八咫烏
きみに頼みがある
闇鴉
……頼み?
八咫烏
私の手伝いをしてほしい
闇鴉
手伝い? オレが?
“闇鴉“は忌み嫌われ“災厄“の象徴として人間から恐れられていた
赤い瞳に困惑の色が露わになる
闇鴉
いったい何をさせるつもりなんだ?
八咫烏
悪さをする妖を懲らしめる
闇鴉
…………
八咫烏
昼夜問わず問題を起こすから大変でね
八咫烏
それで手伝ってもらえないかなと
闇鴉
……べつにオレじゃなくても、あんたには仲間がいるだろ?
八咫烏
いや、きみでなければダメだ
視線をまっすぐに向ける
闇鴉
でも、オレは──
八咫烏
きみは自分が思っているほど強いよ
八咫烏
そして僅かな光さえあれば夜目もきく
闇鴉
…………
八咫烏
どんなに蔑まれようとも、決して他者に危害を加えようとはしなかった
八咫烏
そういう者こそ適任なんだ
闇鴉
……オレでいいのか?
八咫烏
さっきも言ったはずだよ
八咫烏
“きみでなければダメだ“、と──
闇鴉
…………
一度、仲間だと思ってたやつに裏切られたことがある
それ以来、信じることが怖くなった
また裏切られるんじゃないか、って……
闇鴉
(心のどこかで信用しきれていない自分がいる)
闇鴉
(でも……)
闇鴉
(こいつなら──)
闇鴉
あんたの手伝い、やってやるよ
八咫烏
八咫烏
ありがとう、“兄弟“
闇鴉
“兄弟“って、八咫烏と闇鴉じゃあぜんぜん違うだろ
八咫烏
それでも同じカラスなんだ
八咫烏
同族と変わりはないよ
闇鴉
そういうものか?
八咫烏
そういうものだ
普段なら出会わない“太陽の使い“と“嫌忌“が出会い、手を組んだ瞬間だった
このときから運命が大きく動き出す