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俺は、いつから 黒王子などと呼ばれる様になったのか。 好きでこんな顔に生まれたわけじゃない。
子どもの頃は、それでも良かった。
果歩が
瑞樹、王子さま、やって!
と言っては、お姫様ごっこに付き合わされるのは、内心、嬉しかったから。
果歩だけの王子でよかったんだ。
話の途中は滅茶苦茶で、果歩と慎吾は夢中で砂の城を作ったりしてたけど。
最終的には、俺の
姫、私と結婚してください
などで、果歩の手を取り、ウットリさせる、という、オイシイ役目があったから。
でも、その頃から気付いてた。
果歩が本当に楽しそうなのは、 慎吾の提案で、ストーリー関係なく作ったり走ったりしている時だ。
果歩を笑わせることだけは、 慎吾には、いつも敵わなかった。
でも俺だって、 果歩の望みを叶えてやることは出来る。
いつだって王子になるし、 泣く時は、そばにいてやる。
白雪姫の時 自然に果歩にキスしたけど、あれで、果歩は俺のものになるんじゃないかって、期待してたんだ。
でもそれは…
子どもの時の、事故ってやつだ。 果歩の中には残っていない。
慎吾が怒って突っかかってきたけど、 その後の俺のネンザ騒ぎで、すっかり、 無かったことになってった。
足の痛みより、果歩が、慎吾に言った
『あいのちから』を授けましょう
の方が、痛かった。
いつも王子様の俺には、姫から授けられるものなんか、なにも無かったからだ。
果歩に認められたい。 頼られたい。
そして、好きになってほしい。
小学生になって、果歩が髪を切って。 お姫さまごっこはもう終わりだ、と気付いた時には愕然とした。
必死に果歩に、髪を切らない様に頼むのが精一杯で、その後…
どうしたら一緒にいられるのか、 わからなくなった。
でも、 そんな俺の心配は危惧で、俺たちはずっと仲のいい、幼なじみだった。
俺は、 自分の事しか考えてない自分を恥じた。
慎吾も、果歩も、 こんな俺をいつも必要としてくれてた。
俺は、果歩と慎吾が大好きだ。 この2人と一緒にいられるなら、 何でもしようと思った。
たとえそれが、 自分の気持ちを捨てる事に、 なったとしても、だ。
そうやって、あいつらより、 少し大人になるのが早かった俺は、 クールな王子キャラで、 2人を見守るスタンスに、 いつの間にか着いてしまった。
高校生になって、 周りが騒がしくなってきた。
ミスコンに選ばれたり、 告白ってやつが増えたりして、色気付いた連中が、俺たち3人の関係を、搔き回す。
慎吾は、わかりやすいヤツで、 自分に恋愛話が来る度に、果歩のこと意識するようになって。
今では、果歩を好きな事が、 周りから見ても一目瞭然になっている。
果歩の気持ちを、確かめたい。
山田 圭が現れた時には、正直ビビった。
果歩に言い寄ってくるヤツは、 たまにいたけど、たいてい、俺と慎吾で 威圧すれば逃げ出した。 果歩は気付いていないけど。
だが、 あいつはノーマークでいきなり飛び込んで来やがった。
でも、 それで俺も、たぶん慎吾も確信したんだ。 果歩を、誰にも渡したくないって。
そんなとき、果歩が号泣した。 慎吾に嫌われるって、 それはもう大変だった。
あんなに泣いた果歩は、初めてだ。 泣きそうな時は、 いつも慎吾が笑わせてたから。
それができない俺は、 ただ隣にいるしかできなかった。
その時、わかったんだ。 果歩には慎吾が必要なんだって。
だから俺は、 果歩との約束を終わりにした。 果歩が唯一、 俺の為だけにしてくれてること。
お姫さまごっこは終了だ。 果歩は、普通の恋する女の子になる。
慎吾のことが、好きだった。 その前に、 果歩のことが、もっと好きだった。
だから、 果歩を応援するって、決めたんだ。
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新学期。
アタシの前の席になった果歩は、 休み時間の度に振り返っては
亜矢ちゃん、キレーなまつ毛
などと、本気で言ってきた。
ありがと…
知り合いが、誰もいない高校に入って 心細かったアタシは、すぐに果歩と仲良くなった。
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中学のとき、 知らずに先輩の元カレと付き合ってたら、イヤなウワサされて、学校で軽いイジメにあってた。
『ちょっとカワイイからって、チョーシに乗ってるよね』
そんなこと言われても、 アタシのせいじゃない。
逃げるように、家から遠い高校を選んだ
果歩には大親友がいて、 それはイケメンの幼なじみ2人。
うらやましいな、と思ってたら、
亜矢ちゃん、大好き!あ、私、 女の子の親友、初めてできたかも!
って、果歩が。
スゴく嬉しかったから、果歩はアタシの、 1番たいせつな人、になった。
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でも、教室にいると、慎吾と果歩と、 3人でいる事が多くて。
アタシはだんだん、 慎吾に惹かれていったんだ。
慎吾と果歩は、よく似てる。
真っ直ぐで、単純で、見た目じゃなくて、中身をちゃんと見極める。
そして、果歩を大好きなアタシが、慎吾を好きになったのも、そういうところに惹かれたんだと思う。
ミスコンで、慎吾と一緒に2位になって、ジンクスを聞いてたから、 ちょっと期待した。
でも、ソッコー断られた。
告白したわけじゃないから、 そんなに落ち込まなかったけど。
その時は、慎吾が果歩を好きだ、 なんてわかってなかったと思う。
でも、ある日、圭くんが現れて、 果歩を好きだって言って。
慎吾は すごくうろたえて、教室を出て行った。
いつもなら、果歩に近づくヤツには威圧して、手を出せないようにしてるけど…
急だったし、マトモに『君が好き』なんて言ってるところ、見ちゃったらね…
あ、やっぱり、そうなんだ
って
果歩は気付いてないけど、 慎吾は、果歩のこと、ずっと見てる。
幼なじみだからじゃないって、アタシは、その時、確信した。
果歩は、どうするんだろう?
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アタシも悪かったんだけど、 ある日、昼休みに、果歩と慎吾が気まずくなっちゃって。
放課後、なんとなく気になって、慎吾の買い物についてった。
でも、 慎吾と2人でいられるのが嬉しくて、
もしかしたら、アタシの方を、見てくれないかな?
なんて、思っちゃって。…最低だよね。 慎吾の心のスキマに、 入り込もうとしてたんだ。
でも、慎吾はちっとも気付かなくて。 相変わらず、 果歩のことばっかり考えてて。
悔しくなって…
プリクラ撮ったとき、最後の一枚で、 キスしてやった。ホッペだけど。
それでも、慎吾は何も変わらなかった。 困ってたけど、怒りもしなかった。
果歩の気持ちは、まだわからないけど、 慎吾の気持ちは、よくわかったから。
アタシは、自分の気持ちを、 終わりにすることにしたんだ。
果歩は、自覚してないけど、 かなりカワイイし、家庭的。 クラスの男子が何人か狙ってたけど、 いつの間にか立ち消えてた。
そりゃそうだよね、 王子とナイトがついてるんだから。
そんな果歩が、いつか誰かに恋したら… それが、慎吾でありますように…
アタシは、心の底から、そう願ったんだ…
サヤ!聞いて! 僕はもう大丈夫。 今日から、強くなれるんだ。 昨日読んでくれたお話、ジャンヌ・ダルクに会ったんだよ!小さい子だったけど。 オマモリをもらったんだ。 だから、僕は強くなる!
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弟の圭は、ロスに来てから、 いつも泣いてばかりいたんです。
日本人だし、身体も小さいし。 女の子みたいで、 いつもからかわれていました。
でも、ある日、 小さな女の子に助けてもらったって、 とても興奮して帰ってきたんです。
もらったっていうお守りを、 見せてもらうと… とても可愛らしい、 ステキなお守りでした。
気になったのは、その子の名前らしい 『かほわ』にバツ印があって、 『けい』に書き直してあったこと。
きっと、『かほ』ちゃんが、自分のお守りを圭にくれたんだわ、と思いました。 大事な物だったんじゃないかしら、 と思って。
でも、圭はそれからは本当に強くなって。
英語もよく勉強して、 私より早く喋れるようになったし、 他の勉強も、とても頑張ってた。
運動は苦手だったけど、 ピアノはコンクールで賞を獲るほどに上達していったの。
そして、やっと… あれから10年も経ってやっと、 日本に帰ることが決まったんです。
圭は、両親に頼んで、当時の果歩ちゃんの行方を探してた。 それはもう、必死に、健気に。
幸い、あの近辺は日本人の駐在員が多くて、手掛かりが見つかり、無事に果歩ちゃんの消息がわかった時は、ホッとしたわ。
日本に帰ると、圭は直ぐに希望通り、果歩ちゃんのいる学校に編入したの。
でも、
果歩ちゃんは、覚えてないんじゃないの?
って、あまりに圭が熱心だから、心配になってしまって…
そうしたら
覚えてなくてもいい。一目会って、僕の気持ちを伝えられたら、それでいいんだ
って。
できれば、彼女を守って助けていきたいけど、それは僕じゃなくてもいいから
とも言っていて。
…10年も思い続けて、もし、圭が傷つくような事があったらって、 とても心配でした。
だから、
仲良くなれたら、果歩ちゃんの髪をステキにしてあげるから、連れてきてね
って、圭にお願いしておいたんです。
そして、 圭に連れられて来た果歩ちゃんは…
とても素敵な女の子でした。
その時はまだ、圭のこと、 わかってなかったみたいだけど。
何かあったのか、 泣き出したりしちゃったけど、 圭がずっと見守ってて
ああ、圭は、こんな風に 果歩ちゃんを見守る事が出来て、 今とても幸せなんだろうなって思ったんです。
私は心の中で、何度も果歩ちゃんに
ありがとう
って、言ってました。
ええ、果歩ちゃんには、大事な人たちがいるって、圭から聞きました。 圭は、とても幸せそうでした。
果歩ちゃん、 圭を助けてくれて、ありがとう。
あなたのおかげで、圭はとても素敵な男の子に成長しました。
果歩ちゃんが幸せになりますように。
私も、そして誰よりも圭が、 それを願って止みません。
果歩にはずっと、笑っててほしい。
オレのそばで…
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ガキの頃は、単純でよかった。
果歩が喜ぶことは、山ほどあって、毎日時間が足りないくらい、オレたちは 一緒に遊んだ。
お姫さまごっこは、瑞樹がオイシイから、あまりやりたくなかったけど、 果歩が喜んでるから、まあ、仕方なく 瑞樹に王子を譲ってた。
白雪姫のとき、瑞樹が本当に果歩にキスして、さすがのオレも動揺したんだ。
ガキのくせにやっぱり、 嫉妬とかするんだよな
でも、そのあとに果歩がオレに
『あいのちから』を授けましょう
って言ったから、王子じゃなくても果歩を守れるって、単純に嬉しくなった。
ナイトで上等!って思えたんだ。
瑞樹にネンザさせたのは悪かったけど。
瑞樹は、カッコいいし、勉強もよくできたから、女の子には人気があった。
でもアイツは、 果歩以外には目が向かないんだ。
焦ったね、オレは。
でも、ライバルって言うより、瑞樹と2人で果歩を守ってる感じだったな、 中学までは。
3人でいるのが当たり前だし、 楽しかった。
高校生になって…
知らない奴らばかりで、見た目で近づいてくるのが多くて参ってた。 瑞樹にも果歩にもだ。
瑞樹とちがって、 オレはそーゆーのに慣れてないから。
ミスコンとか、マジ意味不明なのに 駆り出されて、 余計なことが増えて面倒くさかった。
果歩にも
人前で手をつながないように
とか
2人で学食とか、もうダメだよ。
とか言われて、スゲー落ち込んだ
果歩に嫌なのかって聞くと、イヤじゃないって、ホント訳わかんねー。
彼女みたいだから
って言うから、彼女になればいいって。 思うだろ?フツー。
急に毎日が、 今までみたいに行かなくなってきたんだ。
瑞樹が
もう、幼なじみはカウントダウンだ
とか言うし、 今まで一緒に果歩を守ってきたのに、もうアイツも敵みたいに思えたりして。
ある日、2年の山田ってヤツが、いきなり果歩を、かっさらって行って、動揺した。
そのあと、果歩がいきなり髪型変えたり、亜矢に化粧されたりして。スゲー焦った。
どんどん、オレの知らない果歩が増えてくみたいで。
誰よりも、果歩を大事にしてきたのに、オレの焦りで、泣かせたり困らせたりする事になっちまって…
亜矢も、一緒にモール行ったりして、 最初は何でオレを振り回すのかとか思ったけど。
…その、悪かったな、と思ってる。オレ、何にも気付いてなくて。
このまま、果歩と、 ちゃんと友達でいてくれるよな?
昨日の帰り道 果歩が
もうもらったから、報酬。
って言って、マフラーをオレに渡したんだ
満員電車で果歩を守ったときのこと、 果歩は言ってて
オレは
報酬なんかじゃない、ずっと守りたい
って気持ちが抑えきれなくて
ずっと守るからオレだけ見てて
って、果歩に言っちゃったんだ
ずっと好きだよ
って、オレの気持ちも…
もう、ガマンできなかったんだ。
果歩を失うかもしれないって、 怖かったけど、限界だった。
果歩の答えは、いつ出るのかわからないけど、オレは、いつまでも果歩を笑わせるって決めてるから、結果はどっちでもいい。
果歩が、いつも笑ってれば、それでいい。