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ぼくは今、グラウンドでナミスケとサッカーのPK対決をしている。
お察しのとおり、アミ戦だ。
自販機の前で微炭酸と強炭酸のどっちがおいしいかで、ちょっと言い合いになっていたら、ガイド妖精にトラブルと判断されてアミ戦になってしまった。
相変わらず、トラブル判定がガバガバすぎる。
【サッカーPK】 ・交互にキッカーとキーパーを交代して行う。 ・全5回行い、ゴール数が多い者に1ポイント。 ・5回までで決着が付かなかった場合、引き分け。 引き分けの場合、ペナルティ無し。
いたって普通のPK戦だ。
ナミスケが先攻で5回まで進み、5回ともゴールを決めている。
そして後攻のぼくも、4回まではゴールを決めている。
次がぼくのラストキック。
このキックがゴールに入れば引き分け、止められたらナミスケの勝ちという状況。
アルク
ユトリ
冷やかしに集まってきたギャラリーに混ざって、アルクやユトリが声援を送ってくれている。
ナミスケ
アルク達だけでなく、ギャラリーの人達もどっちかというと、ぼくを応援してくれているように感じる。
これはアンダードッグ効果(なんとなく負けている方を応援したくなる気持ち)だろう。
ぼくがゴールを決めたところで引き分けで、2人ともポイントもペナルティも無し。 対してナミスケがボールを止めた場合は、ナミスケの勝ちでポイントが入り、ぼくの方はペナルティ。
あとが無いのは、ぼくだけなのだから。
特に興味のない戦いなら、負けている方を応援するのが人情だろう。
ナミスケ
ナミスケがぼくを急かし、あせらせてくる。
ぼくもここまでに4回ゴールを決めているから、同じようにければゴールできるはずだ。
狙いはナミスケが苦手な左側。
助走をつけてボールをける。
グニョリ。
ボールを蹴る直前に、踏み込む足に妙な感触があった。
右足はボールの真芯ではなく、少し上をかすめるように当たった。
勢いのないボールはポンポンと跳ねたあと、コロコロ~と転がっていき、ゴール前に立っていたナミスケにすくわれるようにキャッチされた。
ガイド妖精
ナミスケ
ナミスケが飛び上がらんばかりのガッツポーズをし、(特にどっちも応援していなかった)ギャラリーが勝ったナミスケに歓声を上げる。
ユウゴ
ボールを蹴る瞬間、足元に妙な感触があった。
しゃがんで足元を調べてみると、ボールを置いていたあたりだけがぬかるんでいて、どこからかアリの行列が集まっていた。
妙にあまいにおいがする。
ユウゴ
でも、どこからコーラなんて。
アルク
ギャラリー集団から飛び出したアルクが、空のペットボトルを片手に、ゴールのナミスケに駆け寄っていく。
ナミスケ
ナミスケも逆方向に走って逃げていた。
これでだいたい察した。
ナミスケが魔法でアルクのコーラを操って、ボールの下の土をぬかるませたんだ。
いつも使っているリュック型の水タンクを持っていないから、普通のPK戦対決だと思って油断していた。
ユトリ
ユトリはねぎらってくれるけど、なぐさめの言葉はない。
なぐさめてほしいわけじゃないけど。
メイカにアミ戦で負けて以来、ユトリはアミ戦にだけは厳しく真剣だ。
もちろんわかっている。
ぼくの敗因は油断だって。
これでペナルティが1付いてしまった。