踏切の向こうに消えていく ゆあんくんの手を掴みたくて。
諦めなくて。
俺は走った。
走って走って駆け寄って。
姿も見えないのに手を伸ばした。
頭の中は真っ白で俺の喉から 溢れ出る嗚咽のような音は とても自分の声とは思えなかった。
掠れて、濁って、混ざった 感情を抑えきれずに 全て口から溢れ出してしまった のではないかと思うほどの 悲痛の叫びだった。
喉は痛むし頭は痛いし 強く握った拳は 爪が手のひらに食い込んで 血が滲む。
悲しいとか辛いとか そんな単純な感情じゃなかった。
何も分からず ただ叫ぶ事しか出来なかった。
じゃぱぱ
目の前には見慣れた壁。
額には汗が馴染んでいて 布団を握り締める手も汗で びっしょり濡れていた。
じゃぱぱ
随分リアルな夢だった。
全ての感覚がリアルで鮮明。
でもほら 手の平には血は馴染んでいない。
大丈夫。夢だったんだ。 昨日の事はよく思い出せないが 部活で疲れていたし納得出来る。
そのまま帰ってすぐ寝たんだな。
疲れていたから こんな変な夢を見てしまったんだ。
俺はやっと身体中に入っていた 力が抜けた。
ベッドに倒れ込む。
すると枕元に置いてあった スマホに通知が来ていた事に気が付く。
じゃぱぱ
メッセージの内容もろくに読まずに 俺はゆあんくんに電話をかけた。
ゆあんくんは2回目のコールで 出てくれた。
じゃぱぱ
ゆあん
ゆあんくんの口調はふわふわしていて 寝起きなんだなと分かった。
ゆあん
今日は土曜日だ。 休みの日にこんな早朝に 電話を掛けられたら誰だって怒る。
しかも今日は部活がない。 ゆあんくんもしっかり 休みたいはずだった。
俺の悪夢なんかで起こしてしまって 申し訳ないと今更ながら考える。
ゆあん
じゃぱぱ
ゆあん
それだけ言ってゆあんくんは 一方的に電話を切った。
俺は未だ放心状態。
心臓の鼓動が早まる。
俺はスマホの電源を一度落としてから 電源を入れる。 ロック画面に表示されたのは
「金曜日」
の文字。
金曜は昨日だろ。
週末を勘違いする訳ないし… と回らない頭で考える。
俺はふとゆあんくんからの メッセージを思い出し確認した。
「朝、お前のこと迎えに行く。 俺が来るまで待ってろ。」
これは昨日来てたメッセージのはずだ。そう金曜日のちょうどこの時間。
いつもさっぱりしてて冷たい性格が スタンダードのゆあんくんが 急にこんな事言ってくれるの 嬉しくて、嬉しくて、 張り切って準備をしたせいで かなり待ちぼうけしたのを覚えている。
おかしい。
何かがおかしい。
そう思っても訳が分からなくて 具体的な可笑しさに気付けない為 俺は考えるのを辞め 一旦学校に行くことにした。
コメント
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テラーで初めて読んだのがあゆさんのお話でした。新しいお話もワクワクしながら読んでます。無理せずご自身のペースで頑張ってください😊