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第100話『桜が咲いていた頃』
昼下がりの部屋は、静かだった。
窓から差し込む光は柔らかく、夏の盛りだというのにどこか春の名残を思わせる。
らんは自室の床に座り込み、背中をベッドに預けたまま、膝の上に一冊のアルバムを置いていた。
古い紙の匂い。
何度も開かれた痕跡のある、少し擦り切れた表紙。
らん
ぽつりと零れた声は、誰に向けるでもない独り言だった。
それは、活動を始めて間もない頃からの写真をまとめたアルバムだった。
自分が、六人で過ごしていた日々を、確かに生きていた証。
ページの端には、雑な字で日付や短いメモが書き込まれている。
――○月○日 初配信 ――○月○日 みんなで夜更かし ――○月○日 桜がきれいだった
指先が、自然とその文字をなぞる。
らん
その単語に、胸の奥がちくりと疼いた。
理由は分からない。
思い出せる情景も、音も、匂いもない。
ただ、何か大事なものに触れかけた感覚だけが、確かにあった。
らんは、ゆっくりとページをめくる。
そこに写っていたのは、満開の桜の下で並ぶ六人の姿だった。
誰かがふざけて変なポーズをしていて、誰かがそれに突っ込み、自分は――
らん
写真の中の自分は、笑っていた。
今よりも少し幼くて、でも、迷いのない表情で。
胸が、ぎゅっと締めつけられる。
らん
その瞬間。
ずきん、と――頭の奥を、鋭い痛みが貫いた。
らん
思わず、アルバムを落とす。
両手でこめかみを押さえ、歯を食いしばる。
視界が揺れ、耳鳴りがする。
らん
息を整えようとするが、うまくいかない。
頭の内側で、何かが拒絶するように、ざわついている。
――まだ、思い出すな。
そんな声が、聞こえた気がした。
らん
らんは、床に落ちたアルバムを見下ろす。
ただ知りたいだけなのに。
自分が、どんな時間を生きてきたのか。
誰と、どんなふうに笑っていたのか。
それだけなのに。
震える手で、もう一度アルバムを拾い上げる。
今度は、意識的に、ページをゆっくりめくった。
次のページ。
次のページ。
配信の裏側。
オフの時間。
机に広げられた資料。
床に散らばるお菓子の袋。
どれも、確かに“自分のはず”なのに、 心が追いつかない。
らん
ぽつり、と呟く。
らん
喉の奥が、ひりついた。
写真の中では、誰かがこちらを見て笑っている。
その視線が、痛い。
――どうして思い出せないんだ。
――どうして、こんなにも大切そうなのに。
ページをめくるたび、頭痛は強くなっていく。
けれど、やめられなかった。
もしかしたら。
次の写真で。
次の1枚で。
何か、取り戻せるかもしれない。
そんな淡い期待だけが、らんを支えていた。
らん
限界だった。
らんはアルバムを抱え込むようにして、前かがみになる。
視界が滲み、喉が詰まる。
らん
声を出そうとしても、掠れて音にならない。
写真の中の自分は、あんなにも自然に笑っているのに。
今の自分は、どうしてこんなにも苦しいのか。
気づけば、ぽた、と床に水滴が落ちていた。
――ああ。
泣いているんだ、と、遅れて自覚する。
らん
震える声。
らん
誰に聞かせるでもない、願い。
らん
言葉の途中で、声が詰まる。
アルバムを強く抱きしめる。
まるで、それが消えてしまわないように。
らん
答えは返ってこない。
部屋は静かで、時計の針の音だけが、やけに大きく響いていた。
しばらくして。
らんは、ゆっくりと深呼吸をした。
何度か繰り返し、ようやく震えが治まる。
涙を袖で拭い、アルバムをそっと閉じる。
らん
無理に思い出そうとしても、逆効果だということは、もう分かっていた。
立ち上がり、アルバムを棚に戻す。
その背表紙を、名残惜しそうに一度だけ見つめてから。
窓の外に目を向ける。
夏の空は、どこまでも高く、青い。
らん
まだ遠い季節。
けれど――なぜだか、その言葉だけは、胸に残り続けていた。
らんは、静かに目を閉じる。
今は、思い出せなくてもいい。
今は、分からなくてもいい。
でも、いつか。
桜が咲く頃には。
その時、自分はきっと――ちゃんと、みんなのところに戻れる。
そんな予感だけが、胸の奥で、かすかに灯っていた。
第100話・了
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡280
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コメント
5件
もう百話!?すごすぎる!✨️ やっぱり誕生日まで思い出せないのかな... 苦しくても頑張ってる🌸くん偉すぎる!😭 投稿ありがとうございます!!続き楽しみにしてます!!!
桜のワードで引っかかってるの、思い出せる予兆……? らんらん頑張って!!