テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
121
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
桃瀬
桃瀬
桃瀬
5
4
3
2
1
LAN
LANは、なつの部屋の机に置かれた一冊のノートを手に取った。 表紙は擦り切れ、角が丸まっている。いつも無気力で、何にも興味を示さないはずの弟が、ずっと大切に持っていたもの。
パラリ、とページをめくった瞬間、LANの手が止まった。
『〇月×日。いるまの好きなブランドの新作。今度、誕生日に渡せたらいいな。……無理かな』
『〇月△日。すちの喉の調子が悪いみたい。はちみつ、こっそり置いとこう』
『こさめとみことが喧嘩してた。仲直りできてよかった。……混ぜてなんて、言えないけど』
びっしりと書き込まれた文字。 そこには、自分たちが「勝手にサボっている」と思い込んでいた時間の裏側で、なつがどれだけ自分たちのことを見て、想っていたかが綴られていた。
LAN
ページをめくる手が震える。 最後のページには、掠れた文字でこう書かれていた。 『みんな、大好きだよ。僕がいなくなれば、この家はもっと完璧になる。ごめんね、出来損ないの兄貴で』
LAN
LANの目から涙が溢れ落ちた。 その時、リビングからいるまの焦った声が響く。
いるま
LAN
LANはノートをひったくるように掴むと、階段を駆け下りた。 他の兄弟たちも、顔を真っ青にして玄関に集まっている。
LAN
車を走らせる間、車内は重苦しい沈黙に包まれていた。
助手席でノートを抱きしめるLANの姿に、いるまが恐る恐る声をかける。
いるま
LAN
病院に到着し、処置室の前で待たされる時間は、永遠のように感じられた。 数時間後。出てきた医者の表情は、険しい。
先生
病室のベッドで、酸素マスクをつけられ、いくつもの管に繋がれたなつ。 あんなに皮肉げに笑っていた顔は、今は驚くほど白く、消えてしまいそうだった。
いるま
いるまが、なつの冷たい手を握りしめる。 すちも、みことも、こさめも、声を殺して泣いていた。
LAN
LANは、なつの枕元にあのノートを置いた。 そして、まだ熱でうなされている弟の耳元で、震える声でささやいた。
桃瀬
桃瀬
桃瀬
桃瀬
桃瀬