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なんか…すごいですね… ほんとに表現の仕方が人を惹きつけるし、続きがすごく楽しみです…!孝太くんもイケメンだった…笑 次回まで大分空くのですごくいい作品を待ってます笑笑笑 これからも頑張ってください✨✨
のぞみさんとなごみさんは、元カレくんの過去を知っております😊 読んでくださりありがとうございました❗
教師になりたかった。
毎日シャツにアイロンをかけ、家でも教材やテスト作成に勤しみながら
それでも心の底から生徒を愛している。 ___そんな父の背中は何よりも格好良かった。
俺も教師になりたい。 小学校の卒業文集には迷わずそう書いた。
しかしその文集を提出した僅か2日後。 父の勤務する中学が新聞に載った。
「生徒に暴言。胸ぐらを捕み暴行。」 下校時間を過ぎた放課後、部室に忘れ物を取りに来た生徒を大声で怒鳴り付け殴ったと言う。
___真相は 見回りに出た父が隠れてタバコを吸っている生徒を目撃し、タバコを取り上げようと揉み合いになっただけだが
世間は被害者の、弱者の味方だ。 未成年が大人に殴られたと主張すればそれを真に受ける。
不条理だ。
父はただ職務を全うし信念を曲げなかっただけ。 愛する生徒を非行の道に進ませないよう戦っただけ。
都合の悪い部分は全部ねじ曲げた生徒のお咎めは無しで、父は「暴力教師」のレッテルを貼られて職を追われた。
不条理だ。不公平だ。 しかし父はそれでも、怨嗟の言葉を並べることはなかった。
なんで父さんが悪者になるんだよ。父さんは何もして無いのにおかしいじゃんかよ
泣きじゃくる俺の頭を、父はペン胝(だこ)が出来た大きな手で撫でた。 そして子守唄を聴かせるかのような優しい口調で言った。
10代はな、大人じゃ無いが子供でいる事が許されない難しい時期なんだ。 自分でも扱い方が分からないのに、他人の俺達がどうにか出来るわけがねぇ
____俺達 教師に出来るのはそれを受け止めてやる事さ
不条理だ。
____どれだけ生徒を愛しても、それは一方通行で終わるなんて。 それを受け止めるなんて。赦すなんて。
それが「教師」だなんて。
不条理だ。
……憧れだったのに。
___そして俺は中学生になった。
「待てよ、暴力教師の息子」 「あ?んだよその目は」 「レーギがなってないよな。だから暴力事件起こすんだよ」 「違ぇねぇ。親も親なら
「お前俺の後輩に手出したらしいじゃん。1年のくせに調子乗ってんじゃねぇぞコラ
図星言われたからってキレてんじゃねぇよ暴力教師の息子
「あいつヤバいよな」「誰?」「西谷。暴力教師の息子。入学早々喧嘩ばっかりしてる。今も3年とやり合ってるって」「やば。親も親ならってやつ?
女子大生と男子中学生が交際している話 シーズン2 第6章「受験」編 第10話
【四天王】 西谷春翔
「グレた」と言うやつだ。
罪を全部父に擦り付けた生徒に対する苛立ち、咎めない父、 理想との乖離。
___人の口に戸は立てられない。壁に耳あり障子に目あり。 中学に上がった俺を待っていたのは「暴力教師の息子」に向けられる、好奇と侮蔑と嫌悪の視線だった。
全てに苛々した。
__5歳の頃から柔道を習っていたし上背もあった。要は揶揄(からか)って来る輩(やから)相手との喧嘩に明け暮れていた。
教師も同級生も完全に腫れ物扱い。父ですら悲しそうに微笑むだけで何も言わない。 全てに苛々した___…
……、のだが。
中澤
西谷 春翔
トイレの個室から出ると真正面に年配の、見た目は校長やってそうな女が立っていた。
中澤
西谷 春翔
中澤
西谷 春翔
中澤
西谷 春翔
俺はババアを押し退けると、足取り荒くトイレをあとにした。 ___教師も同級生も俺を腫れ物扱いするが
この見た目校長女は、数学の中澤は、ババアは。 いつも俺に付きまとい、世話を焼きたがる。男子トイレにも普通に入って来る。
今も大和撫子みたいにニコニコ笑いながら俺の3歩後ろを………。 後ろを………………。
西谷 春翔
中澤
西谷 春翔
中澤
西谷 春翔
中澤
西谷 春翔
こんな感じでババアはいつも強引だ。
ババアに連れて来られたのは、電車で3駅の田舎町、瑛千町だった。
瑛千駅から更にバスで数分。家より田んぼの方が多いんじゃねぇのって一帯に
不釣り合いなほど真新しい、赤い屋根で白い壁の建物が建っていた。
中澤
中澤
西谷 春翔
俺はバスに乗る前に買っ(て貰っ)たモンブランの箱を眺めながら生返事をする。
ババアが慣れた様子で玄関扉らしきドアを開けた。 経営者の趣味なのか、カントリー調の内装に
尾根 広輝
無遠慮な大声が響いた、と思ったら、いかにも頭の悪そうな子供にババアがタックルされていた。
尾根 広輝
中澤
尾根 広輝
中澤
西谷 春翔
俺が抗議の声を上げるより早く、広輝とか言う頭の悪そうな子供が目を輝かせて俺を見た。
尾根 広輝
そして馴れ馴れしく、俺の手を握り図々しく「こっちっす」と先導し始めた。
西谷 春翔
尾根 広輝
西谷 春翔
西谷 春翔
尾根 広輝
西谷 春翔
尾根 広輝
西谷 春翔
俺は一体何をしてるんだ。
___公式に当てはめて解くだけの簡単な問題集を30分以上かけて完遂させてやると、俺はテーブルに突っ伏した。
尾根 広輝
もうこいつとは2度と関わりたくない。 __ババアが3人分のモンブランを皿に盛って現れた。
中澤
尾根 広輝
西谷 春翔
モンブランを貪りながら げんなりと答えるが、ババアと子供は何が楽しいのかクスクス笑い合っている。
中澤
尾根 広輝
西谷 春翔
尾根 広輝
西谷 春翔
俺はモンブランを流し込むと席を立った。
西谷 春翔
尾根 広輝
中澤
尾根 広輝
西谷 春翔
マジで無駄な時間を過ごした。
挙げ句「教師になれば」とか言われるし。 ふざけんなクソ。
イライラしながら玄関ドアから外に出ると
敷地の外、塀の隙間からランドセルを背負った2人の小学生がニヤニヤ笑いながらこちらを覗いているのを見つけた。
「ここだろ。[おねぇ]がいんの」 「こんな女みてーなとこにいんの?マジ[おねぇ]だな」
小学生2人は俺と目が合うと、途端に顔をひきつらせて脱兎の如く駆け出した。 ……見るとも無しにそれを眺めていると
中澤
西谷 春翔
中澤
中澤
西谷 春翔
そう言う生き方もあるのか。「トランスジェンダー」と言う言葉は初めて聞いたが、特に驚きはしなかった。
「世の中にはいろいろな人がいる。受けとめるのが、教師だ」が口癖の、教師の、父がいるからだろうか…。
____でも「世の中」の多くは自分の物差しで評価する奴で構成されている。 逸脱した物は攻撃される。
俺のように。 ___今窓からこちらを覗いている、広輝とか言う子供のように。
西谷 春翔
西谷 春翔
子供は答えなかった。ただ馬鹿みたいにヘラヘラ笑ってるだけだ。 ___俺は舌打ちして敷地の外に出た。
アイツも俺と同じように、遠慮の無い視線に晒されて来たんだろう。 でも俺はアイツとは違う。
俺はアイツみたいに逃げたりしない。
あの日以来、ババアとは口をきいていない。
相変わらず一方的に付いて来て、男子トイレにまで入って来るが全部無視している。 個室に入って鍵をかけて無視し続ければババアも諦める。
__イライラする。 あの日の、あの馬鹿ガキの馬鹿面が頭に媚り付いてる。
アイツの弱虫根性にイライラしてるんだが、どうしてだろう。 小骨が引っかかったように、何か腑に落ちない。
俺はアイツとは違う、俺は逃げたりしてないのに、どうして…
中澤
……今日はババアがしつこい。 いつになく焦った感じで悲鳴じみた声なんか出してる。
初めは無視を決め込んでいたが、ドアをガンガン叩いて来るので身の危険を感じて開けた。
西谷 春翔
中澤
西谷 春翔
中澤
流れも川端も水深も大したことなさそうな川がある。
その川の真上の橋の欄干に、あの馬鹿ガキが片足を引っかけて身を乗り出していた。
西谷 春翔
ババアに急き立てられる形で俺はまたこの町に来ていた。 ガキの意図を察して欄干から引きずり下ろす。
馬鹿ガキは抵抗せず、俺を見ると萎んだ紙風船のように力なく笑った。
尾根 広輝
西谷 春翔
尾根 広輝
尾根 広輝
子供は相変わらず馬鹿面浮かべたまま、欄干に視線を戻すと堰(せき)を切ったように喋り出した。
尾根 広輝
尾根 広輝
尾根 広輝
尾根 広輝
尾根 広輝
西谷 春翔
馬鹿ガキが再び欄干に足を引っかける。 俺はその背中に、静かに問うた。
西谷 春翔
尾根 広輝
西谷 春翔
馬鹿ガキが きょとんとした顔で振り替える。 その純真さを直視出来なくて、俺は目を逸らした。
西谷 春翔
西谷 春翔
西谷 春翔
西谷 春翔
あの後馬鹿ガキはやけにスッキリした顔で、「おれ センパイと同じガッコー行けるように頑張るっす」とか言って帰って行った。
勝手に納得して勝手に吹っ切れて…本当に人騒がせなガキだ。
中澤
帰路につきながら、相変わらず大和撫子みたいに後ろをついて歩きながら、ババアがほざく。
中澤
西谷 春翔
中澤
俺は教師になりたかった。父親の背中は何より格好良かった。
だから打ちのめされた。 理不尽に悪者にされてもなお生徒を愛する教師の父は
とても偉大で、とても遠いところにあると。 自分はそこに追い付けるだろうかと。
理想との乖離。 だから夢を捨てようと決めた。全てに苛々した。
だけど一番苛々したのは弱い自分に対してだ。 俺はずっと
教師になりたかった。
俺の、奥底に秘めた本当の思いを あの人は掬い上げてくれた。
だから今の俺がいる。 ___さぁ「教師」としての初陣だ。
西谷 春翔
吉田
吉田くんは持参したペットボトル飲料を傾けながら、馬鹿にしたようにせせら笑う。 俺は構わず続けた。
西谷 春翔
西谷 春翔
西谷 春翔
吉田
西谷 春翔
西谷 春翔
吉田
ペットボトルを弄んでいた吉田くんの手が止まった。声も低くなる。 ___俺は構わず続けた。
西谷 春翔
吉田
西谷 春翔
吉田
西谷 春翔
西谷 春翔
西谷 春翔
吉田くんの…いや、吉田 響くんの顔から表情が消えた。 いつも大勢の人に囲まれて大声で笑って喋ってる「吉田くん」じゃない
これが本当の姿だ。
西谷 春翔
西谷 春翔
頬に水滴が流れた。 髪から雫が滴り落ちる。
2月の外気の中、冷たい飲料水が頭から落ちて来る。
俺の頭上でペットボトルを傾けた吉田 響くんは 怒りに燃える目で俺を下から睨み付けた。
吉田 響
吉田 響
吉田 響
吉田 響くんがペットボトルを地面に叩きつけた。間抜けな音を立てて大きくバウンドする。 ____俺は構わず続けた。
西谷 春翔
吉田 響
西谷 春翔
西谷 春翔
吉田 響
山崎 孝太
____吉田 響くんの顔が大きく歪んだ。
山崎 孝太
山崎 孝太
吉田 響
浅い呼吸を繰り返し、ギリギリと歯ぎしり しながら、吉田 響くんは声の主を睨む。
録画終了を告げる、場違いな電子音が孝太くんのスマホから鳴る。 孝太くんはそれをポケットに納めると、俺の隣に並んだ。
山崎 孝太
山崎 孝太
山崎 孝太
お知らせ!
まずは謝辞。 予告なく更新が遅れてしまい申し訳ございません。 そして長くなりましたがここまで読んでくださりありがとうございます。
もう少しだけお付き合い頂ければ、と思います。 では以下からお知らせ↓
次回、いよいよ吉田の過去!! ですが
ストーリーの構成上、2話続けて出した方が楽しめると思うので、、
次回は2話投稿します! なので!!
次回更新はお休みします!!
ごめんなさい4週間ください🙇。 4週間分の!激動の展開をお届けしますゆえ!!
ですので次回 六⑪ 吉田~独裁者ノ過去~ 六⑫吉田~独裁者ハ哄笑ス~ は、9月4日に投稿致します🙇。
次回もお付き合いくだせぇ。ください。 読んでくださりありがとうございました❗