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女子大生と男子中学生が交際している話  シーズン2

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女子大生と男子中学生が交際している話 シーズン2

28 - 四→五 弐 汚れは消えるけど***は消えない

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2022年02月19日

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山崎 孝太

あぁー…やばい神。神すぎる。語彙力死んだ。もはやあれ……神

俺は自室のベッドで尊(とうと)死しかかっていた。

窓辺に並べられたたくさんのフィギュアに目をやる。 その中でも輝いてる(俺視点)のは やっぱりリョータくんのフィギュアだ。

「テニスの王●様」のガチャで先輩が一発でリョータくんを当てた、と知ったのは3日前のクリスマスパーティーの日だった。

全財産つぎ込んでも出なかった俺は全力で、それはもう全力で先輩をヨイショした。

「足のどの指を舐めたらいいですか」とも言った。 先輩はドン引きしながらリョータくんを譲ってくれた。

とにかくついにリョータくんのフィギュアをゲットした俺は、この3日間フィギュアを眺めては尊死しかかっていた。 (受験勉強はしてる)

とにかくフィギュアが神。 リョータくんの決め台詞である「まだまだですね」が初披露されたシーンを再現しているんだけどヤバすぎる。神。

山崎 孝太

「まだまだですね」……いや違うあの時の まだまだですね はもうちょっと低めの声で…「まだまだですね」……違うな…

俺はベッドに寝転がったまま しばらくブツブツと再現する。 受 験 勉 強 は し て る 。今 は休 憩 時 間 。

山崎 孝太

ん''ん''っ

俺は咳払いを1つすると、ラケットを握ってるつもりの左手を天井に向けて構えた。

山崎 孝太

___「まだまだですね(イケボ)」

決まった___

___ところを開いてるドアの隙間からお姉ちゃんに見られた。

山崎 朋美

………………

山崎 孝太

わあああああぁぁぁぁああぁぁあぁあああっ

俺は高速でお姉ちゃんに背中を向けるとクマノミさんの抱き枕を顔に押し付けた。

山崎 孝太

いやこれあれだから単語覚えてただけだからリョータくんの再現とかしてないから単語覚えてただけだから!

山崎 朋美

……なんでもいいけど

山崎 朋美

勉強に一区切りついたら窓の掃除しとけだって。ここに道具一色置いとくからね

そう言えば今年もあと3日で終わる。

……尊死しかかってる場合じゃない。 俺は のそのそとベッドから起き上がった。

山崎 孝太

………だ、誰にも言うなよ。特に先輩とか、先輩とか。あと先輩とか

山崎 朋美

じゃあ口止め料として雪見大福のチョコ味寄越しな

山崎 孝太

俺が一番好きなやつなのに……この悪魔。デブ。二の腕!

山崎 朋美

あ、そう言うこと言っちゃう?
__お母さん孝太がね~…

山崎 孝太

わああぁぁやめろバカ姉!ばか!!

「掃除なら手伝わないぞ」

「そんな!お願いしますっすセンパイ。コンビニのモンブラン奢るからお願いしますっす」

「う、う~~ん……それなら」

「あざーーっす!!さすがセンパイっす!大好きっす!」

「ほら俺彼女出来たじゃないっすか。彼女との あれやこれやでいろいろ物が増えて整理に困ってたんす。センパイが助けてくれるなら百人りk

「断る!!」

「なんでっすか!? あ、コンビニのモンブランがアレならシャト●ーゼでもいいっすよ」

「いやー彼女がそこでバイトしててー、割チケいっぱい持ってるんすよー」

「うるさいリア充!ばか!!」

___と、格好よく後輩からの電話を切ったものの、実際のところ俺は手持ちぶさただった。

ムカデとゴキブリが怖いので俺は普段からマメに掃除してる。

いわゆる「大掃除」に分類される作業も12月に入ってからコツコツとやって来たので年末までに全部終わった。

__コンビニとシャト●ーゼのモンブランでも買いに行こう、と思っていると、再び電話が鳴った。

またあいつか…と思ったが電話の主は俺の予想外の人物だった。

西谷 春翔

___もしもし何?

春翔か。元気にしてたか

西谷 春翔

モンブラン買いに行こうかなーって考えてるくらいには元気

広輝(ひろき)君も元気か

西谷 春翔

あー元気元気。あいつ彼女出来たってシャト●ーゼでバイトしてるすっごい美人の彼女出来たって良かったねーーーーー

……しっかり教えてやるんだぞ。人生の先輩として

西谷 春翔

おちょくってんのかクソ親父

西谷 春翔

ごめんつい中学時代が……それで何の用?

うん

中澤先生が入院することになった

スマホを落としそうになった。

スマホを持つ手を持ち替え、バクバク鳴る心臓を宥めて電話の向こうの父親に問う。

西谷 春翔

______なんで?

癌(がん)が見つかったそうだ。教職も引退された

今は点滴に繋がれて____臓器提供の資料に目を通している

スマホを落とした。 拾い上げようとして初めて自分の手が震えていることに気づいた。

西谷 春翔

病院

ん?

西谷 春翔

病院、どこ。どこで入院してんの

お前が散々お世話になった あそこだ

西谷 春翔

そっち行く

西谷 春翔

今から行く

そうか

汚れは全部落ちたと思っていた。 落とせたと思っていた。

でもどうしても落ちない__消えない物がある。 消えないから、愛着も湧いた。

オ モ イデ 黒歴史 だけはどうしても消えない。

お前がそこまで必死になるなんてな

「教師」なんてお前が一番忌み嫌っていた人間だろ

今やお前も俺と同じように教壇に立っているんだから分からない物だな

西谷 春翔

うるせぇ黙れ

そう言えば押し入れを整理してたら電子ピアノとノートが出て来たんだが

お前高校生の時 歌作るとか言ってなかったか?彼女に贈るとか…

___ピアノとノート、そっちに送ろうか?

西谷 春翔

やめろぉ!!

___汚れは消えても黒歴史は消えない。

鳴沢 真由子

これとこれは捨てるってことでいいのね

君 日本語読めないの!?「永久保存」って書いてあるよね!

鳴沢 真由子

解き終わったナンプレに何の価値があるの

あああああああああぁ

リビングに降りると、お母さんが大量のナンプレをガムテープでぐるぐる巻きにしてビニール紐で縛っていた。

今年もあと3日で終わる。 僕の家ではお母さんとお父さんによる大掃除がなされていた。

鳴沢 柚月

本当に僕手伝わなくていいの…?

柚月はいいんだよ。受験生だから掃除より勉強。
そしてボクが手伝ってることもおかしいけどね

ナンプレを封印されたお父さんが封印を解こうとハサミを探してリビングをうろうろ しながら答える。

鳴沢 真由子

意外と進まないわね。午前中にエアコンのフィルター掃除までやってしまいたかったんだけど

ハサミを見つけたお父さんが鼻息荒くハサミに手を伸ばす。 __しかし寸前でお母さんがハサミを取り上げた。

ハサミを奪い取ろうとお父さんの手が伸びる。 お母さんは軽々とその手をかわす。

鳴沢 真由子

もう12時回ってるし、一旦休憩ね

再びお父さんが手を伸ばす。 再びお母さんにかわされる。

どうにかしてハサミを手にしたいお父さんとハサミの所有者のお母さんの無言の戦いがしばらく続いた。

鳴沢 真由子

そうだ貴方、お金はあとで渡すから何か適当に食べる物買って来て

鳴沢 真由子

貴方まだ体力残ってそうだし

見事に全部かわしたお母さんは、ハサミを持ったまま腕を組んでお父さんに微笑んだ。

ぐっ……

……ふん。まぁいい、頼まれてあげるよ

鳴沢 真由子

あら、今日は素直じゃない

新しいナンプレを買いに行くついでだ

いる物といらない物に分別する作業の途中らしく、リビングにはあちこちに物が積み上がっていた。

お父さんが帰って来るまでもう1踏ん張りしよう、と体の向きを変えると近くに積まれていた書類を倒してしまった。

鳴沢 柚月

ごめんなさい

鳴沢 真由子

それ捨てる物だから問題ないわ

床に散らばった書類____昔の年賀状を拾い集めていると、1枚の年賀状に目が止まった。

じゃがいもを収穫してる小さな男の子と、隣でピースサインを向ける男の人の写真が印刷された年賀状。

右下に家族員の名前が記載されている。 大澤 貴志 大澤 優子 大澤 蒼空(そら)

「大澤」…。この姓は確か……。

鳴沢 真由子

弟よ

お母さんがスマホに目を落としたまま答えた。 やっぱりそうだ、と確信する。

「大澤」はお母さんの実家の姓だ。 ピースサインを向ける男の人の顔立ちはどことなくお母さんに似てる。

左下に書かれた手書きのメッセージを目で追う。

蒼空ももう3歳になった^^ 姉ちゃんのとこの子供はもう小学生だろ。九九とかやってるんじゃない? たぶん母さんも子供の顔見たら喜ぶって!俺も柚月(漢字合ってる?)くんに会ってみたいし。連絡待ってます。

鳴沢 柚月

お母さんって弟がいたんだね

鳴沢 真由子

頼んでも無いのに家で採れたやつ大量に送って来るけどね

そう言えば依然のぞみさんが作ってくれたポテトサラダのじゃがいも も送られて来たと言っていた。

鳴沢 柚月

親切な人なんだね

鳴沢 真由子

物は言い様ね

相変わらずスマホから目を離さないままお母さんが小さく笑った。

鳴沢 真由子

家の畑を継がずに家出同然で街に出て挙げ句ろくでもない男に孕まされた不良娘なんて ほっとけばいいのに

鳴沢 真由子

お人好しすぎるのよ

鳴沢 真由子

__もっとも「俺は畑も継いだし孫とも住まわせてやってる親孝行者だから幸せにやってる」ってアピールのつもりだろうけど

鳴沢 柚月

そんなこと無いと思うけど

手書きの文章を見てると本当にお母さんの事を心配してるのが分かる。

鳴沢 真由子

………そう思ってた時期があったってだけよ

鳴沢 柚月

………これ本当に捨てちゃうの?

鳴沢 真由子

捨てるわ。場所取るだけだし

鳴沢 柚月

でも…

鳴沢 真由子

催促文なんて

鳴沢 真由子

_____要求を呑んだらもう不要じゃない

鳴沢 柚月

……!

鳴沢 柚月

……うん

鳴沢 柚月

僕も会ってみたいな……叔父さんとか従兄弟とか、おばあちゃんとかに

鳴沢 真由子

向こうがまだ私を家族だと思ってるんならね

鳴沢 柚月

__僕もやっぱり午後から掃除手伝う

鳴沢 柚月

…いろんなこと、わかるかもしれないし

鳴沢 真由子

……好きにしなさい

__去年までは大掃除なんてしなかったのに。

変わっていってる。

そして僕も去年までとは違うはずだ。 これからも変われるはずだ。

高校生になる(はずの)来年は何が起こりどんな風に変わっていくんだろう。

昔を懐かしむと同時に未来にも思いを馳せた。

今年ももうすぐ終わる。

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コメント

4

ユーザー

孝太くんの黒歴史、かわいいですね… 私も中1ぐらいまで友達とおままごとしてたので。。笑 と言ってもまだ中2ですから…笑笑 来年度から受験生、を考えないようにこの話を読もうと思ったら孝太くんまで受験生…‼︎‼︎ これは、やらざるを得ないですね… 今回の話も良かったです…!これからも応援してます✨✨

ユーザー

大掃除って本当 黒歴史発掘しますよね… 私も去年の年末机を整理してたら出て来ました。中学時代に描いた漫画なんですけど、今よりもっと拙い絵で、直視出来ないほどでした😳。ストーリー構成も酷かった… しかし「あ、めっちゃ楽しんで描いてたんやろな」と ひしひしと伝わって来ました。価値観は変われど根底の気持ちは変わらない… 黒歴史があるからこそ今があるのだと実感しました😌

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