テラーノベル
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若井の運転で家に帰ってきた。
荷物を置くと、二人は仕事に。
久しぶりの自宅に少し安心する。
そして、これからの事を考える。
ぼくが歌えないんじゃ、バンド活動は休止… いや、解散だってありえるかもしれない。
今は二人とマネージャー、スタッフさん達が、 これからの事を考えてくれているみたいだけど、 精神的な事で声が出なくなったぼくに気を使い、 仕事関係の話は耳に入らないようにしてくれている。
その皆の優しさが、凄く辛くて、 罪悪感でいっぱいなる。
だって、これはぼくが望んだ事だから。
先生にこの原因の話をされた時、 やっぱりなって思った。
実は、最初から薄々気付いていた。
そして、この声はもう戻らないって事も…
それは、本当に自分勝手で、馬鹿みたいな理由。
何年も、何年も踏み出せない一歩が、 ずっとぼくを苦しめていて、 嘘を付き続けて生きていくくらいなら、 もういっそ声なんていらないって思ってしまった。
歌が歌えなくなったら、 一緒に居る理由もなくなって、 離れる事が出来るんじゃないかと思ってしまった。
最初は、ただ側にいれるだけでよかったのに。
友達…親友…仲間…
その立場に満足してる時もあった。
でも、人間って欲張りな生き物だから。
望んでるものが手に入る訳もないのに。
なにも考えずに、 “好き”って言えたらどれだけ楽か。
でも、言えないから。 もう嘘を付きたくないから。
ぼくは声を手離したんだ。
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