を押す。

普段なら色々な雑音でいっぱいの廊下だが

異様な静けさに襲われる。

だがこれは侵入の醍醐味とも言えるだろう。

屋上は車椅子で行くには限界がある。

どうしても最後は自力で

行かなければならない。

僕は彼女を背負う。

彼女はとても軽かった。

屋上への扉を開けると

夜空に星がいっぱい広がっている。

屋上には丁度よくベンチが置いてある。

彼女をそこに降ろして

並んで星空を眺める。

瑠璃

夜、誰かと過ごすのも

瑠璃

素敵な青春だよね

唯人

そうだね

唯人

そういえば

唯人

どうしてそんなに青春にこだわるの?

彼女と過ごしてきた中で

"青春"という言葉を何度聞いただろう。

彼女の口癖となっていると思う。

瑠璃

私が体験したかったからだよ

瑠璃

ただそれだけ

物語を書くためだと言うかと思った。

いや、最初はそう思っていた。

もし彼女が死んでしまうのなら

もっと大切にするべきだった。

瑠璃

もし

瑠璃

物書きとして言葉を選ぶなら

瑠璃

月が綺麗だね

瑠璃

なんて言うかな

横を見るとただ彼女は

上を見て星空を眺めているだけ。

僕は一体どのように応えればいいのか

分からなかった。

唯人

それは女の人が言っていい言葉なの?

瑠璃

男の人じゃないととか

瑠璃

今の時代関係ないよ

瑠璃

ねぇ

瑠璃

唯人くんならどうやって返してくれる?

唯人

僕も

唯人

一緒に死んでもいいかもしれない

瑠璃

言葉選びはちゃんとしないと、ね?

彼女は僕の体を急に寄せてくる。

驚いて彼女の方を見ると

僕も何が起こったのか

よく分からなかった。

ただ唇に彼女の温もりを感じた。

あの日から月日が経つのは速く

1ヶ月が経った。

彼女は

僕の前から消えた。

この小説が終わる時、僕らの恋も終わりを告げる。

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