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オレが魔王でアニキが勇者

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オレが魔王でアニキが勇者

2 - 2 情報共有は部屋の中で

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2019年11月01日

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オレたちが渡ってるのはオルシャック。

神が制作途中で放り出した世界だ。

地図を見る限り、地球と違って平面世界。

魔族と人間、適当な動植物と大地、水だけを作った神は

どうやらそこで世界創造に飽きてしまったらしい。

あとはどうにかうまく生きてくれと神託だけ授けて

さっさといなくなってしまったんだと。

アンセルムから神話を聞かされた時は、

マンガの設定だけ考えて投げ出す小学生みたいだと

開いた口がふさがらなかったもんだ。

前統治者だった先代魔王は勇者と共に異次元に姿を消して

今は魔族の一部が好き勝手に人間を苦しめてる。

それを再び統治し、国土の安定と復興を目指すのが

現魔王であるオレの仕事。

そして悪い魔族を討伐し

民と土地を開放するのが現勇者の仕事。

……なんだが。

キョウ

よりによってコイツが勇者とか

キョウ

あの世界、呪われてんじゃないのか

マサル

なんだよ、文句あるか?

キョウ

文句じゃなくて

キョウ

適当人間ばっかり寄せ付けるなぁって

マサル

じゃあお前もじゃん

キョウ

オレは部下も舌を巻く働きぶりだ!

マサル

どーだかー?

似た経緯でアニキもあっちに行ったらしいが

なぜかオレとは出る場所が違うらしい。

そこで突然襲いかかってきたバカな魔物を吹っ飛ばしたことで

勇者の再来だともてはやされてるらしい。

でも。

キョウ

お前みたいな性格の奴が勇者とか

キョウ

いよいよオルシャックもおしまいだよ

マサル

そうとも言えねーよ

マサル

今日も一匹、サイテーな悪領主をやっつけといた

キョウ

……悪領主?

マサル

お前がいるの、王都だっけ?

マサル

そっから西に120キロ

マサル

ロガリズって街だ

マサル

魔王様はご存じなさそうだな

キョウ

ロガリズ?

キョウ

……海辺の領地だったな

キョウ

魔王再臨の布令を出しても

キョウ

挨拶ひとつ寄越さなかった奴だ

キョウ

確か近日中に視察に行く予定だったが……

キョウ

お前、なんかしたのか?

キョウ

ヒュドラだっただろ?

マサル

……うんまぁ、ちょっとな

マサル

てか、自分に挨拶しなかった奴のこと

マサル

ぜんぶ覚えてんの?

マサル

陰っ険だねぇー!

キョウ

王として当然だろ

キョウ

自分を取り締まる立場の者が再臨したとき

キョウ

好き勝手している奴らは絶対に歓迎しない

キョウ

特に相手がポッと出の奴ならなおさらだ

キョウ

お前なんて認めない、と暗に示してくる

キョウ

そのひとつが挨拶だ

キョウ

把握しないのはよほどの無能だぞ

マサル

……

マサル

そーゆーの、どこで覚えんの?

キョウ

歴史上の王や反逆の過程を見れば分かるだろ

マサル

さいでっか

マサル

魔王の資質ってやつかね

キョウ

資質じゃない、オレの努力だ

キョウ

安っぽい言葉で片付けるな

マサル

はいはい

マサル

マサル

そいつの情報、いる?

キョウ

いる

マサル

だろうな

マサル

ところで、今日の夕飯知ってる?

キョウ

は?

キョウ

……えっ、と

キョウ

挽き肉と玉ねぎがあって、キャベツもあったから

キョウ

……たぶん、ロールキャベツ

マサル

一個オレによこせよな

キョウ

はぁ!?

マサル

情報料

マサル

とーぜんだろ

キョウ

オレの好物なんだけど!

マサル

奇遇ね、オレもよん

キョウ

……対価に見合う情報なんだろうな

マサル

かわいい弟に損はさせねぇって

キョウ

思ってもないことを……

マサル

信用ねーなー

マサル

まぁいいや、飯食ったら話すよ

キョウ

なんでだよ!今話せよ!

マサル

嘘つかれたら嫌じゃん

マサル

報酬は先払い

マサル

風呂のあとはあっち行くんだろ?

マサル

あっちでチヤホヤされればいーじゃん

キョウ

ぐ……っ!

オルシャックとこちらの時間の流れには、

どういうわけかズレがある。

あっちで24時間過ごして戻っても、

こっちではたったの2時間だ。

だけどこっちで24時間過ごしてあっちへ行くと、

12時間経ってる。

たぶん時間圧縮の魔法の密度の差なんだろうけど

詳しいことは考えてもわからないから、考えないようにしてる。

深夜0時から朝6時に戻るなら、

三日間あっちで過ごせるわけだ。

そんなわけでオレたちは最近、帰宅後に10分くらい

それと夜の間は、もっぱらあっちの住人になっている。

マサル

あ、そうそう

マサル

その件とは無関係なんだけど、噂になってきてるぞ

キョウ

は?

キョウ

なにが?

マサル

勇者が魔族を討伐した場所は

マサル

魔王が再統治して立て直すのがやけに早いってさ

キョウ

……あー、そういうことか

キョウ

そりゃあまぁ

アニキと目が合い、思わず一緒に笑ってしまう。

キョウ

実家で情報を共有してるんだから

マサル

そりゃ早いだろーな!

キョウ

別にバレて困ることもない

キョウ

迅速な対処は住民にとっても利点にしかならん

キョウ

捨て置け

マサル

捨て置け、ね

マサル

……プッ

キョウ

……プ?

マサル

お前、魔王モードだとそんな喋り方なのな!

マサル

マジでどこで覚えんのそーゆーの!

マサル

超ウケんだけど!!

キョウ

なっ……!

キョウ

~~っ、サイテー!

キョウ

お前マジでサイッテー!!

キョウ

そのうち絶対滅ぼすからな、弱小勇者!

マサル

ふーんだ、勇者は魔王に負けないお約束があんの!

キョウ

最近は魔王に負けて転生する勇者も多いだろ!

マサル

じゃあお前は情けない幼女魔王にでもなれよ!

ムカつく!なんだアイツ!

ガチでムカつく!!

いつかシバキ倒すから覚えてろ!

……まぁ、そんな風に部屋で大騒ぎをしていたら

台所から母さんに怒鳴られて心臓が縮み上がった。

魔王でも勇者でも絶対勝てない生き物、母さん。

これ以上怒りを買わないようにとりあえず口を閉じて、

オレはすみやかに謝罪の言葉を準備。

次に、オレのロールキャベツを一つ多くしてくれるよう頼むため

そそくさと台所に向かった。

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