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サニーレコード・ブース
新堂さん
日野森志歩
新堂さん
望月穂波
穂波は志歩のために新堂さんと話し合い
新堂さん
事務所の応接室。 午後の日差しがカーテン越しに差し込み、机の上の書類を淡く照らしている。 穂波、一歌、咲希が静かに座り、 その隣に志歩が車椅子で並んでいた。 正面にはLeo/needを担当するマネージャー、新堂が腕を組んで話を聞いている。 穂波がゆっくりと口を開いた。
望月穂波
新堂は少し考え込むように視線を落とし、そして静かに頷いた。
新堂さん
咲希がほっと息をつき、一歌が深く頭を下げた。 志歩は少し驚いたように目を見開く。
日野森志歩
新堂さん
新堂の声は落ち着いていた。
新堂さん
その言葉に、志歩の瞳がわずかに潤んだ。 穂波がその横で、静かに手を握る。
望月穂波
新堂は柔らかく笑みを返す。
新堂さん
4人「ありがとうございます!」
次の日・・・バンドの練習をしている最中・・・
バタンっ
一歌、咲希、穂波「!?」
星乃一歌
日野森志歩
天馬咲希
望月穂波
穂波の言葉に2人は行動する。
救急車がやってきて
数分後、サイレンの音がスタジオの外に響く。
天馬咲希
咲希がドアを開け放つと、救急隊員たちが担架を抱えて入ってきた。
望月穂波
穂波が状況を簡潔に伝える。 志歩はストレッチャーに乗せられ、酸素マスクをあてられる。 一歌はその姿を見て、唇を噛み締めた。
星乃一歌
隊員の声が響く。 「搬送します! ご家族か付き添いの方、同乗を!」 穂波がすぐに手を挙げる。
望月穂波
救急車のドアが閉まり、サイレンの音が再び鳴り響いた。 残されたスタジオの中で、咲希と 一歌はただ祈るように立ち尽くしていた。
救急車のサイレンが止まり、搬入口の扉が開く。 看護師たちが手際よく動き、志歩のストレッチャーが運ばれていく。 穂波はその後ろを必死に追いかけた。
望月穂波
呼びかけても返事はない。 廊下を走る音と、モニターの電子音が交錯する。
診察室の前で止められ、 穂波は息を整えながら壁にもたれた。 その手は小刻みに震えている。
望月穂波
そこに、新堂が駆け込んできた。
新堂さん
望月穂波
穂波の声が途切れる。
新堂は静かに頷き、
新堂さん
その言葉に、穂波は少しだけ肩の力を抜いた。 しばらくして、ドアが開く。 白衣の医師がゆっくりと説明を始める。
医師
穂波は深く頭を下げる。
望月穂波
医師が去ったあと、新堂が穏やかに言った。
新堂さん
穂波は目を伏せ、握った拳を胸の前でゆっくり開いた。
望月穂波
病室の前の椅子に座り込んだ穂波の肩を、新堂が静かに叩いた。 二人の沈黙の中で、心電図の音だけが静かに響いている。
医師
日野森雫
望月穂波
医師
そこへ医師がやってきて呼び出して、穂波と新堂さん、姉である雫を診察室へ向かわせて志歩の申告を話す
診察室の前、薄い白の蛍光灯が静かに灯る。 志歩が運び込まれてから、すでに一時間が経っていた。 穂波と新堂、そして志歩の姉・雫は、ただ無言で座っていた。 そこへ、医師が静かにドアを開ける。 白衣の袖を軽く整えながら、少し沈んだ表情で3人に向き直った。
医師
3人は立ち上がり、診察室へ入る。 中にはレントゲン写真とモニターのグラフ。 その前で、医師は深く息を吸い、言葉を選ぶように口を開いた。
医師
穂波が顔を上げた。
望月穂波
医師はゆっくりと頷き、さらに言葉を続けた。
医師
静寂が落ちた。 時計の針の音だけが、淡々と響いている。 雫の手が震えた。
日野森雫
声が途切れ、唇が震える。 穂波は言葉を失い、ただ目を閉じた。 その隣で新堂は拳を握りしめ、低い声で言う。
望月穂波
医師は頷き、資料を閉じた。
医師
3人は診察室を出た。 廊下に出た瞬間、雫は壁にもたれかかり、静かに涙をこぼした。 穂波は肩を支えながら、震える声で言う。
望月穂波
新堂は静かに頷いた。
新堂さん
志歩の病室・・・
白いカーテンの隙間から、午後の光が差し込む。 ベッドの上で志歩は、ゆっくりと上体を起こした。 点滴のチューブが揺れ、機械の音が一定のリズムを刻む。
病室の扉がノックされる。
望月穂波
穂波の声だった。 志歩が軽く頷くと、穂波と一歌、 咲希が入ってくる。 咲希の手には、花束と雑誌。 一歌は小さな紙袋を抱えている。
望月穂波
穂波が静かに尋ねる。
日野森志歩
志歩は無理に笑って見せた。 けれど、声にはまだ弱さが滲んでいた。 咲希がベッドの脇に座り、笑顔で言う。
天馬咲希
一歌がそっと紙袋を開ける。 中には、みんなで撮った写真が 入った小さなアルバム。 ステージの上、笑い合う4人の姿。
星乃一歌
一歌の声が柔らかく響く。
志歩はゆっくりと写真をめくりながら、唇を震わせた。
日野森志歩
穂波が微笑みながら頷く。
望月穂波
病室に流れる沈黙は、悲しさよりも優しさで満たされていた。
髪の毛が抜け落ちてから1ヶ月が経ち・・・ 抗がん剤で志歩の体重は痩せていて、喉の治療で話せなくなる事が多かった。
髪の毛が抜け落ちてから、1ヶ月が経った。 鏡を見るたび、志歩は少しずつ変わっていく自分に戸惑いながらも、受け入れるしかなかった。 抗がん剤の副作用で体重は落ち、 喉の治療の影響で声も思うように出なくなった。 話そうとしても、かすれた息だけが漏れる。 それでも、穂波たちは毎日交代で顔を見せに来てくれた。 ある午後。 咲希が小さなスケッチブックを持って病室に現れた。
天馬咲希
笑顔で差し出すと、志歩は少しだけ目を見開いて、それからゆっくり頷いた。 ページをめくり、震える手でペンを握る。 最初に書いた文字は―― 『ありがとう』
その文字を見て、咲希が泣き笑いのような顔をした。
天馬咲希
夕日が病室の白い壁をオレンジ色に染めていた。 志歩はスケッチブックを胸に抱きながら、心の中で呟く。 ――もう一度、ステージに立ちたい。 ――みんなの音の中に、自分のベースを響かせたい。 その願いだけが、彼女を支えていた。
次の日・・・
東雲彰人
志歩は彰人が来たことを感じて、 スケッチブックで『来てくれたんだ、ありがとう』 と描く。
東雲彰人
志歩はドキッとする。
志歩は驚いたように顔を上げた。 彰人はベッドのそばの椅子に腰を下ろし、視線を逸らしながら言葉を続けた。
東雲彰人
志歩は小さく笑った。 声は出せないけれど、表情がすべてを物語っていた。 彼女はスケッチブックを手に取り、震える文字で一言だけ書いた。 『行きたい。約束。』 彰人はその文字を見て、ほんの少し口元を緩めた。
東雲彰人
病室の窓から差し込む光が、志歩の頬を照らす。 その光は、まるでほんの少しだけ未来が近づいたように見えた。
病室の灯りが落ち、静けさが満ちる。 志歩は目を閉じても眠れず、枕元のイヤホンを手に取った。 スマホに残るLeo/needの楽曲を再生する。 ──「レオニの音」。 それは彼女にとって、過去でもあり、未来でもあった。 ベースの振動が、まだ体の奥に染みついている気がする。 “また弾きたい” 心の中でそう呟くたび、涙がこぼれそうになる。 だけど今夜は、不思議と少しだけ笑えた。 彰人との約束が、胸の奥で灯りのように揺れていたから。
翌朝。 主治医が病室に入ってきて、カルテをめくる。 志歩はスケッチブックを抱えたまま、そっとペンを動かした。
日野森志歩
医師は一瞬だけ黙り、志歩の顔を見て微笑んだ。
医師
日野森志歩
医師
志歩の目に、光が宿る。
医師
医師の言葉に、志歩は照れたように視線を落とした。 その表情は、久しぶりに年相応の少女のものだった。