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僕はいつもひとりだった
でも
お兄ちゃんだけは
僕をみててくれた
すこしだけ、だけど
がちゃ…
ゴトン、
ガラン、
激しい物音がする
今日の父さんは
怖い父さんみたいだ
父さん
父さんが部屋に入ってくると
みんな一斉に下を向く
変に絡まれたくないからだ
……そうだ
今ここで目を合わせてしまえば
cl
父さん
なにを思ったか
僕は父さんを挑発した
cl
父さん
父さん
父さんがこぶしをあげる
殴られると分かって
僕は今した間違いに
今更気がついた
父さん
父さん
見逃してくれるかと思いきや
父さんは僕の腕を掴んで
cl
父さん
父さん
父さん
家の裏の
草で荒れた空き地に放り投げられる
その時足を打ったらしく
すぐに立つことができない
cl
父さんが家にもどってゆく
cl
玄関のドアが閉まる音がする
ああ
僕これ終わったな
暖房に甘えて
薄着でいた
師走の冷たさが
独りという寂しさも加わって
いっそう冷たかった
cl
足は動かない
寒さのせいか
じっとしているうちに
痛みは薄くなっていくものの
どんどん言うことを聞かなくなっていく
cl
意識がもうろうとしてくる
いや
眠くなってきたと言うべきか
これ
寝たら死ぬやつだ
cl
cl
このとき僕は
人生で初めて
"孤独"を知った
ずっと独りだった
独りだったはずなのに
わかった気でいた
さっきまでは
絶対お兄ちゃんが助けてくれるって
絶対お兄ちゃんがなんとかしてくれるって
心のどこかで思っていたんだ
寒い
怖い
苦しい
寂しい
つらい
寒い
怖い
怖い
こわい
こわい
ガラガラ…
まどがあいた?
まどからかおをだしているのは
るぅとくん
くちびるをきゅっとむすんで
こちらをみつめている
たすけて
るぅとくん
ぼくをみつけてくれたことで
ちょっときぶんがかるくなった
きっとたすけてくれる
自分の間違いに
目を瞑った
僕たちのカメラ
"辛いことも、楽しいこともすべてこのカメラにおさめること"
僕たちのルール
母さんが大切にしていたこのカメラ
このカメラを見返すことはしない
もう
思い出したくないから
st
お兄ちゃんがうなされている
彼は今
謎の高熱でダウンしているところだ
お世話係になった僕
1時間おきに
5歳の弟が遊びに来る
jl
jl
jl
cl
cl
部屋の外へ誘導する
jl
cl
jl
僕なら
うつってもいいのかな
考えたくなかった
じぇるくんのせいね
jl
cl
彼は
人の気持ちを読み取るのが得意だ
弟が
僕たちが
人より大人と言われるのは
この環境のせいか
兄の額の雫に気がつく
st
st
なんとなく好くことができない
双子の兄の体を揺らす
僕がお兄ちゃんを好めないのも
環境のせいなんだろうか
切っても切れない
双子の縁にうんざりしたけど
僕なりの優しさを彼にかけてあげた
cl
st
夢か現実か
お兄ちゃんの置かれている感情は
なんとなく僕もおなじ気がした
st
状況が掴めたみたいだ
cl
なんでか
なんでだろう
なんとなく甘えたくなって
僕だけのためじゃないと思ったからか
cl
cl
st
そのままにしても
どうせ寝れないだろうから
なんて
言い訳をして
お兄ちゃんと一緒に
目を閉じた
cl
お兄ちゃんが僕の体を揺らしていた
st
人差し指を口の前に持ってくる
時計を見ると
深夜の2時
cl
お兄ちゃんは
窓を開けると
st
お兄ちゃんの指さす先には
なな兄ちゃんとりいぬ兄ちゃん
なな兄ちゃんは大きな荷物を持っている
まってよにいちゃん…!)
st
おれじゃむりだよ…っ!)
にいちゃんじゃないとっ……)
cl
cl
st
st
cl
物音がしないように
息さえも
とまってしまいそうだった
りいぬ兄ちゃんの心も
父さん
cl
なんで
いつもは起きてないじゃん
父さん
st
手を引っ張られる
狭い廊下と
無駄に横幅のでかい父さんの体を抜けて
どんっ
なんの音かと思った
兄ちゃんの手が引っ張られて
それと同時に
お兄ちゃんが僕の手を離して
僕は前に倒れる
父さんに引っ張られた兄ちゃんが
前にあるトイレのドアにぶつかった音だった
st
父さん
父さん
痛かったけど
咄嗟だった
cl
cl
僕の演技はどれだけ下手だったんだろう
父さん
父さん
父さん
父さん
そう言って
お兄ちゃんを殴り始めた
なんだかいつもより強い気がした
st
僕が行こうって言ったのに
なんでお兄ちゃんが殴られるの?
でも
怖くて
あの時の悪夢が忘れられない
あれから
お兄ちゃんが殴られても
無言で見てるだけになってしまった僕に
気づいてくれて
言葉をかけてくれたのは
お兄ちゃんだけだった
nn
nn
nn
nn
お兄ちゃんは下を向く
nn
nn
nn
お兄ちゃんの顔は
どこか寂しそうだった
"なにもしなくていい"
ほんとに?
今、僕はなにもしなくていい?
助けたいのに
体が動かない
あのお兄ちゃんの
寂しそうな顔も
環境なんかじゃない
何も出来ない
弱い僕のせい?
お兄ちゃんは動かなくなった
父さん
父さん
わざとらしい
なんでこんなことするの
わかってるんなら
最初から
そうすればよかったじゃん
父さん
さっきみたいに
腕を引っ張られる
けど
さっきとは違う
強くて痛い
玄関に歩いていくと
勝手に玄関のドアが開いた
rn
目を真っ赤に腫らせた兄ちゃんがいた
僕の手が離されると
父さん
rn
これから殴られるとわかった兄ちゃん
こっちに話しかけてくる
rn
cl
rn
cl
複雑な感情
なんと言えば表せるだろうか
悔しい
負けた
父さんにも
僕自身にも
僕より少し重い双子の兄を背負って
階段を上がった