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〜渉 side〜
時雨桜
その言葉の直後、物を落とした音と、 ついでに踏みつけるような音も鳴る
渉
優
元々、この作戦にあまり期待は していなかったが……
それにしても、あの時の時雨桜の 反応が、妙に引っかかる
俺が手錠をかけた直後、ずっと 冷静沈着だったあいつが、突然焦った ように暴れ出した
まるで、理性を失ったかのように
その後、追う予定ではなかったから 逃したが、そのまま捕まえることも できたと思うと……
渉
優
渉
優
長身の見た目に反して、声は 可愛らしい少女のようなものだった
女性というより、女の子と 言った方が適当だ
優
渉
優
それから、学校での調査も しなければいけない
二年三組の藤咲彩莉
今日の昼に会った時、真冬の彼女と 言っていた藤咲は、最近真冬とよく いるのを見かける
前から浮上している、 『時雨桜複数人説』
春舞で出ている『相川真冬時雨桜説』 も含めると、今のところ怪しいのは、 一ノ瀬彼方と藤咲彩莉の二人
頭脳明晰な生徒会長も十分怪しいが、 藤咲彩莉は、何か引っかかる
突然仲良くし出したのも怪しいし、 何より、昼に話した時は、嘘を 言っているようにしか見えなかった
探偵をやっているおかげで、 人の動きを見れば、相手が嘘を 言っていても粗方見抜ける
彼女は、俺が真冬のことを聞いた時、 少し怪しんだような顔をした
それから俺の質問に答える時も、 まるで本当だと言うように、 強く言っていた
それが逆に怪しい
ほぼ確実に、彼女は何かを知っている
そして、何かをしている、もしくは、 何かに巻き込まれている
……少し、仕掛けてみるか
〜彼方 side〜
美術館での出来事から、二日後
プルルル……
九葉
彼方
相手が電話に出た直後、 単刀直入で聞く
九葉
彼方
九葉
彼方
毎回毎回、俺のパソコンに 土足で入って来やがって……
九葉
九葉
全く悪びれた様子もなく、 そう聞き返される
彼方
九葉
その“ただの嫌がらせ”で、 ユキがどれだけ危険な目にあったか
九葉
彼方
九葉
ああ言えばこう言う…… 本当にこいつは、敵に回すと厄介だ
九葉
九葉
彼方
九葉
あのことは一旦頭の隅に置いて おいて、もう一つ、重要な話を しないといけない
彼方
九葉
電話越しでも、 空気が張り詰めたのが分かる
彼方
九葉
あっちもパソコンをいじってるのか、 カタカタ、というタイピング音が 聞こえてきた
彼方
九葉
そう返された後、俺が特定した “ファントム”の情報を伝えた
九葉
彼方
俺達二人がかりで手分けして、 “ファントム”の情報を探して、 やっと見つけた
けど、見つけただけ。 本題はここからだ
九葉
彼方
九葉
その言葉を最後に、通話が途切れた
世界的犯罪組織、ファントム
世界中の警察や、警察の家系である 探偵の浦田も、裏でずっと追っている
けど、一切証拠を残さない奴らで、 警察が総力を上げて探している中、 全く捕まらない
俺達がやっていることは、そいつらの グループサイトのようなものを、 特定すること
どちらかが見つけて、セキュリティ 突破は、俺よりハッキングの腕が 優れているリーフに任せる
突破した後は、あいつらの情報と 計画を、根こそぎ抜き出して……
プルルル……
彼方
九葉
突破できたって、さっきの電話が 終わってから、五分も経ってないだろ
一体あの家は、娘に何を教えてんだか
彼方
セキュリティの突破方法を教えて もらって、その通りにパソコンに タイピングしていく
九葉
彼方
九葉
また通話が切れた
……一先ず、ユキにも報告しよう
そよよ
そよよ
そよよ
そよよ
そよよ
そよよ
そよよ
そよよ
そよよ
そよよ
そよよ
そよよ