/s/[storyId]/_components/heading/assets/back_arrow_icon.4081080bcaba67b8.svg){kind=icon}
/s/[storyId]/_containers/report-container/assets/more-icon.20cfac1b79e24f56.svg){kind=icon}
ルナ
シンゴ！陣痛きちゃった！
シンゴ
えっもう！？
ルナ
うん…予定より早く来たみたい
ルナ
お願い、早く来て
シンゴ
わかった。今上司に話してくる
シンゴ
電車乗って急いで帰るよ！
ルナ
ありがとう、シンゴ
ルナ
ごめんね今繁忙期なのに…
シンゴ
当たり前だ！だって、俺達の子供なんだからな！
シンゴ
俺、産まれるのをずーっと楽しみにしてたんだ！
シンゴ
絶対に立ち会って見せる！
ルナ
ありがとう…
ルナ
妊娠してから、シンゴはいつも私のこと最優先にしてくれるよね
シンゴ
俺の子なんだから当たり前だろ！
シンゴ
ルナは産むことだけに集中してほしい
ルナ
うん。今からタクシーで病院行くから
ルナ
シンゴのこと、待ってるよ。着いたら、ずっと手を握っててね
シンゴ
あぁ、勿論
ルナ
出産のとき、痛みのあまり私冷静じゃなくなって
ルナ
変なこと言っちゃうかもしれないけど、許してね
シンゴ
勿論だよ。いよいよ生まれるんだな、俺達の子供が…
～翌日～
カオル
■不在着信■
カオル
シンゴさん、あなたどういうつもりなの！！
シンゴ
お義母さん、お久しぶりです
カオル
ふざけないでちょうだい！！
カオル
ルナから聞いたわよ
カオル
出産に立ち会ったものの、産まれた子を見てすぐに逃げ出して、
カオル
LINEで離婚を言い渡したって…
カオル
LINE画面の証拠も見せてもらったわ
シンゴ
はい、その通りです
シンゴ
こんなことになってしまってすみませんでした
カオル
あなた、最低よ！！
カオル
産まれた子に障害があったからって、無責任に逃げるなんて、酷すぎるわ！！
シンゴ
待ってください！障害？
カオル
えぇ。生まれた子はね、右手の指が一本欠けていたの
カオル
それを見た途端、あなたは逃げ出したらしいじゃない！
カオル
自分の子なのに、ルナ一人に押し付けて逃げるなんて…
カオル
可哀想に。ルナはショックを受けて泣いていたわよ
カオル
産まれる前はあんなに良い夫で、子供の誕生を楽しみにしてくれていたのにって…
シンゴ
待ってください！その子は、俺の子じゃありません！
カオル
まぁっ！障碍児の父親になりたくないからって、
カオル
自分の子供じゃないことにするなんて、あんまりよ！
シンゴ
落ち着いてください
シンゴ
僕が逃げ出したのは、子供が障碍児だったからではありません
シンゴ
そもそも僕は、子供の指が欠けていたことにも気づきませんでしたし
カオル
へ？
カオル
じゃあ何で逃げ出したっていうのよ！！
シンゴ
お義母さんは、産まれた子を見せてもらってないんですか？
カオル
えぇそうよ
カオル
可愛い孫を見せてほしいって、何度もお願いしたんだけど、
カオル
『お母さんにショックを受けさせたくない』『今は一人にしておいてほしい』
カオル
『生まれた子を見て、お母さんまで逃げたりしたら怖い』
カオル
って言って、頑なに見せてくれないし、病院にも来ないでっていうの
カオル
私は逃げたりなんかしないし、覚悟だってできてるのに…
カオル
よっぽどあなたの仕打ちがショックだったんでしょうよ…
シンゴ
やっぱり…それには理由があるんですよ
シンゴ
その子は、金髪だったんです
カオル
金髪…？
シンゴ
金髪で青い目の子供でした
シンゴ
間違いなく、俺とルナの子供ではありえません
カオル
そんな、嘘でしょ…
カオル
じゃあ、ルナは外国人と浮気をしていたっていうの！？
シンゴ
そうとしか考えられません
シンゴ
そして、父親についても僕は心当たりがあります
シンゴ
ルナが、日本語学校の教師をしていることはご存じですよね？
カオル
えぇ。まさか、そこの生徒だっていうの？
シンゴ
はい。あの赤ん坊の容姿からして、アメリカから留学生として日本に訪れていた
シンゴ
ハワード君という生徒だと思います。そっくりでした
シンゴ
ハワード君はルナによく懐いて仲良くしていたようで、
シンゴ
ルナはよく楽しそうに彼の話をしていましたし、
シンゴ
顔を合わせたことだってありました
カオル
そんな…
シンゴ
ルナは、このことがお義母さんにバレたくなくて、子供を見せないのでしょうね
シンゴ
こちらが子供の写真です
シンゴ
～写真～
カオル
本当に金髪だわ…
カオル
ごめんなさいね、娘の話だけ聞いて、あなたが悪いと決めつけてしまって…
シンゴ
気になさらないでください
シンゴ
自分の子をまず信じてしまうのは、無理もないと思います
～翌日～
ルナ
お母さん、シンゴを説得してくれた？
カオル
するわけないだろ、このバカ娘
ルナ
へ？
カオル
シンゴさんからすべて聞いたし、赤ん坊も見せてもらった
カオル
その子、誰の子だい？
ルナ
な、何言ってるのよ！この子はシンゴの子だよ！
ルナ
お母さんまで私の味方してくれないの！？シンゴの味方するの！？
ルナ
私の力になってくれるって言ったじゃない！子供を産んだばかりの実の娘に、酷いわ！！
カオル
私だって味方してあげたかったよ
カオル
だけど、お前が不倫したとなれば話は別だ
ルナ
私は不倫なんてしてない！お願い、信じて！！
カオル
それはどうかしらね
カオル
不倫していないというなら、シンゴさんにそう主張してちょうだい
（【シンゴ】が追加されました）
シンゴ
ルナ、正直に言え。その子は俺の子じゃないんだろ
ルナ
やめてよ！何度も言ったけどこの子はシンゴの子供だよ！
ルナ
どうしてそんなこというの！酷いよ！！
ルナ
この子が障害を持ってるから？そんなの無責任すぎる！
ルナ
そんな理由で見捨てられるこの子が可哀想だよ…
シンゴ
いい加減にしろ！
シンゴ
俺はそんな理由で逃げたりなんかしない
シンゴ
その子がどんな障害を持っていようと、全力で支えたさ
シンゴ
俺の子ならな
ルナ
だから、この子はシンゴの子だって！
シンゴ
ならＤＮＡ鑑定をすればいい
シンゴ
もし俺の子だと認められたら、土下座でも何でもするし、全力で育てる
ルナ
それは…そんな必要ないじゃない！お金と時間の無駄だよ！そうやって逃げようとしてるんでしょ！
シンゴ
できないんだな。まぁそうか
シンゴ
俺の子じゃないのは明らかだからな
シンゴ
その金髪、青い目…
シンゴ
日本語学校の生徒の一人、ハワード君の子供だろ
ルナ
違うよ！私とハワードはそういう関係じゃない！
シンゴ
でもハワード君は認めてるぞ
シンゴ
お前と不倫関係にあったことをな
シンゴ
お前が自分の子を産んだと知って、覚えたての土下座とたどたどしい日本語で謝ってくれた
ルナ
嘘…そんな、なんで？彼、日本語学校を辞めたのに…
シンゴ
日本語学校の同僚に聞いたんだ。ハワード君の連絡先を
シンゴ
凄いなお前ら。日本語学校でも公認の仲だったそうじゃないか
シンゴ
職場で堂々と不倫するなんてな
シンゴ
これでもまだ否定するのか？不倫の証拠は揃ってるぞ
カオル
私は情けないよ。夫がいながら、自分の生徒と不倫する娘なんて…
ルナ
だ、だって…寂しかったんだもん！
ルナ
お互い仕事ですれ違いも増えてたし…
ルナ
そんな時に、アメリカから来たハワード君から、
ルナ
日本人男性にはないストレートな熱い愛情表現、レディファーストに
ルナ
つい夢中になっちゃったのよ！！
ルナ
元はと言えば、寂しい思いをさせた上に
ルナ
男としても勝てないシンゴにも責任があるんだからね！
カオル
まぁっ！なんて責任転嫁なの！！
カオル
開き直るんじゃないわよ！
シンゴ
呆れて物も言えないな…
シンゴ
そんなにハワード君が良いなら、俺と離婚してハワード君と結婚すればいいじゃないか
シンゴ
勿論、慰謝料という形で責任取ってもらうがな
ルナ
無理よ！だって彼、アルバイトでやっと食い繋いでるくらい凄く貧しいんだもの！
ルナ
日本語学校の学費も払えなくなってやめちゃうくらいなんだから！！
ルナ
異国の地で困窮してる彼を更に苦しめるの！？
シンゴ
あぁ。だってそいつは人妻に手を出したんだからな
シンゴ
責任取ってもらわなきゃならない
ルナ
そんな、お金なんてないのに！
ルナ
慰謝料なんて払えないよ！
シンゴ
仕方ないから、母国からハワード君のご両親を呼び寄せることにしたよ
ルナ
えっ嘘！！
シンゴ
ご両親は飛行機で文字通り飛んでくるらしい
シンゴ
ハワード君の通訳によると、お前をアメリカに連れて行って、
シンゴ
子供ができたからには責任もって結婚させるそうだ
ルナ
ひっ…アメリカ行き！？
ルナ
やだやだやだ！！アメリカなんて嫌！異国の地なんか嫌！！
シンゴ
なんで嫌なんだ？
シンゴ
良かったじゃないか。日本人男性より、アメリカ人の方がいいんだろ？
シンゴ
向こうで好きなだけ言い寄られて来ればいいじゃないかｗ
シンゴ
ま、無理だろうけどな。向こうの両親が教会で働かせて、
シンゴ
夫婦共々しっかり監視するって言ってるし。信教の理由で離婚もさせないそうだ
ルナ
嫌！！私日本語教師だけど英語は話せないのよ！！それに教会なんかで働きたくない！！
シンゴ
しょうがないだろ。ハワード君のご両親、教会を営みながらも人手不足らしいんだから
シンゴ
子供のことも『子供はみんな神の子だから可愛がって育てます』
シンゴ
って言ってくださってるぞ。良かったなぁ
シンゴ
どんなに罪深い人間でも、悔い改めれば神は許して下さるらしいぞ。お前らにピッタリじゃないか
シンゴ
ま、俺は許さんがなｗ
ルナ
そんな許してよ！もう十分悔い改めてるから！ごめんなさい、ほんの気の迷いだったの！
ルナ
子供だって、生まれるまではシンゴの子だと思ってたの！！
ルナ
愛してるのはシンゴだけ！もう二度と浮気なんてしないから！！
シンゴ
は？ふざけんなよ。俺の子じゃない子を育てさせようってのか？
ルナ
ねぇ、お母さんも何とか言ってよ！
ルナ
娘や孫をアメリカになんか行かせたくないでしょ！！
カオル
そんなことはないわよ。どこへでも行っちゃいなさい
カオル
あんたなんてもう娘じゃないからね
ルナ
やだそんなこと言わないでよ！私の実の母親でしょ！？
カオル
あんたはね、その実の母親を騙したのよ
カオル
本当はわかっていたんだろう。シンゴさんに離婚を言い渡された本当の理由を
カオル
それなのに、子供に障害があるから離婚されたなんて嘘を言って、
カオル
私を味方につけて、子供にも会わせないで…
カオル
裏切られたのはシンゴさんだけじゃない。私もだよ
ルナ
ごめんなさいお母さん！一人でも味方が欲しかったのよ！！
ルナ
だからお願い、見捨てないで！いいでしょ！？ハーフの子、可愛いって言ってたじゃない！
カオル
まだ私に甘えて子供も育てさせる気なのかい！？
カオル
あんたみたいな子は、教会で叩きなおされてくるのが丁度いいよ
～後日談～
シンゴ
その後、俺とルナは離婚が成立
シンゴ
俺はルナとハワード君に多額の慰謝料を請求し、
シンゴ
ルナは日本語教師もクビになりました
シンゴ
ハワード君のご両親に連れられて、子供と一緒にアメリカに旅立った二人は、
シンゴ
向こうの教会で結婚させられたそうです
シンゴ
教会の厳しい戒律に耐えかねて、
シンゴ
何度も泣き言LINEがルナからは送られてきましたが、
シンゴ
段々それもなくなり、送られてくるのは二人分の分割での慰謝料のみとなりました
シンゴ
悔い改めたのか、それともLINEする暇もなくなったのか、それはわかりません
シンゴ
ただ、あちらの母親の太い腕に抱かれて、『障害は神からの贈り物』と
シンゴ
愛情のこもったまなざしを向けられる赤ん坊を見て、この子は無事に育ちそうだと直感しました
シンゴ
俺は、ずっと楽しみにしていた子供の誕生がこんな結果に終わって、
シンゴ
虚しさや心の傷が残りましたが、お義母さんや周りの支えもあって、
シンゴ
少しずつ傷をいやしています
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。
