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僕は青
目が見えない上に生まれつきの心臓病
いつからかお父さんもお母さんもお見舞いに来なくなった
看護師
青
看護師
青
看護師
青
僕は生まれた時からほとんど病院にいるから看護師さんとはほとんど家族みたいなもの
看護師
青
でも僕1人に使える時間なんてわずかだから
1人で病院内を散歩するのが僕の日課
人生のほとんどを病院で過ごしているから迷うことはない
でも
青
少し歩いただけで息切れを起こす
日に日に言うことをきかなくなる体
青
とんとんっ
青
誰かに肩を叩かれる
ぺらっ
???
紙をめくる音が聞こえた
だが当然目が見えない僕には何をしているのかも
誰に肩を叩かれたのかも分からない
???
青
青
呂律の回らない弱々しい声
僕は一瞬戸惑ったものの
すぐに相手が耳の聞こえない「ろう者」だということに気づいた
青
青
青
ぺらっ
また紙をめくる音
青
???
青
気まずい…
青
看護師
看護師
青
看護師
看護師
看護師
看護師
看護師
ゆっくりと話している
おそらく手話で伝えているのだろう
看護師
青
青
青
看護師
看護師
ピリリリリリ
聞きなれた看護師が持つ携帯電話の音
看護師
看護師
青
青
黄
もう既に困ってるんだけど、、
青
とりあえず手を振ってみる
青
青
青
物心ついた頃から書き続けている日記
ここ数年は毎日同じことの繰り返しで書くことがなくて困っていた
でも今日はなんだか沢山書けた気がする
あの子と話したい
あの子を知りたい
こんなに人に興味を持ったのも久しぶりだ
青
僕は黄
喘息持ちでここ数年は落ち着いていたのに悪化してしまって入院することになった
そして僕は耳が聞こえない
黄
小さい頃はよく入退院を繰り返していた
なんだか懐かしくて院内を散歩してみることにした
久しぶりの病院は何も変わらず
慣れた廊下をゆっくりと歩く
???
しばらく歩いていると壁に手をつき息を切らした少年が目にとまる
いつも持ち歩いているポーチから小さめのノートとペンを取り出す
とんとんっ
大丈夫ですか?
肩を軽く叩いてノートを見せる
???
きょとんとして顔を上げた少年の瞳はこちらを見ていない
黄
???
一向に目が合わない
おそらく目が見えないのだろう
あまり声を出したくないけど仕方ない
黄
???
どうやら伝わったようだ
なにか言っているが残念ながら僕は読唇はできない
ぺらっ
諦めてノートを閉じる
???
何かを言っているのは分かるが何を言っているのかは分からない
黄
???
黙ってしまった
気まずい…
???
少年の顔がぱっと明るくなる
少年の顔が向いた方を見ると看護師さんが歩いてきていた
???
看護師
看護師
二言、三言話したあと看護師さんが僕の方を向いて手話を始めた
看護師
看護師
黄
そんなこと、僕だって分かる
なんて思いながらも愛想良く頷く
看護師
看護師さんの目が胸ポケットの携帯電話へと向く
呼び出されたのだろう
???
笑顔で手を振りながら走り去ってしまった
青
黄
青
青
しばらくの沈黙の後
少年、改め青は手を振りながら去ってしまった
黄
小さく手を振り返しながら僕も病室へ歩き出した
黄
黄
お互い何も伝えられなかった
でも、気を使われる苦しさを感じなかった
あの子と話してみたい
あの子のことを知ってみたい
誰の助けもいらない2人だけの話をしたい
黄
〜数日後〜
あの子とまた会いたくて
重い足を引きずりながら廊下を歩く
青
とんとんっ
優しく肩を叩かれる
青
黄
聞き覚えのある優しい声
今度は紙をめくる音などしなかった
この間より少し大きくなったその声は
間違いなく黄の声だった
青
咄嗟に手を伸ばす
今度は伝わるように
今度は見えるように
ぎゅっ
躊躇いがちに細い手が僕の手を握る
少しだけ覚えた指文字を黄に見えるように大きく動かす
青
青
青
ここ数日
またあの子に会いたくて
毎日のように廊下へ出ていた
今日も喘息の発作を起こさないように
ゆっくりと歩いていると
青
見覚えのある青い髪
思わず駆け寄り、肩を叩く
とんとんっ
青
青
青の口が動くのが見えた
そして青が僕の方に手を伸ばす
ぎゅっ
思わず手を握った
君と話したかった
君の声を聞きたかった
そう、伝えたくて
ゆっくりと確認するように
青が僕の前で手を動かす
黄
すぐにわかった
指文字だ
『ぼくとともだちになろう』
驚いて固まってしまった
不安そうに俯く青
僕はゆっくりと青の手に押し付けながら手を動かした
黄
黄の手を引いて自分の病室へ入る
握っている手が暖かくて
離してしまったらもう掴めない気がして
ベッドに座ってからも手を繋いだままにしていた
黄
黄の手がゆっくりと動く
僕でも分かるように大きく指文字のみで
僕が1文字ずつ読み取るのを確認するように
黄
僕も指文字で返す
青
黄
簡単な単語が並ぶだけな
時間のかかる会話
なのに、僕たちだけゆっくりと時間が進むようで
楽しかった
青
青
黄
覚えたばかりで僕が指文字を読み取るには時間がかかるはずなのに
ゆっくり待ってくれる
黄
青
胸に手を当てる
青
お父さんとお母さんにしか呼ばれていない僕の唯一の愛称
呼んで欲しかった
黄
青
黄
声が聞こえる
優しくて暖かい声が聞こえる
青
黄
黄
今、彼はきっと笑顔なのだろう
僕が笑顔なように
手を引かれながら青の病室へ入る
ベッドに座ったあとも手を離さない
暖かくて、嬉しかった
黄
彼が読み取れるように
大きくゆっくりと指文字できく
青
同い年だ
黄
青
黄
ゆっくりと時間が進む
楽しかった
どれだけ大変でも
話せることが嬉しかった
黄
青
黄
声を褒められたのなんて初めてだ
急なことで声が出てしまった
間抜けな声だった気がする
でも、嬉しかった
黄
青が微笑む
多分、僕も笑っている
〜夜〜
黄
初めての友達との会話を思い出して興奮で眠れない
トイレに行きたくなって廊下へ出る
廊下へ出ると慌てた様子で走り去る看護師たち
向かう先は青の病室の方向
嫌な予感がしてついて行く
黄
医者
医者
青の病室に入った途端目に飛び込んできたのは
苦しむ青を取り囲む医者や看護師
慌てた様子でなにか話している
黄
混乱している僕を見つけた1人の看護師が手話で話しかけてくる
看護師
看護師
黄
たまらずに青へ駆け寄る
寝ようとすると初めての友達と話せた興奮からかいつもより心臓の鼓動が早い気がする
青
違う
興奮なんかじゃない
発作だ
青
苦しい
苦しい
やっとの思いでナースコールを押すと
次々に医者や看護師に囲まれた
医者
医者
青
苦しい
まだ死にたくない
せっかく友達ができたのに
せっかく生きたいと思えたのに
黄
呂律の回らない
叫ぶような声
すぐにわかった
僕を「青ちゃん」と呼ぶのは君だけ
細くて暖かい手が
僕の手を握る
優しく包んでくれる
看護師
医者
青
医者
看護師
口々に喜ぶ声が聞こえる
黄
涙声が聞こえる
くしゃくしゃの君の顔がみたい
手を伸ばすと暖かい肌と水
目
鼻
口
耳
髪
ひとつひとつ確認して
君の顔を見る
青
黄
黄
今までで1番大きくて綺麗な声
君と生きていたい
君を見ていたい
青
こつんとおでこを付ける
黄
君が、大好きだ