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【炎上系】なぜ配信者たちは“彼女”に呪われたのか?

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【炎上系】なぜ配信者たちは“彼女”に呪われたのか?

3 - 【炎上系】なぜ配信者たちは“彼女”に呪われたのか? 第3話

♥

155

2021年06月20日

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【3日前・早朝】

首藤昴

あれ、もう回ってる?

七隈英太

はい。オープニングトークお願いします

首藤さんは、表情を配信者仕様に切り替えた。

首藤昴

どーもー、スバっちです!

首藤昴

えー、今回は心霊企画です!

首藤昴

先日の生配信で

首藤昴

視聴者から企画案を募集したんですが

首藤昴

そこで、『オリガミ』さんという方から

首藤昴

興味深いタレコミがありましてね…

首藤昴

ということで俺たちはいま、情報にあった廃ビルの前にいます!

首藤昴

ここは自殺の名所として有名らしくて

首藤昴

人気アイドルの夏樹清海ちゃんもここで亡くなったらしいんです

首藤昴

半年前かな?自殺のニュースが出たの

首藤昴

いやー、あの時はほんとショックだった!

首藤昴

ほら、水着写真集めるくらいファンだったからさ

首藤さんが、カメラに向けて

生前の夏樹清海の写真を見せてくる。

より不謹慎で炎上しやすい動画にするために、

さっき俺が考えた演出。

首藤昴

実はここ、何回か取り壊しの予定があったけど

首藤昴

不可解な事故が多発したせいで中止になったとか

これは、動画を盛り上げるために考えた嘘。

首藤昴

強い怨念を抱いたまま自殺した人って

首藤昴

やっぱ悪霊になっちゃうらしいですねー

これも嘘。

首藤昴

そしてそして、清海ちゃんらしき霊の目撃情報もあるとか!

どれもこれも、適当な嘘だった。

七隈英太

(信憑性なんて誰も気にしてない)

七隈英太

(そもそも、幽霊なんて存在するわけないんだし)

首藤昴

えー、ということで

首藤昴

今からこのビルの封印を解いてこようと思います!

首藤昴

だってさ、あんなかわいい子の霊だったら

首藤昴

別に呪われてもいいかなって思いません?

軽薄に笑った後、

首藤さんはレンタカーの扉に手を伸ばした。

廃墟の内部は荒れ果てていた。

散乱する瓦礫。

落書きまみれのコンクリ壁。

用途不明の注射器の残骸。

首藤昴

やっぱ雰囲気ありますねー…

首藤昴

なんか寒気を感じるっていうか

首藤昴

クマちゃん、封印があるのはどこだっけ?

七隈英太

4階って書いてました

七隈英太

フロア全体が大部屋になってるらしいです

七隈英太

あ、あっちに階段があるみたいですね

過剰に怖がる首藤さんを撮影しながら、階段を昇っていく。

七隈英太

(確かに、寒気は感じるな…)

七隈英太

(まあ、気のせいだろうけど)

首藤昴

はい、目的の4階に到着しました!

首藤昴

あっ、アレってもしかして…

首藤昴

ほら、カメラあっちに向けて!

言われた通りに、カメラをズームさせていく。

広い部屋の四隅に、白い塊が見えた。

白い紙の上に、塩が山のように盛られている。

その先端は少し黒ずんでいるように見えた。

首藤昴

盛り塩じゃん、初めて見た!

首藤昴

えっと、アレを蹴散らせばいいんだっけ?

七隈英太

反時計回りに蹴散らしていくんです

七隈英太

そうすればこの部屋の封印が解かれて、

七隈英太

俺たちは悪霊に呪われる…

七隈英太

『オリガミ』さんは、そう書いてました

首藤昴

うーわー、怖くなってきた!

七隈英太

やめるなら今のうちですよ

首藤昴

バッカお前、今やめたら視聴者に申し訳ないだろ

首藤昴

じゃあさっそく、封印を解いていくことにしますね!

少し興奮した様子で、首藤さんは盛り塩の一つに近付いていく。

そして、足を振り上げて、

恐る恐る塩の山を蹴散らした。

首藤昴

…何も起きてない、よな?

七隈英太

…はい。今のところ

首藤昴

…よし、じゃあ次だ

左へと方向転換した首藤さんの背中を追いかける。

首藤昴

そういや、夏樹清海ちゃんはなんで自殺したんだっけ?

七隈英太

なんか、色んな噂がありますよね

七隈英太

悪い男に騙されてたとか

七隈英太

性的暴行を受けて精神を病んでしまったとか

首藤昴

かわいそうだな、それ…

他人事のように言いながら、首藤さんは立ち止まる。

靴の先端が白い塊に触れ、

封印がまた一つ崩されていく。

そして、次の盛り塩へ。

首藤昴

なんか、誰かの視線感じない?

七隈英太

変なこと言わないでくださいよ

首藤昴

空気が薄くなった気もするし

七隈英太

錯覚です

首藤昴

いや、絶対気のせいじゃない!

3つ目の盛り塩を蹴散らしながら、

首藤さんが声を張り上げる。

七隈英太

(アドリブ、なのか?)

七隈英太

(だとしたらよくできてるけど…)

首藤昴

みなさん、次で最後です

先端が黒ずんだ塩の塊が、

ゆっくりと崩壊していく。

これで、封印破りの儀式は完了となる。

七隈英太

やっぱ、何も起きないですね

七隈英太

最悪、編集で女の声とか足しときますんで

七隈英太

…首藤さん?

首藤昴

クマちゃん、アレ

首藤昴

さっきまで、あんなのあったか?

人差し指が向けられた方へ、カメラを回す。

盛り塩の奥の壁面に、黒い染みが広がっている。

ついさっきまで、あんなのはなかったはずだ。

生唾を呑み込みながら、カメラを近づけていく。

七隈英太

(まさか、そんな…)

染みのように見えたそれは、

無数の小さい『文字』の集合体だった。

呪われろ。

呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。

呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。呪われろ。

七隈英太

ひっ…!

七隈英太

ついさっきまで、こんなのっ!

首藤昴

にげ…逃げるぞ、早く!

情けない悲鳴を上げながら、全力で走り出す。

階段を駆け下り、瓦礫を踏み越え、レンタカーまで戻る。

カメラの向こうの首藤さんの表情は青ざめていて、

なぜかずっと、両手で耳を塞いでいた。

首藤昴

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…

七隈英太

しっかり!ぜんぶ気のせいですから!

首藤昴

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…

七隈英太

ほら、早く乗って!東京に帰りましょう!

助手席で震えながらうずくまる首藤さんから目を逸らし、

慌ててレンタカーを発進させた。

【3日前・夜】

必要最低限の編集だけで夜9時にアップした動画は、

投稿から2時間で1万回再生を突破した。

サムネイルに夏樹清海の水着写真を載せたのが原因かもしれない。

いつもよりはるかに多い誹謗中傷コメントは無視。

より切実で致命的な反応だけを、目で追っていく。

『なんかスバっちの顔色ヘンじゃね?演技?』

『4:43辺りからノイズが酷いです。声が聴こえません』

『最初にビルを映した時、窓から誰か覗いてなかった?』

『はいはい、演出演出。こんなくっきり霊が見えるわけねえもん』

『やっぱ女の声が聴こえるんだけど→12:32』

『これって、マジで呪われたってこと?』

『やばいって、最後、何かがバックミラーに映ってる!』

震える手で、俺はスマートフォンを裏返した。

【炎上系】なぜ配信者たちは“彼女”に呪われたのか?

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コメント

5

ユーザー

こういうのまじで好き

ユーザー

臨場感あるし文章うまい

ユーザー

首藤、怖い物知らずかと思ったら逃げんのかよw

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