2029年8月16日
タンカーはゆっくりと
太平洋を漂っていた
玉野
玉野
絵美衣
絵美衣
玉野
玉野
玉野
玉野
絵美衣
玉野
玉野
玉野
玉野
玉野
絵美衣
玉野
絵美衣
玉野
玉野
絵美衣
玉野
玉野
玉野
玉野
絵美衣
玉野
玉野
玉野
玉野
玉野
玉野
玉野
玉野
玉野
玉野
立
サワタリ
サワタリ
サワタリ
サワタリ
サワタリ
サワタリ
立
立
サワタリ
サワタリ
サワタリ
父さんと母さんの 遺書には
おれが存在したという話が 書かれていた
だがそれによると
おれは産まれて間もなく
なんの前触れもなく 突然死んでしまったらしい
父さんと母さんは その後立を産んだ
しかしその前に死んでしまった おれのことを
ひどく悔やんでいた
その念が おれにふたたび命を与えたのか
願ってもない偶然か
おれは気がつくと 孤児院にいた
それからは前話したとおり おれはステージ1の下民として
真実を追い求め 各地を奔走した
しかしそれは
すでに出ていた答えを 辿る所為にすぎない
そんな旅だったのだろうな
おれは生き続けた挙句
思いもよらない真実を突きつけられた
今となっては仕方ないが
そういう運命にあるようだ
「ガス」だってそうだろう
そんなものが あり得るとするならば
突発的な変異だが 確実に現実のものとなる脅威
おれが出現したことも 決してありえないことではない
今ではそう思うんだ
立
立
立
サワタリ
サワタリ
サワタリ
立
サワタリ
サワタリ
サワタリ
サワタリ
立
立
立
立
サワタリ
立
立
立
立
立
サワタリ
サワタリ
サワタリ
サワタリ
サワタリ
サワタリ
立
立
立
サワタリは微笑をうかべ 目をうっすらと開いていた
立
それきりサワタリは動かなくなり 呼吸も完全に止まった
立
サワタリの身体は まだ熱を帯びながらも
微動だにしなくなった
立はそっと サワタリの両目をとざした
そして立ち上がると
岬の方向へ向かって 駆け出した
海を一望できる岬の上に立ち 立は蒼穹に叫んだ
立
立
立
立
潮風は淡々と
一定の速度で立を撫でた
立
立
立
立
立
立
立
遠い水平線が見える
それが迫り来るように
まるでそびえたっているように 立には見えた
踵を返し
眼下にひしめく群衆を見ながら
立は場を離れた
結局 立はどこへ行くともなく
1週間前まで機能していた 高校に戻ってきた
最後にもう一度 ここに戻りたくなったのだった
立
立
立
立
窓から外を眺めても
教室の扉を開いても
もとの日々の面影は どこにもなかった
立
立
立
立
立は壁にもたれかかり
座り込んだ
深い溜息をつき 目を閉じる
そのとき
隣に人の気配を感じ
思わずそこに振り向く
絵美衣
立
立は声の主を見て ぱちぱち瞬きを繰り返した
立
立
立
絵美衣
絵美衣
絵美衣
絵美衣
立
立
絵美衣はうれしそうに 立の両手をとった
絵美衣
絵美衣
立は嗚咽を漏らしながら 絵美衣の手を握り返した
絵美衣
絵美衣
絵美衣
立
絵美衣
絵美衣
絵美衣
絵美衣
2029年8月16日 午後4時18分
全国各地で 活火山の近くを震源とする
小規模な地震が相次いだ
その18分後
溜め込んだ膿が 表皮を破って出るように
高熱の「ガス」が 各地で一斉に噴出した
ガスは一瞬のうちに 地上を覆いつくし
残された民衆に 不可逆的な死を与えた
それでもさらにガスは滔々と流れ 地表のすべてを死においこんだ
その様子をカメラにおさめるべく 各国のヘリがはるか上空を飛び回っていた
2054年8月
調査団
調査団
調査団
調査団
調査団
調査団
調査団
調査団
調査団
調査団
調査団
灰燼に帰した日本は
災禍から25年を経て
ふたたび人が住めるような 状態になった
しかし どこに帰ればいいか
ほんとうに危険は消えたのか
かつて 「一時退去」した人々の不安は 尽きなかった
だが少しずつ 人々は国土に戻り
人間的な暮らしを するようになった
調査団
調査団
調査団
調査団
霜月ワタル
調査団は骨壷に入った骨を 霜月ワタルに手渡した
ワタルは骨壷を抱きしめると 目を閉じて語り始めた
霜月ワタル
霜月ワタル
霜月ワタル
調査団
調査団
調査団
調査団
調査団
霜月ワタル
霜月ワタル
霜月ワタル
霜月ワタル
調査団
霜月ワタル
ワタルはふと顔を上げ あたりをきょろきょろ見回す
調査団
霜月ワタル
霜月ワタル
霜月ワタル
沈みゆく夕陽は そこで起こった災禍を
気にもとめずその営みを続け
やがて夏空は
真っ赤に染まった
25年前と 同じように
鮮やかな夕焼けを 空一面に広げたのだった
Fin.
最後までお読みくださり ありがとうございました
この物語は フィクションです
コメント
19件
436って、真実とか家族とか愛情って意味を持つんですよね。
本当に素晴らしいお話でした👏👏✨楽しんで読むことができました😭😇今ちょうど家の目の前で爆発が起きてしばらく停電しているのですが、それと重なってとても感情移入しました😢またあなたのお話読みたいです🥺