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夜なのに明るい空を指さして

俺は君と笑った

優成

雫玖、見て!

雫玖

ぅわぁ...!

雫玖

......きれい

優成

......うん

中学生になって初めて

2人だけで行って良いと 許可がおりて

着せてもらったという浴衣と

少し 切りすぎてしまったらしい前髪と

空に広がる大きな華と

オレンジとか赤とか とにかく様々な色の出店の灯りと

俺は君の 少し潤んだ瞳、嬉しそうな横顔に

いつの間にか

雫玖

優成

優成

ん...?

雫玖

また来年も、再来年も

雫玖

その先も、ずーっと!

雫玖

一緒に来ようね!

優成

はは...だな

優成

約束

雫玖

うん!約束ね!

小指を なんでもないように差し出す君

優成

あ...うん

花火と出店の灯りと

それからこの熱気を

俺の頬が熱い理由にしては ズルいのだろうか

雫玖

どうしたの?

優成

いや...なんでも無い!

照れ隠しで 勢い良く絡めた俺の小指は

やっぱり少し熱くって

君の小指は 俺がどうにかなってしまう程

ふに、と柔らかかった

雫玖

ゆーびきーりげーんまーん

雫玖

嘘ついたら...

雫玖

......

優成

なんだよ?

雫玖

またその次の年に

雫玖

私と一緒にお祭りに行って?

優成

なんだそれ...!

今この瞬間を どうか永遠のものにしてほしいと

絡ませた小指を見て 2人で笑いながら

俺はただ

雫玖の笑顔が見ていたくて

そっと、少しだけ

小指に力を込めた

暑い空気が

冷房の風に巻取られて離れてく

このなんとも言えない心地も 今日で2週間を超えた

その前までは 冷たい空気と暖房だったけれど

当たり前だった 君の隣を歩く時間は

いつの間にか

高校帰りに

君に会いに行く時間へと 変わっていた

優成

雫玖、起きてる?

雫玖

...あ、優成

雫玖

ごめん、ちょっと寝てた

優成

...寝てろよ

雫玖

......やだ

優成

なんで?

雫玖

こんなに長い期間入院しててさ

雫玖

ほとんど毎日来てくれるの、優成だけだもん

優成

...っ

あの頃は

こんなふうに悲しそうに 笑ったりなんかしなかった

優成

具合は...どう?

雫玖

んー...

雫玖

夏祭りには外出許可貰えそう...

優成

マジ!?

雫玖

......かも

優成

かも...か

雫玖

あぁぁ、心配しないで

雫玖

私は元気だからさ

優成

......そっか

元気なんて嘘なのだと

知っていながら 笑顔を返してしまう俺は

やっぱりまだまだ子供なのだろう

雫玖

半月後...だよね

優成

え?

雫玖

お祭り

優成

えっと...あぁ

優成

そうだな

雫玖

それまでにはもっと元気になるよ

優成

ん...頑張れ

雫玖

うん

雫玖

...あのね、優成

優成

んー?

雫玖

私ね...えっと

雫玖

......

優成

......

優成

...どうかした?

雫玖

あ、ううん

雫玖

なんでもないよ

雫玖

......そうだ

雫玖

お祭りには、
お気に入りの浴衣で行くね

優成

浴衣?

雫玖

そう...結局、まだ全然着れてないし

優成

そっか...それなら

優成

俺も浴衣で行くよ

雫玖

ふふ、嬉しい

・ ・ ・

外に出ると

ウザったいくらいの熱気が 身体に纏わり付く

優成

あち...

最近、雫玖の様子を見ていて思う

毎日会いに行っていたからわかる

優成

(また...痩せたな)

少しずつ、少しずつ

雫玖に巣食うナニかが 雫玖を蝕んでいるようで

泣き出したいほど

それが怖くて、痛くて

そして

こんなにも雫玖の事が好きなのに

それを言葉に出来ない自分も 雫玖を助けてやれない事も

全てがもどかしかった

来年また、君と。

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