あべちゃん 記憶喪失

佐久間side

そう翔太から聞いた時

まだあった訳でもないのに

涙が止まらなかった

あべちゃんに早く会いたくて

仕事が終わって直ぐに病院に向かった

考えることはみんな同じみたいで

病院についてから

焦った顔であべちゃんの病室に向かう

メンバーにあった

でも話しかける余裕もなくて

一刻も早くあべちゃんの素へ 向かいたかった

病室に入るとすでに何人か

メンバーがいて

ふっかと康二なんて目が真っ赤だった

俺はあべちゃんが謝る前に

あべちゃんを抱きしめていた

泣きそうな顔で言うあべちゃん

でも、すごく笑顔だった

びっくりするくらい

忘れてる間には見れなかった

本当の笑顔

俺の大好きな

あべちゃんが戻ってきた

いつものあべちゃんが

本当によかった

おかえり

あべちゃん

ふっかside

タクシーの中で俺は叫びそうになった

叫ぶのは我慢したものの

涙は我慢できなかった

病院に一刻も早く向かいたかった

でもこんな時に限って

道が混んでて

あとちょっとって時に

渋滞で止まってしまった

いつもなら何にも思わない渋滞も

すごく忌まわしく思える

そう言って俺は周りの目なんて気にせず

走り出していた

こんなに必死に走ったの

いつぶりだろ

走ってる間も

頭の中はあべちゃんのことばかりで

あべちゃんの笑った顔

デビューが決まった時に

俺だけに見せてくれた泣き顔

あの時

ライトの下敷きになったあべちゃんの姿

俺の脳裏に刻まれてる

あべちゃんのいろんな姿が

色々蘇ってきて

余計涙が出てきた

そんなことを考えてたら

すぐに病院について

いつの間にか病室の前まできていた

でも開けるのが怖くて

俺のことだけ思い出してなかったら どうしようとか

悪いことばかり思ってしまう

「誰ですか」なんて言われたら 立ち直れない

でも、あべちゃんと早く話がしたくて

俺は静かに扉を開けた

開けた時にあべちゃんと目が合って

でも、あべちゃんはいつもの 笑顔を見せてくれなかった

顔をゆがめて

今にも泣きそうな顔をしてる

そう言いながら、笑うあべちゃん

そんな冗談をいいつつ

俺は笑顔になれずにいた

そう言いながら前髪を上げるあべちゃん

そこには大きな切り傷があって

その傷は治らないと先生が言ってた

顔に傷が残るなんて

大丈夫なはずがないのに

笑顔で「大丈夫」って

俺に心配かけないように

そう笑顔で言うあべちゃん

その笑顔を見て

今まで抱えていた何かが

スッと抜けていくような感じがした

今の俺は多分

泣きじゃくったブッサイクな顔で

とびっきりの笑顔でいると思う

そんな俺にあべちゃんは

なんて、冗談を言ってくれる

あべちゃんは冗談だと思ってるかもだけど

俺結構本気だからね

なんて三人で笑い合ってたら

廊下から足音が聞こえて

すぐに他のメンバーだってことはわかった

あべちゃんが俺たちを守ってくれたように

今度は俺たちがあべちゃんを守るよ

これから先ずっと