天乃
元気にそう唱える天乃の眩しい笑顔に何かが満たされるような感覚を覚える。
らっだぁ
天乃
らっだぁ
夢中になっていて気にしていなかったし、第一この時間を終えたくなかった。
今日であったばかりなのに、何故天乃と居るとこんなに安心するのだろうか。
天乃
らっだぁ
警戒心の欠片も無いな、と自分に自分でそう思った。 …こんなに落ち着いていられるのは何時ぶりだろうか。
天乃
他人のことなのになんでそんなに焦るんだよ。 まぁ実際授業が受けられなくなるのは困る。
らっだぁ
天乃
天乃に連れられ屋内の階段へ行く。先程屋上に行く時に登った階段だ。
天乃
らっだぁ
天乃
興味津々で問いかけてくる。
らっだぁ
天乃
そう聞かれた瞬間、暑さのせいではなく汗が流れた。
思い出すだけでも忌々しい過去。 噎せ返る恐怖。
言えない。
らっだぁ
天乃
天乃が困った顔をしている。 声を出したくても声が出ない。
天乃
少し歪な焦りの見える笑顔を向けてくれた天乃に気を使わせたことに申し訳なさを感じる。
らっだぁ
天乃
キーンコーンカーンコ〜〜ン……
狙ったかのようなタイミングでチャイムが鳴る。
天乃
なんで先に言わないんだよ!
らっだぁ
天乃
天乃
らっだぁ
天乃は感情の起伏が激しく、またそれが顔にはっきりと出るので見てて面白い。
理科教師
クラス
天乃
見に行くか迷っていると丁度天乃が声をかけてくれた。 手を引かれて前へ前へと人混みの中をすすみ、A4サイズの紙に書かれた座席を確認する。
らっだぁ
天乃
天乃の指差す方は廊下側の1番後ろの席で、名前を見る限り全員男子だ。 そして、天乃と一緒の班だ。会ったばっかりなのに少し嬉しいと思っている。
天乃
らっだぁ
正直メンバーはどうでもいいが、天乃が喜んでいるのを見ると胸がこう、なんていうか…
天乃に手を引かれ、再び人混みを進む。
??
天乃
??
??
見る限り天乃とは大分仲が良さそうだ。道理で当たりと言っていた訳だ。
天乃
元気にそう答える彼に先程まで見せてしまっていた素の自分をしまい込み、普段からのつくられた自分を出す。
ニンゲンとして、違和感の無い様に。 ニンゲンとして、ヒトに好かれる様に。 ニンゲンとして、優秀でいられる様に。
らっだぁ
天乃
少し天乃が勢いを失った。どうしたのだろうか?
黒井
神谷
戌亥
ふんわりとした雰囲気の白髪の黒井、名前からして男だが華奢で女勝りな顔付きの神谷、そしてワカメみたいな頭の戌亥。 全員好意的な様に見える。
らっだぁ
黒井、しにがみ、虎蔵
辞書やネットで調べた通りの言葉を並べ、笑みを浮かべる。
……黒井は普通の人間じゃないだろうな。 1人だけ気配が違う。 ……まぁ、かと言ってどうって事ないが。
天乃
先程から黙り込んでいると思えば、今度は目を見開いて机に勢いよく突っ伏してしまった。 天乃の考えることは分からないな…。
理科教師
理科教師
理科教師
理科教師
天乃と神谷はふざけているが聞いていたのか…? 実験用具を取りに行こうと立つと黒井と一緒になった。
らっだぁ
黒井
特に何も言ってこないが睨まれているような気がする。 そのまま実験用具をとって来て、机に並べる。
黒井
黒井は話を聞いていないのを把握していたのか、簡単に説明して作業を分担させている。 やはり話を聞いていなかった様だ。
神谷
戌亥
神谷
黒井
神谷
くしゃみの勢いで本来1滴ずつ入れることができるような容器を神谷が握りしめ、勢いよく溶液が出る。
天乃
戌亥
らっだぁ
黒井
神谷
思わず叫んでしまった…… 驚いたがまだリカバリーは効くだろう。
黒井
天乃
神谷
戌亥
らっだぁ
またもや叫びながらも天乃の手を掴んだが、中身は空になっていた。 神谷は涙目になっているし、黒井は呆れて声も出なくなっている。戌亥に関しては放心してしまっている。
理科教師
一同
黒井
戌亥
チラッと横を見ると、凄く分かりやすく天乃がしょげていた。少し面白いが、可哀想だ。 その姿を見ていると何故か胸が刺されるように痛む。
理科教師
理科教師
内容的に俺で何とか出来そうだ。 本当はバレる危険があるのでやめた方がいいのだが… …まぁ天乃の為だしな。
らっだぁ
天乃
天乃にこっそりビーカーを渡してもらおうとするが、天乃の声がでかい。 バレるだろ!
らっだぁ
天乃からビーカーを受け取り、指を溶液に浸して溶液の今の状態を確認する。
らっだぁ
興味津々で見ている天乃にビーカーを押し付ける。
理科教師
神谷
天乃
戌亥
黒井
黒井が諦めながらも指示薬を入れると、教科書に載っているような綺麗な緑色になった。
一同
神谷
戌亥
黒井
他の2人は偶然だと思い喜んでいるが、黒井は目敏く、誰かが細工したと気づいていそうだ。 失敗したか…?
黒井
天乃
困惑している天乃にフォローを入れる。
らっだぁ
天乃
黒井
神谷
戌亥
少し驚きながらも天乃は嬉しそうに笑っていた。 やっぱり天乃は笑っている方が良い。 そんな事を考えていると、授業が終わり、次の時間の実験の準備が始まる。 2時間連続で実験らしい。俺はその間に実験書を書く。
天乃
天乃
らっだぁ
思い出したかのように声をかけられる。
天乃
らっだぁ
実験書の書き方は分からないが、昔それに似た物が置かれているのを見たことがあるのでそれを参考にしつつ、空欄を埋めて補足を図と共に書く。
天乃
らっだぁ
天乃
天乃は凄い褒めてくれるが、かなりオーバーだと思う。こんなこと誰にでも出来るし… 天乃に実験書を渡すと、天乃は凄い勢いで書き写していった。 手馴れてんな……
天乃
神谷
天乃
神谷
戌亥
他の席の生徒に話しかけに行っていた2人も天乃の大声に釣られ、俺の実験書を見に来る。 そんな大したものじゃないし、寧ろ汚い方だと思うのだが……
黒井
天乃
黒井
好き…か…… 俺は 好き というものが何回辞書を読んでも、調べても分からない。 何をするにしても自分の意思が関わっている事の方が少ないし、やらなきゃいけない事としての認識が勝ってしまう。
らっだぁ
黒井、しにがみ、虎蔵
事情を知っている天乃以外の皆が驚く。そんなに驚くことか…?
神谷
天才…… 俺だって努力してるのに。 才能なんてあったらこんな苦労なんかしていない。
らっだぁ
それでも、笑みを浮かべて流す。 これがニンゲンのやり方らしい。
理科教師
天乃
危なっかしいので着いていこう。
らっだぁ
前の机に班ごとの番号が振られたトレーが置いてある。その上に溶液の入ったビーカーや、その他諸々の実験用具が乗っている。
天乃
らっだぁ
奥でふざけている生徒がいる。実験室で危ないし、もしぶつかったらどうするんだよ…
天乃
思っていた通りのことが起き、実験用具が天乃の方へと落ちる。 ここじゃ力を使ったらバレちゃうし、最適解は―――
らっだぁ
天乃を押し倒し、自分が溶液と割れたビーカー等の破片を被る。 幸い、天乃には溶液はかかっていないし、ガラスも当たっていない。
らっだぁ
天乃
理科教師
らっだぁ
こんくらい大丈夫だし、溶液は俺には効かない。 腕に破片が刺さっているのを抜き捨てる。 血は出ているが、再生能力が高いのですぐ治るだろう。それに四肢をもがれるよりよっぽど痛くない。
理科教師
この間の感じからして名前覚えてないな… これからの為にも覚えてもらわねば。
らっだぁ
天乃
天乃はオーバーだな…… 俺がバケモノだと知っているんだからそこまでする必要ないだろうに。
らっだぁ
らっだぁ
服に血が着いてしまったし、溶け始めているので早く取り除かないとだ。 俺が被った溶液、塩酸はものを溶かす性質がある。 ニンゲンが被ったら皮膚が焼けるような痛みを伴い溶けていく。
とりあえず教室を出る。
天乃
らっだぁ
後ろから駆け足で天乃が寄ってくる。 授業もう始まるし、受けた方がいいと思うのだが…
天乃
何故今日会ったばっかりなのに心配なんてしてくれるのだろうか。 ……そもそも、誰かに心配されたのなんて何時ぶりだろうか。
らっだぁ
天乃
天乃が触ろうと手を伸ばしてくる。 塩酸はニンゲンが触ったら危ない――
らっだぁ
天乃
らっだぁ
咄嗟の事なので強く言ってしまった。 天乃は心配してくれたのに、最低だ……
天乃
天乃は今にも泣きそうな顔で無理やり笑う。
らっだぁ
嫌なんかじゃない、むしろ俺は嬉しかった、もっと仲良くしたい、なんて言えるわけもない。
らっだぁ
天乃
らっだぁ
天乃は先生の話をとことん聞いていないな…… 強く言ってしまったことを謝罪する。 何故か、天乃には嫌われたくない。
らっだぁ
天乃
その場を逃れる為にトイレに向かおうとするが、天乃もついてくる。
らっだぁ
辺りを見渡しても人は居なさそうだし、服を脱いでも大丈夫そうだ。それに、力も使わなければ行けないのであまり人がいると困るのだが…
らっだぁ
天乃
らっだぁ
天乃
俺が服を脱ぎ出すと、天乃が慌てて目をそらす。 自分の顔が火照っているのが分かる。 えっと……恥ずかしい、だ
ただでさえこっちも恥ずかしいのにそんなことされたらもっと恥ずかしいじゃないか……
らっだぁ
天乃
恥ずかしいのを紛らわす為に少し強がる。 そうだ、男同士だし、何恥ずかしがってんだ…
らっだぁ
天乃
らっだぁ
話を遮り、天乃が俺の背中を見て絶句している。 どうしたんだろう…?
天乃
らっだぁ
任務で人を殺すのを躊躇った時、時間がかかってしまった時、機嫌が悪くて当たられた時……理由は様々だが、両親役の研究員によって出来た痣だ。 それもこれも、上手く出来ない俺のせいだ。
歯向かった所で廃棄処分になるだけだし、もっとニンゲンを知りたいという願いは叶わなくなるだろう。
態々 彼 のお陰でこうして学生のフリをさせて貰っているのに、これ以上我儘も言えない。
俺は殴られたって痛くても痕こそ残るが再生するし、またアレをくらうなんて御免だ。
らっだぁ
上手く誤魔化そうと言葉をかえて天乃に伝える。
天乃
虐待…?俺は生かして貰ってる立場で、怒られるのは全て俺が悪いんだ。なのに何を言っているんだ…?
らっだぁ
天乃
らっだぁ
「 私達はカゾクでしょう?」 という、何かをされる時に必ず言われる言葉が脳裏をよぎる。
「 カゾク以外の言葉は信じ無いこと。」 「 カゾクは共に互いの為に尽くす物です。」 だから、俺は尽くさなければいけないし、信じなければならない。
カゾクこそ全てであり、それがなくなったら俺はどう生きればいいのだろうか…?
今までカゾクの指示のまま生きてきた俺は一体誰の指示で動けばいいのだろうか…?
だからこそ俺はカゾクを失う訳には行かないんだ。
天乃
らっだぁ
話題を逸らすために何か目を引くもの、と考え、能力を使い、先程のシャツから塩酸を取り除く。
天乃
天乃
目の前で浮かび上がる液体を前に天乃は正に目を丸くしてそれを見つめている。
らっだぁ
だからこそ液体である自分の体も操れるのだ。 また、液体の性質まで変えられる。
液体でヒトの形をつくり、天乃の方へ手を振らせる。
天乃
リアクションが面白いし、胸が温まるような感覚になる。
らっだぁ
今、何かが擦れるような音がした気が……
天乃
らっだぁ
らっだぁ
天乃
らっだぁ
天乃
それは俺でも正直よく分からない…… 自分の体の事だがあやふやだ。
らっだぁ
天乃
謎に自信満々の天乃を見て、元気が出た。 天乃といると無意識に笑ってしまう。 本当に不思議な現象だ。 楽しい のかな…?
らっだぁ
らっだぁ
天乃
天乃と一緒にいると色々な 感情 と言うものを知れる。 もっとニンゲンについて、天乃の事について知りたい。 これが 好奇心 か……
コメント
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最高です😿💗