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しゆん

(ここか、、)

しゆんはてるとのことは知っていたが、家にはまだ来たことがなかった。

しゆん

(てるとがいるなら、絶対に見つけ出す。死んでも見逃したりなんてしない。)

ガタン

軽く音を立てて馬車が止まった。

しゆん

よし

固く覚悟を決めて馬車から降りた。

てると?

さぁ、行きましょうっ!お母様達が待っているわ

偽のてるとは待ちきれない様子でしゆんの手を握ってくる。

しゆん

あぁ

適当に返事をしながら辺りを見渡す。

すると茂みに紛れてキラリと光るものがあった。

しゆん

あれは、、

手に取ると、てるとが履いていたガラスの靴だとすぐにわかる。

てると?

どうしましたの?

しゆん

なぁ、これ、お前の靴だよなぁ?もちろん

怒りを抑えようとしても言葉の圧に現れている。

てると?

あ、いえ、その!はい!そうですわ。私のよ。

てると?

こんなところに落としてしまうなんて、、ありがとうございます!

しゆん

本当に?

てると?

っ!!

てると?の顔は青ざめている。

てると?

で、でも!ほら、今も履いているものと同じデザインでしょう?

と、急いで足を少し前に出して薄く笑った。

しゆん

そうだな、お前の靴だろうな。

しゆん

まぁ、でも、これは俺が預かっておくから。

てると?

は、はい。

しゆん

俯いてどうしたの?元気ないじゃん?

てると?

そ、そんなことないですわ。ほら、早く中に入りましょう!

てると?は慌ててドアを開けた。

てると

しゆ、ちゃ?

てると

なんて、来るはずない、か。

いくら王子様でも、こんなに早く見つけられない。

てると

いや

王子様だからこそ、周りに目を配らないといけないし、急に抜け出してなんて来れない。

てると

僕なんて、ただの庶民だし

てると

男、だし、

てると

あー、馬鹿みたい

そう、全くもって馬鹿みたいだ。

あんなに優しくても真実を知っちゃったら結婚しようなんて言ってくれない。

そうだ、もしかしたら、パーティーで婚約者を見つけてるかもしれない。

きっと、そんな子は、美人で、お金持ちで、素直ないい子で、親からも愛されて育ったんだろうな、、。

てると

暇すぎる、。

何もすることがなくて、嫌なことばかりが頭を埋める

そして、冷静になってきて気がついたが、靴をどこかで落としたらしく、片方ない。

てると

まぁ、どうでもいいけど

ごろんと寝そべって天井を見上げた。

てると

ん、、

何か、忘れているような気がする

てると

僕が、気絶する前に見たもの、、、

断片的に記憶に残る、ピンクのドレスと、ガラスの靴

てると

あれ

そして、自分と似たような顔が、、、

てると

そんなっ!

お母様と、偽物の僕、みたいな人

てると

次女のお姉様は家にいたから、、、

もし、もし仮に長女が僕に魔法が何かで変装して、代わりに舞踏会に行ってしまったら

てると

僕がいないことなんて、誰も気が付かない。

てると

(しゆちゃ、お姉様と結婚なんてしない、よね?)

てると

(あの、優しい笑顔を独り占めしたり、温かい体温で抱きしめられたりとか、、)

想像するだけで、本当に許せない

てると

どうか、、

今まで生きてきた中で1番の期待。そして、それが果たされなかった時の絶望は、きっと何にも例えられない。

てると

どうか!

しゆちゃが、

てると

他の人の物になりませんように

薬の効果が切れてきて、ようやく喋りやすくなった。そして、その切実な願いは、どこまでも届きそうなくらい、 真っ直ぐに響いたのだった。

しゆんはというと、もう家の中まで来ていた。

しゆん

今、助けるから

本当にあと少しで全てが上手くいく

そう思うとずいぶん早いものだ。

しゆん

(偽物には驚いたけど俺がてるとをわからないはずがない。)

てると?

お母様、知っていると思うけれど、紹介します。しゆん様、この国の王子様です。

てると?

もう私達、すぐに惹かれ合ってしまいまして

てると?

ね?

しゆん

どうぞよろしく

ぶっきらぼうな声で答える

しゆん

おい、この家には何人いる?

お母様

はぁ

全然王子を騙せていない様子に、お母様がため息をついた。

王子にバレないようにてるとの姿をした長女を睨む。

てると?

だ、大丈夫よ

お母様

あなたに任せたのが間違いだったわ。

てると?

なんでよっ!

長女は悔しくて唇を噛んだ

てると?

(やっぱり、てるとじゃないといけないって言うの?)

確かに、自分は悪いことをしたかもしれない。

てると?

でも、しょうがないわよ。

小声で呟く。

だって、てるとを虐めないと自分も惨めになるような気がした。

てるとを利用しないと、王子様と結婚できなかった。

てると?

お母様の言うとおりにしないと、最悪、魔法で蛙にされちゃう。

それに、たまたまてるとは知らなかったが、お母様は魔法使いだった。

てると?

私が王子様と結婚すれば、家も裕福になるし、何も悪いことはしていないわ。

しゆん

なーに話してんの?俺はお前の家族のこと、知りたいだけなんだけどな。

しゆんは長女の肩に手を乗せ、笑顔で聞いた。

てると?

こ、こわい

しゆん

何?

お母様

うちには女の子が2人、あとは、旦那と私だけよ。

お母様

(申請してある資料はすでに変更済み。男の子が1人いることはどこにもないはず。)

お母様

ふふふ

お母様

(探せるものなら探してみなさい!)

しゆん

じゃあ、もう1人の女の子は?

お母様

今呼んでくるわ。

階段の方に歩いて行って2階に呼びかけると、次女が嬉しそうに降りてきた

次女

わぁ、すごい、すごい!本物の王子様でしょ?

しゆん

うぇーす

次女

きゃー!ねぇ、お母様、王子様が、なんでこんなところにいらっしゃるのかしら?

わざとらしい口調で問いかける

お母様

お優しい王子様は少し変わっていらしてね、うちの娘と結婚してくださるらしいの。

次女

ええー?まじー?おねぇちゃんすごすぎー。あーあー!私も舞踏会行きたかったなぁ。

てると?

ふふ、偶然気に入ってもらえるなんてね!

次女

でも、私もお姫様になれるってこと?テンション上がるーっ!

ちょっとしたお祭り騒ぎに、しゆんが口を挟む。

しゆん

なぁ、この靴ってお前の?

次女はあっ!という顔をした。

次女

(てるとの足から脱げて、庭に落ちたのかも)

長女が止めようとしたのも目に入らず、咄嗟の判断で口にする。

次女

わ、私の靴よ!探してたの!

刹那、冷酷な魔王のように、美しくて感情が一切読めない笑みに、皆固まった。

王子の微笑に、お母様でさえ、動揺した。

しゆん

あれ、俺の勘違いだったらごめんなんだけど、てるとの靴じゃなかったっけ?

‥‥‥‥

沈黙

その元凶である王子は、自覚がないのかケロッとしている。

しゆん

おーい!どっちの靴なんだよ!!

てると?

あ、あの、その、似たような靴を持っているので、間違えたのかもしれません!!

てると?

そ、そうです!どちらの靴かわからなくなりました!

しゆん

あー、なるほどな。じゃあ、履いてみれば、サイズとかでわかるかな?

長女と次女は運が悪かった。ご丁寧にも、この靴はばぁうがこっそりてるとの足のサイズを測り、細かな拘りまで詰まっているオーダーメイド

さらに、履き心地が良いように、てるとの足にぴったり当てはまる、魔法の微調整付きだ。

それくらい、てるとが愛されていた。

愛していたから、しゆんもすぐに偽のてるとを見抜けた。無論、この、ガラスの靴を使って問い詰める作戦が上手くいかなくても、諦める気は微塵もない。

しゆん

(こいつらの動揺を見るに、これがてるとの靴、つまりてるとがこの近くにいることは確実)

残念ながら、もう逃げ場はない。

しゆん

さぁ、どっちから履く?

しゆんは無邪気な声で、鋭い目線を周囲に向けながら言った。

If 騎士Aシンデレラ

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コメント

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