【3日前・早朝】
首藤昴
七隈英太
首藤さんは、表情を配信者仕様に切り替えた。
首藤昴
首藤昴
首藤昴
首藤昴
首藤昴
首藤昴
首藤昴
首藤昴
首藤昴
首藤昴
首藤昴
首藤昴
首藤さんが、カメラに向けて
生前の夏樹清海の写真を見せてくる。
より不謹慎で炎上しやすい動画にするために、
さっき俺が考えた演出。
首藤昴
首藤昴
これは、動画を盛り上げるために考えた嘘。
首藤昴
首藤昴
これも嘘。
首藤昴
どれもこれも、適当な嘘だった。
七隈英太
七隈英太
首藤昴
首藤昴
首藤昴
首藤昴
軽薄に笑った後、
首藤さんはレンタカーの扉に手を伸ばした。
廃墟の内部は荒れ果てていた。
散乱する瓦礫。
落書きまみれのコンクリ壁。
用途不明の注射器の残骸。
首藤昴
首藤昴
首藤昴
七隈英太
七隈英太
七隈英太
過剰に怖がる首藤さんを撮影しながら、階段を昇っていく。
七隈英太
七隈英太
首藤昴
首藤昴
首藤昴
言われた通りに、カメラをズームさせていく。
広い部屋の四隅に、白い塊が見えた。
白い紙の上に、塩が山のように盛られている。
その先端は少し黒ずんでいるように見えた。
首藤昴
首藤昴
七隈英太
七隈英太
七隈英太
七隈英太
首藤昴
七隈英太
首藤昴
首藤昴
少し興奮した様子で、首藤さんは盛り塩の一つに近付いていく。
そして、足を振り上げて、
恐る恐る塩の山を蹴散らした。
首藤昴
七隈英太
首藤昴
左へと方向転換した首藤さんの背中を追いかける。
首藤昴
七隈英太
七隈英太
七隈英太
首藤昴
他人事のように言いながら、首藤さんは立ち止まる。
靴の先端が白い塊に触れ、
封印がまた一つ崩されていく。
そして、次の盛り塩へ。
首藤昴
七隈英太
首藤昴
七隈英太
首藤昴
3つ目の盛り塩を蹴散らしながら、
首藤さんが声を張り上げる。
七隈英太
七隈英太
首藤昴
先端が黒ずんだ塩の塊が、
ゆっくりと崩壊していく。
これで、封印破りの儀式は完了となる。
七隈英太
七隈英太
七隈英太
首藤昴
首藤昴
人差し指が向けられた方へ、カメラを回す。
盛り塩の奥の壁面に、黒い染みが広がっている。
ついさっきまで、あんなのはなかったはずだ。
生唾を呑み込みながら、カメラを近づけていく。
七隈英太
染みのように見えたそれは、
無数の小さい『文字』の集合体だった。
呪われろ。
呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。
呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。
七隈英太
七隈英太
首藤昴
情けない悲鳴を上げながら、全力で走り出す。
階段を駆け下り、瓦礫を踏み越え、レンタカーまで戻る。
カメラの向こうの首藤さんの表情は青ざめていて、
なぜかずっと、両手で耳を塞いでいた。
首藤昴
七隈英太
首藤昴
七隈英太
助手席で震えながらうずくまる首藤さんから目を逸らし、
慌ててレンタカーを発進させた。
【3日前・夜】
必要最低限の編集だけで夜9時にアップした動画は、
投稿から2時間で1万回再生を突破した。
サムネイルに夏樹清海の水着写真を載せたのが原因かもしれない。
いつもよりはるかに多い誹謗中傷コメントは無視。
より切実で致命的な反応だけを、目で追っていく。
『なんかスバっちの顔色ヘンじゃね?演技?』
『4:43辺りからノイズが酷いです。声が聴こえません』
『最初にビルを映した時、窓から誰か覗いてなかった?』
『はいはい、演出演出。こんなくっきり霊が見えるわけねえもん』
『やっぱ女の声が聴こえるんだけど→12:32』
『これって、マジで呪われたってこと?』
『やばいって、最後、何かがバックミラーに映ってる!』
震える手で、俺はスマートフォンを裏返した。
コメント
5件
こういうのまじで好き
臨場感あるし文章うまい
首藤、怖い物知らずかと思ったら逃げんのかよw