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その日はいつもと同じように終わると思っていた

この女から、あんなことを聞くまでは

出来れば嘘であって欲しいが、おそらく本当のことなんだろうな。

頭のネジが外れてるんだ、この女は

……… 意識がどんどん薄れていく

最後まで俺はこの女に弄ばれたんだ という絶望

そしてそれを上回る憎悪

お前は絶対に許さない

涼真

はい、こちら〇〇音楽教室の古川です

さくら

…………………

涼真

……?あの…

さくら

……さくら、今日お休みする

涼真

失礼ですが、担当教師の名前をお聞かせください

さくら

………………あき先生

涼真

…三村先生の生徒の西野さくらさんですね

涼真

わかりました。こちらから三村先生に伝えておきます。

さくら

…………さくら

涼真

はい

さくら

もう弾けるようになったの。あき先生の言った曲

さくら

いっぱい練習したの

さくら

今日は風邪引いちゃっただけなの。ズル休みじゃないの。

涼真

あの…

さくら

だから今日は家まで迎えに来ないでね

さくら

絶対次のレッスンは行くから

涼真

……………

それは奇妙な電話だった

__〇〇音楽教室エレベーター内__

ポーン……

涼真

何階ですか

美月

あ、すみません。
3階までお願いします。

乗り込んで来た女は何故か俺の顔をじっと見てきた

涼真

…なんですか

美月

あ、ごめんなさい

美月

意外だなって思っちゃって

涼真

何がですか

美月

私達のいるB棟、皆さんあまり使いたがらないんですよ

美月

私は新人だから、B棟にある資料持って来いなんて仕事押し付けられてるんですけど

美月

そうじゃなかったら、こんな所絶対1人で来ませんよ。
何せ「出る」って噂ですからね

涼真

そうなんですか

美月

B棟所属の男性が亡くなってしまって、それからここは心霊スポットですよ

美月

…私見えちゃう体質なんです

涼真

はあ

美月

あ、亡くなったって言えば

美月

以前この音楽教室の生徒さんも事故で亡くなってるんです

美月

「今日レッスンはお休みします」って電話した次の日に……

涼真

美月

それから時々、その生徒さんから電話がかかって来るとか来ないとか…

涼真

あの

涼真

…その亡くなった生徒さんの名前とかは……

美月

確か「さくら」って名前ですよ

涼真

……………

美月

どうかしましたか?

涼真

あ、いえ

涼真

ところで、さくらさんを担当されてた方って…

美月

あー、三村先生ですか

美月

あの人あまりいい噂立ってないんですよ

美月

周りを平気で使用人扱いしますし、やりたい放題って言うんですか?

美月

この会社の社長の娘らしくて、皆何も言えないんですよ

美月

レッスンもほぼパワハラじゃないかって噂で、きっとさくらさんも…

涼真

え?

美月

あ、な、なんでもないです

美月

今の絶対秘密にしてください。私も睨まれますから

__某ホール内__

三村亜紀

ふーん、まぁまぁって感じね

三村亜紀

ここでピアノ演奏したらいいの?

涼真

はい。そのように承っております。

三村亜紀

まぁそれはいいんだけど

三村亜紀

あのピアノじゃないといけない?

三村亜紀

なんか古くさいってゆうか…

三村亜紀

倉庫で眠ってたのを引っ張り出しました感丸出し

三村亜紀

別のにしなさいよ

涼真

それは……

三村亜紀

はあ?

涼真

それは……出来かねます

三村亜紀

……あんた今の仕事辞めたいの?

本当に冴えない男だ。 大きなマスクで顔を覆い、モゴモゴボソボソ喋る

こういう仕事の際はイケメンの高田君を寄越せと言っているのに、どうしてこんな冴えない男だ来るのだろうか

まあ高田君もずば抜けてイケメンというわけではないけど。及第点と言ったところ

私のハートをしっかり射止めたのはあの人だけ…………………………

……嫌なこと思い出した

三村亜紀

ねえ、喉渇いたからジュース買って来てよ

涼真

……原則としてここは飲食禁止なんですが

三村亜紀

誰も居ないからいいじゃないのよ!細かい男ね

いちいち面倒臭い男だ

パパに言ってこいつの給料3分の1カットにして貰おう

私にはなんだって許される。周りの人間を使用人扱いしても

パワハラまがいのレッスンをしても……

三村亜紀

何回言ったら分かるの!?

三村亜紀

ドのシャープが弱い!

三村亜紀

もう1回弾いて!

~♪ ~~♪

三村亜紀

テンポが違う!

三村亜紀

メトロノームに合わせなさいって何回も言ってるでしょ!?

三村亜紀

ちゃんと出来るまで帰らせないからね!!

さくら

指痛い……

さくら

トイレ行きたいよ…………

三村亜紀

あんたが下手くそだからでしょうが!口答えすんじゃないよ

三村亜紀

ああ、また違う

三村亜紀

あいつ何休んでんのよ

三村亜紀

風邪?どうせ仮病だろ

三村亜紀

電話してやる

三村亜紀

三村亜紀

ちょっとあんた何休んでんの?

さくら

ごめんなさい…風邪引いて………

三村亜紀

ちっ

三村亜紀

じゃあ明日来なさいよ。

さくら

え…

三村亜紀

どうせ仮病なんだから明日来る体力くらいあるでしょ

三村亜紀

下手なんだからそれぐらいしなさいよ

その翌日、あいつは レッスンに向かう途中事故にあって死んだ

三村亜紀

そうだ、あのピアノってその時のやつじゃ……

三村亜紀

何!?

涼真

停電ですね

三村亜紀

ですね じゃないでしょ!なんとかして来てよ!

涼真

はい

三村亜紀

本当使えないわね

~♪

三村亜紀

え?

あのピアノの音が真っ暗なホールに響く

三村亜紀

何これ、なんで……

~~♪

あき先生

さくら ちゃんと練習して来たよ

三村亜紀

……!

電灯が激しく点滅した。 ホールに闇と光が交互に訪れる

そしてついにピアノがはっきりと視認できた

三村亜紀

いやぁっ

私はホールの出口に向かって走った

客席に何度もぶつかりながらも、確実にピアノから遠ざかっているのに………

背中にぶつかるピアノの音はどんどん大きくなる

三村亜紀

やめて、やめて!

あき先生 さくら上手になったでしょう

__誰かが私の手を掴んだ

三村亜紀

いやぁっ放して…

涼真

三村先生

三村亜紀

え……

涼真

電気、つきましたよ

私の手を掴んだのはあの冴えない男だった

ホール内から暗闇は去り、ピアノの音も消えている

それでもピアノの方を見ることが出来ずに私は早口でまくし立てた

三村亜紀

…私やらない

三村亜紀

こんな所で演奏なんかやらないから!

涼真

どうしてですか

三村亜紀

こんな幽霊が出る場所で出来るわけないでしょ!

涼真

何を見たんですか

涼真

誰を見たんですか

三村亜紀

あんたには関係ない!いいから放してよ…

振りほどこうとしたが、すごい力で私の手首を掴んでくる

あと手が氷のように冷たい

三村亜紀

放してってば、なんなのあんた

涼真

…覚えてませんか

男がもう片方の手で顔を覆うマスクをとった

三村亜紀

………!

マスクの下にあった、その端正な顔立ちは忘れない

三村亜紀

あなた……

涼真

昔〇〇音楽教室B棟で働いていた者です

涼真

社長の娘でやりたい放題の貴方のお気に入りでした

涼真

私には妻がいると何度言っても聞く耳を持たず、ストーカーのようにつきまとってきましたね

涼真

自宅を調べあげ、昼夜問わず1日何百回も電話やメール…

涼真

それでも俺が貴方になびかなかったので貴方は……

私の手首を掴む力はいよいよ強く、関節がギシギシと音をたてる

涼真

殺しましたね

涼真

巨大なバックで従えないものはなかった貴方の過度な支配欲は、一向になびかない俺を前に殺意に変わった

涼真

常人には理解し難い感覚だ。そんなもので俺は殺された

涼真

少し顔を隠せば、かつて死に追いやった男の顔も忘れる

涼真

そんな程度なんだ

涼真

さくら に対しても

三村亜紀

再びホール内に闇が満ちた

そして響く

ひときわ強いピアノの音

涼真

さくらはね、俺の娘なんです

涼真

母親は違いますがね

涼真

俺が出て行く以前からずっとピアノを習いたがっていました

涼真

上手くなったでしょう。文句のつけようがないですね

涼真

さくらはピアノが大好きなんです

涼真

ずっと一緒に聴いていましょうよ

三村亜紀

いや……誰か……

涼真

三村先生

三村亜紀

誰か助けて!

「あき先生 さくらのピアノ聴いててね」

三村亜紀

いやあああああああああああっ

勘違い女の絶叫を、達者な演奏がかき消していく…

某ホールから、女性の変死体が見つかるのは少し後の話___

ある親子がいた

再婚して別々の姓を名乗ることになった親子__

父親は職場の女からのストーカー行為に悩まされ、 子どもはパワハラまがいのレッスンを受けていた

そして共に命を落とした、不幸な親子__

しかしついに巡り会う

ホールから出てくる親子。 その姿は誰にも見えない

「さくらのピアノどうだった?」 「すごく上手だったよ」

そんな言葉を交わしながら

二人は手を繋ぎ、歩きはじめた

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