じゃぱぱ
朝はやはり憂鬱だった。
どんな顔してゆあんくんに 会えばいいのか。 ゆあんくんはどのような顔をして 俺の前に現れるのか。
黒猫にこの世界のことについて ちょっと教えてもらったとて この憂鬱さが晴れる事は無いのだ。
昨日あの黒猫がいなくなってからも 俺しばらくそこを動かなかった。
動けなかった。
帰り途中猫に言われた 「今日は満月」という言葉を思い出して 俺は空を見上げながら帰った。 あの猫の目さながらの美しさを 放つ月だった。
満月を見ながら…?
じゃぱぱ
そうだ。 あの日はブラックムーン だったと聞いた。
新月だ。
ループしているなら 現実世界の満月が見れるわけない。 見れるはずないんだ。
なら…何故?
起きたばかりの のろまな脳みそをフル稼働させて 俺は必死に考える。
じゃぱぱ
じゃぱぱ
学校に向かう俺の足は 鉛のように重く夏の暑さは 俺の気力をより一層削ぎ落とした。
汗が吹き出しせっかく セットしたはずの髪はぺちゃんこ。
諦めた俺は前から髪をがっつりかき上げ邪魔臭い前髪を全て後ろに流した。
俺の今日の朝の努力は 汗とともに流れたということだ。
それでもやはり心の中にはいつだって ゆあんくんがいた。 ゆあんくんのことしか考えてない。
ゆあんくん。 ごめんゆあんくん。
きっと、俺のせいだよね。
ごめん。
俺はゆあんくんに 謝らなくちゃいけない。 だから、
だから、歩かなくちゃいけない。
こんなに暑くても 俺の足が鉛のように重くても 髪が崩れても 俺の足は家を出た時と変わらず 一定の速度を保ち学校へと向かった。
まるで何かに 引き寄られるような様であった。
じゃぱぱ
朝学校に着いた時。 ゆあんくんが席に座っていなかった。
俺があの時そのまま 家を出てしまったから ゆあんくんは気を悪くしただろうか。 そりゃしただろう。
謝りたい。
いろんなこと。 それにゆあんくんに 聞かなきゃいけないことだってある。
2人揃ってこんな状況に 陥っているんだ俺たちの問題だ。 俺たち2人が腹割って話さないと これ以上の進展はないと見込んだ。
それなのに…ゆあんくんは休みなのか?
そんなことを考え始めていた頃 ホームルームの始めの鐘が鳴る直前に ゆあんくんは教室に入ってきた。
さっきまでの俺のように汗だくだった。
汗だくの彼を俺は見つめた。
俺たちの席はあまり近いとは言えない。
だから遠くから。
ゆあんくんの事を見ていた。 汗がまだ止まらずフェイスタオルで 顔の汗を拭き時々タオルに 顔を埋めるゆあんくんを遠目から。
じゃぱぱ
寒すぎる位に冷房が効いたこの教室で 俺は何故かまた汗をかく。
暑さのためではない。
でも何故かわからない。
ゆあんくんがパッと 俺の方を振り返ったのを見て 自分がまだゆあんくんのことを 見ていたことに気が付き 急いで目を逸らす。
窓越しに見える青い木々が揺れる 校庭に視線を逃がす。
少し心拍数が上がった事に 気が付いたゆあんくんはハンカチを 取り出して額の汗を拭いた。
心拍数も、汗も。 きっと夏のせいだ。
夏のせいということにさせてくれ。
コメント
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ごめんなさいずっと読むの忘れてました....😭 やばいです...続けて読むと私も緊張しました...!!読者にも緊張を与えられるなんて本当に凄すぎます... 月が関係していると書いてありましたけど、月...と言われてもあまり思いつきませんね。 そして、猫が協力者...黒猫は不幸を表すはずですが、そこになにか関係があるのでしょうか。ゆあんくんが抜け出さなくていいと言ったのも結局不幸に終わるから..?