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ナミスケに逃げられたアルクが戻ってきた。
アルク
ユウゴ
アミキティア魔法学校の中での買い物は、基本的に全部無料だ。
ただし、ほとんどのお店は食堂の券売機のようにイメージで注文しなければいけないので、クラスが上がって魔力が強くないと希望の物のが手に入らないことがある。
飲み物の自販機もボタンはひとつで、頭の中でイメージした物が出てくる。
アルクのように魔法を使える人なら望み通りの飲み物を買えるけど、ぼくのように魔法が未熟だとコーラが飲みたくてもウーロン茶が出てきたりする。
アルク
ユウゴ
飲み物の話をしていて、そういえばジュースを買いに行った自販機の前でナミスケとばったり会ったのが、アミ戦のきっかけだったと思い出した。
ユウゴ
アルク
ユトリ
ガイド妖精
自販機のところまで歩いていこうとしたところで、目の前に突然ガイド妖精があらわれた。
レイド・サバイバルというのは、学校側が開催する特別なアミ戦のことだ。
略称は、レイド戦。 競技内容、規模、他の参加者、その他一切不明で、前触れもなく突然このように開催を言い渡される。
わかるのは多人数参加で、うまくすればポイントを多く稼げるといううわさのみ。 そのうわさの中に、ブロンズクラス以上の生徒も参加しているというのもある。つまり、格上でかなうはずのない相手と戦うかもしれないということだ。
実際、以前ホマレが参加した時は、手も足も出ずにボロ負けして帰ってきた。ノービスクラスの中では魔法の扱いに長けているホマレでもそうなのだから、ぼくではとても太刀打ち出来ないだろう。
強制参加ではないみたいだし、さっき負けたばかりで流れも悪いし、今日のところはやめておこうかな。
アルク
アルクがガイド妖精を呼び止めた。
ユウゴ
ユトリ
ガイド妖精
ぼくとユトリの反論は間に合わず、ガイド妖精は扉に変化した。
ガイド妖精
ガイド妖精
ユウゴ
ぼくはすでにナミスケに負けて、ペナルティ1。
ここでペナルティになったら、ペナルティ2で退学リーチになってしまう。
アルク
ガイド妖精は残り1分を告げ、秒読みのカウントダウンを始めている。
アルクに背中を押されて、ぼく達3人は、扉を通って別の場所に移動した。
ガイド妖精の扉を通った先は、無数の太い石柱が立ち並ぶ広い空間だった。
ユウゴ
アルク
ユウゴ
ユトリ
ペナルティが3回付くと、クラスが1段階降格になる。
ノービスクラスの場合は、下のクラスがないので問答無用で退学になってしまう。
ノービスクラスでペナルティが2回付くことは、退学リーチと呼ばれている。
アルク
アルク
ユウゴ
会場には、ぼく達の他にも30人くらいの生徒が集まっていた。
その中にショウリとメイカを見つけた。
ショウリ
向こうのほうが先にこっちに気づいて、声をかけられた。
ユウゴ
ショウリ
ショウリもどこかでアミ戦に負けたらしくて、ペナルティ1が付いているらしい。
メイカ
一緒に来ていたメイカが言う。
ユウゴ
メイカ
メイカは、すでに2回もレイド戦に参加していると言う。
競技は毎回違うが、2回とも勝ち越しでポイントをかなり稼いでいる。
今回はペナルティが付いてしまったショウリを救済するために、2人で参加したらしい。
ユトリ
メイカ
メイカが露骨にユトリを避けて、プイッと横を向く。
まだユトリがショウリのことを狙っていると思っているみたいだ。
ショウリ
ショウリに頭を軽くたたかれて、メイカがこっちを向き直した。
メイカ
メイカ
他の参加者がこっちを見て、ざわざわと話している。
???
???
???
うわさの内容は主にメイカについて。
いつの間にか強者として顔と名前が広まっているみたいだ。
???
そのうわさ話に混じって、ぼくの名前も聞こえてきた。
???
???
???
身に覚えが無いうわさ話が広がっている
ユウゴ
ショウリ
ユウゴ
ユトリ
ああ、やっぱり。
ガイド妖精
ガイド妖精が飛んで来て、今回のレイド戦の競技を発表する。
ガイド妖精
ガイド妖精から黒くて小さいものが、ボタボタといくつも落ちてきた。
黒くて丸い体に細い四肢を持った小さな生き物。 シルエットはネズミに近い。
ガイド妖精
人工魔物《イミテーション》は自分で考える力を持たず、プログラムされた動きしかしない。
最終試験の円形ステージで戦った魔物犬や農園の畑の土を耕す役目の魔物モグラがこれにあたる。
ガイド妖精が、今回の競技で使用する魔物ネズミは、ただ人から逃げまくるだけの小動物だと説明する。
ガイド妖精
【魔物捕獲競争】 ・ステージに10匹の魔物ネズミ(人工魔物《イミテーション》)を放つ。 ・魔物ネズミ(人工魔物《イミテーション》)を捕まえれば、1ポイント。 ・捕まった魔物ネズミ(人工魔物《イミテーション》)は消滅する。 ・2匹以上捕まえてもポイントは増えない。
ガイド妖精
ガイド妖精の号令と同時に、魔物ネズミが蜘蛛の子を散らすように、四方八方に走っていった。
集まった参加者は約30人。対して魔物ネズミは10匹しかいないから、クリアできるのは10人だけ。
みんな我先にと魔物を捕まえるために走り出した。
ユウゴ
でも、どっちに行けばいいんだろう。
魔物ネズミは小さい上に足が速いから、動きを目で追うだけでも精一杯だ。
メイカ
戸惑うぼくを尻目に、メイカが魔法具《マギアツール》のスケボーで走り出した。
他の人達の間をぬうように滑っていき、石の柱を登っていく魔物ネズミに手を伸ばす。
メイカ
開始から20秒。
あっという間に魔物ネズミを捕まえて、レイド戦をクリアした。
捕まった魔物ネズミは煙のように消滅した。
メイカ
笑顔のメイカがショウリに大きく手を振る。
ショウリ
ユウゴ
アルク
アルクが何かを思いついたようで、両手を突き出した。
アルク
両手から竜巻が発生し、周囲のほこりを巻き上げた。
巻き上げられたほこりの中に、魔物ネズミが巻き込まれている。
アルク
竜巻を操って自分に向かうように調整すると、魔物ネズミが一直線に空を飛んで来て、アルクの手の中に入り込んだ。
アルクの手の中で魔物ネズミが消滅した。
これでアルクもクリアで1ポイントだ。
???
???
立て続けに魔物ネズミが捕まえられたことで、他の参加者もあせり始めた。
ぼくもぼーっと見ていないで動かないと。
ユトリ
ユトリ
ショウリ
ユトリとショウリも魔物ネズミを探しているけど、見つからない。
ここは明かりが少なくて薄暗いし、太い石の柱のせいで死角も多い。
ネズミのような小さな生き物を一度見失うと、発見するのは至難の業だ。
ガイド妖精
ガイド妖精が、残り制限時間と残り匹数を告げる。
時間がない。
見つからない。
他の参加者も同じようで、上を見たり下を見たり、柱の陰を探してみたりするけど、魔物ネズミはどこにもいない。
メイカ
その声に反応して、聞こえた方にみんなが注目する。
声の主はメイカだった。
メイカの手の中で、魔物ネズミが消滅した。
ショウリ
メイカ
メイカ
無茶苦茶な理論で反論された。
メイカ
メイカがスケボーで走り出した。
その先には魔物ネズミが2匹もいた。
メイカは動きが早いだけでなく、目もいい。
このままでは、残る魔物ネズミが全部メイカに捕まってしまう。
他の参加者も魔物ネズミに気がついて追いかけるが、メイカのスケボーのほうが格段に速い。
ユトリ
メイカの前に魔法具《マギアツール》の巨大ハンマーを抱えたユトリが立ちはだかる。
ユトリ
ハンマーのやわらかくする面で地面をたたく。
突然、地面の感触が変わったことで、メイカが失速する。
メイカ
ユトリ
2人が言い争っている間に、メイカが狙っていた魔物ネズミは他の参加者によって捕まえられた。
ガイド妖精
残り時間も魔物ネズミの数も、もう少ない。
ユトリ
メイカ
床にへたり込んだメイカが、涙混じりの声でユトリに訴える。
アルク
アルクが背中からショウリに語りかける。
ショウリ
ショウリが肩をすくめる。
魔物ネズミは鳴かないし、小さいから足音も聞こえない。
目だけを頼りに探さないといけないから、一度見失うと見つけるのは困難だ。
残り時間が減り続ける中、打開策が見つからずに天をあおぐ。
天井近くは灯りが届かず、柱の陰はさらに暗い
その影の一部が、グニグニと動いている。
あれは……
ユウゴ
ユトリ
天井を見上げたユトリが小さな悲鳴を上げた。
天井近くの柱の陰の中で、5匹の魔物ネズミが動いていた。
高さは5メートル以上はあるので、ジャンプした程度では届かない。
ユウゴ
ユトリ
ユトリ
魔物ネズミが集まっている柱に向かって、ユトリがハンマーを叩きつける。
ゴム状になった柱を振動が伝って、天井までブルブルと震えていく。
その振動で魔物ネズミ達がボタボタと落ちてきた。
あれを下でキャッチできれば、クリアだ。
他の参加者達も、落ちてきた魔物ネズミを捕まえようと一斉に集まってきた。
メイカ
メイカは口では文句を言うが、それ以上の行動は起こさない。
ユトリの説得が少しは効いたみたいだ。
ユトリ
そのユトリは自分に向かって落ちてくる魔物ネズミ達を前にして、足がすくんでいる。
ぼくとショウリは、魔物ネズミに向かって走る。
ガイド妖精
落ちてくる魔物ネズミに向かって、手を伸ばして、ジャンプした。
指先が魔物ネズミに触れた。
ユウゴ
ギリギリ届かずに、左手の指先を爪で引っかかれてしまった。
地面に着地した5匹の魔物ネズミが、ふたたび走り始めた。
参加者達が足元を走り回る魔物ネズミを捕まえようと、右往左往して、ぶつかりあう。
その中で、ぼくは左手を抑えてうずくまっていた。
痛みが引かない。
魔物ネズミに引っかかれた傷を中心に、左腕全体にしびれるような痛みが広がっていく。
ユトリ
ぼくの異常に気づいたユトリが声をかけてくれた。
ユウゴ
この感覚は、過去にも何度か感じたことがある。
闇《ケイオス》の魔法が発動する前兆。
思った通り左腕から黒い煙があふれ出してきた。
アルク
気づいたアルクがユトリの腕を引っ張って、ぼくから引き離す。
魔物ネズミを捕まえようとする他の参加者がモミクチャになっているせいで、思うように動きが取れない。
ユウゴ
黒い煙が周囲に飛び散り、石の柱、他の参加者、魔物ネズミ、区別なく無差別に攻撃していく。
今まで経験した中では威力が弱い。
石の柱は傷ついていないし、他の参加者もゴムボールをぶつけられた程度のリアクションだ。
魔物ネズミは、黒い煙を被弾すると同時に、煙のように消滅した。
ガイド妖精
ぼくの魔法によって魔物ネズミがいなくなったところで、ガイド妖精が飛んで来た。
ガイド妖精
レイド戦はここで終了だ。
ガイド妖精の扉を通って、元の場所に戻ってきた。
アルク
クリアできたアルクはご満悦。
ユトリ
逆に未クリアだったユトリは落胆して肩を落としている。
ユウゴ
ユトリがクリアできなかったのは、ぼくの魔法が暴走してしまったせいだ。
ユトリ
ユトリ
ユウゴ
メイカ
スケボーに乗ったメイカが、飛ぶような猛スピードで迫ってきた。
メイカ
気が重くなるようなことを叫びながら。
ぼくもペナルティ2で後が無い。
魔法学校生活は、早くも崖っぷちに立たされてしまった。