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桃side
悠佑
始業式を無事に済ませ、まろと共に帰宅した俺は、玄関の扉を開けて「ただいま」と言った瞬間に聞こえてきた、アニキの怒声に驚いてびくりと肩を震わせた。
その反応はまろも同じだったらしく、目を丸くして顔を見合わせた俺たちは、怒声が聞こえたリビングの扉を首を傾げて眺める。
ないこ
いふ
靴を脱いでリビングの扉のノブに手を掛けたまろは、ノブを捻ってゆっくりと扉を開け、状況を確かめるように扉の隙間から顔を覗かせた。
俺もまろの顔の下から片目だけでリビングを覗くと__そこにはアニキの目の前で横一列に正座をさせられている年下組がいた。
アニキは腕を組んで、年下組を上から瞳だけ見下ろしている状態になり、とてつもない威圧感を放っている。
年下組も年下組で三人とも顔を俯かせていて、その表情はあまり読み取ることができなかった。
ないこ
ないこ
いふ
いふ
まろの言葉を聞いて年下組の制服を見てみると、確かに朝見た時より泥っぽいのが着いていたり、ほとけっちにしては葉っぱがついている部分もある。
不思議に思ってまろと顔を見合わせると、再びアニキの怒号がリビング内に響き、俺たちの鼓膜までも震わせた。
悠佑
ほとけ
ボソリと呟くようにほとけっちが口を開く。
その視線はアニキに合わせようとはせず、右から左・左から右と明らかに泳いでいた。
ほとけ
悠佑
あれほどの暗い雰囲気の中で出てきた、『猫ちゃん』と言う可愛いワード。
それを聞いた瞬間、まろは全てを察したように片手を額に当てて、 「またアイツは・・・・・・」と呆れたように呟いた。
ないこ
いふ
ないこ
まろの言葉を聞いてもピンとこなかった俺は思わずそう叫ぶ。
すると俺の声に気づいたのか、アニキと年下組が顔を上げてこちらを振り返った。
悠佑
悠佑
ないこ
あんな状況で呑気に入れるやつがどこにいるのか、そんな意見を唾液と共に飲み干して、俺は苦笑しながらリビングに入る。
ないこ
バッグをソファの上に置いて、俺は恐る恐るアニキに尋ねる。
するとアニキは大きくため息を吐いて正座する年下組を見下ろし、若干苛つきながらの口調で説明した。
悠佑
ないこ
大丈夫だった、と年下組に尋ねると三人は小さくコクリと頷く。
するとりうらがゆっくりと口を開けて、ほとけっちのことをチラリと見ながら言った。
りうら
りうら
初兎
風が吹いてイムくんが落ちた、りうらの説明を初兎ちゃんが継いで話す。
初兎
ほとけ
涙目でそう語る初兎ちゃんをほとけっちが食い気味で否定する。
ほとけ
ほとけ
いふ
ないこ
年下組にぎりぎり聞こえるか聞こえないか程度の声量でそう呟いたまろの背中を、べしんと一発掌で叩く。
いたっ、と声を出すまろに対し、 ほとけっちの言葉を聞いた後のアニキはゆっくりと年下組の前に屈んで膝をつく。
そして__優しくほとけっち、初兎ちゃん、りうらの順で頭を撫でた。
ほとけ
突如温もりを感じた三人は困惑した表情を浮かべて、アニキの顔を静かにじっと見つめる。
当のアニキは先ほどの恐ろしい顔とは打って変わって、とても暖かい瞳で彼らを映していた。
悠佑
三人はコクリと頷く。
それを見たアニキは、小さく息を吐いて今度は髪の毛をグシャグシャと掻き回すように頭を撫でた。
悠佑
悠佑
そして一度撫でるのをやめ、立ち上がったアニキは腰に手を置いて、にかりと歯を見せるようにして笑った。
悠佑
悠佑
悠佑
ほとけ
渋々と言った感じで ほとけっちが頷く。
それを確認したアニキはもう一度ほとけっちの頭を優しく撫で、「それじゃあ」と台所に向かった。
悠佑
りうら
初兎
ほとけ
さっきまでの悲しそうな顔が嘘だったのかと思うぐらい、アニキの言葉に反応して笑顔でそう言う年下組。
アニキは苦笑してその声に耳を傾けていたので、俺もせっかくならとその場のノリと勢いで言ってみる。
ないこ
いふ
悠佑
いふ
あっさり俺たちのリクエストが切り捨てられたことに、まろが不思議な声を出して誤魔化そうとする。
あの言葉聞いて以来ちょっと、 その声を聞く時と考え方が変わると言うか・・・・・・。
ほとけ
いふ
ほとけ
初兎
りうら
悠佑
ないこ
急激に騒がしくなったリビングをぼんやりと眺めて、他人事のようにそう思う。
俺は久しぶりの高校で疲れたのか、急激に眠くなった瞼をそっと擦り、自分がバッグを置いたソファの上にそっと腰掛けて目を閉じる。
ほとけ
いふ
みんなの大きな声を聞きながら、 俺はソファの背もたれにそっと体重をかける。
その瞬間、体がフワッと浮く感覚がして、俺は意識を手放した。