ある夏の暑い日の事だった。
部活帰りの俺は 際限なく流れ続ける汗を 拭い続けている。
もう夜近いのに 何故こんなに暑いんだ。
汗を拭うのも面倒くさくなり タオルを首にかけ蝉の声と踏切の音に 耳を澄ませる。
踏切の音はいつもうざったくて イライラするのに 夏は他にもうざったいものが 多いから踏切の音なんかじゃ イライラしない。
汗も蝉も踏切も そして不機嫌な親友も。
全部どうしようもないから。
俺の少し前を歩くのは 部活が同じゆあんくん。
今日は何故か機嫌が悪かった。
俺がちょっかいかけたり 話しかけたりしても 拒否しないで一緒に居てくれたのに 今はそれも許されない。
俺はいつも通りなのに なんだか今日の俺の行動は いちいち怒られた。
今日のゆあんくんの足取りは悪かった。
部活終わりもう外は暗く 今日は新月だから いつもより心細い感覚を覚える。
暗闇の中でそんな足取りじゃあ 見てて心配で俺は静かに ゆあんくんの少し後ろを歩いていた。
ふらふらと歩くゆあんくんは さっき鳴り始めたばかりの 踏切に近づく。
随分ぎりぎりまで 行くじゃないかと顔を顰める。
しかし俺の表情は焦りへと変わる。
電車が来る。来ている。
ゆあんくんが止まらない。
止まれ。
止まれ。
「待てっ…、」
そう音にする前 ゆあんくんはコンクリートの 段差に足を掛け 向かってくる電車目掛けて
__飛び込んだ。
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