主
主
主
主
3週間連続で憂鬱な気持ちのまま、お昼の放送時間になった。
音楽をかけている間、ルーズリーフとにらめっこするのがいつものことになりつつある。
ころん
問いかけても、当然、返答はもらえない。
こんな気持ちで放送しているなんて、さとみ君は思ってもいないだろう。
....っていうか。
さとみ君って、僕が今日の放送の担当をしていることを知っているのだろうか。
一応初めに『ころんです』と挨拶しているけど、この手紙を見ると、僕が放送委員であることを知らないのかもしれない。
『放送委員には見られるんだ。』
僕が放送委員だと知っていたら、こんなこと言うだろうか。
もしかして、僕の名前、知らないんじゃ....。
いや、まさか~。それはない。
いや、ない……ない?
そういえば、告白から今まで、受け取った手紙に僕の名前が書かれたことはない。
名前を知らない。なんて考えたことなかったけど、これ、あり得るかもしれない。
だって、話したことないし、接点もない。
名前を知られてなくても不思議じゃないのかもしれない。
僕がさとみ君のフルネームを知っているのは、さとみ君だからだ。
さとみ君以外に理系コースで名前を知ってる人なんていない。
でも、名前も知らない人を好きになるなんてありだろうか。
いや、お昼の放送を真面目に聞いてる人なんていないだろうから、僕が放送委員であることを知らないだけという可能性も十分ある。
しばらく考えたけど、知っているか、知らないかは、今はどっちでもいい。
気にはなるけど。
気にはなるけど、とりあえず、いまは、置いておこう。
今直面している問題は、返事だ。
ころん
単刀直入に付き合っってほしいと言われたからには、それに対して“イエス”か“ノー”かを伝えなくちゃいけない。
白黒はっきりさせるのは苦手だけど、ここまでくると、そうも言ってられない。
ころん
小さく気合を入れて、彼の手紙の下に、いつもより少し丁寧な字で、
『ごめんなさい。お付き合いはできません。』とだけ書いた。
ここまできっぱりと断るなんて、文字にするだけで心が痛む。
ななもり先輩と付き合い始めたのは、告白を受けたことがきっかけだった。
生まれてはじめて、好きだと言われて、動揺してしまい、思わず頷いて付き合うことになった。
それがよくなかったのだ。
さとみ君はそんなことせずに、面と向かって告白してきた女の子に彼なりに誠実に対応している。
相手の女の子が泣いてしまったとしても、自分の気持ちをちゃんと伝える人だ。
彼を見習って、相手の反応を気にして返事を変えることはしないでおこう。
言いたいことはどんなに悩んでも変わらない。
もう一度『よし』と、自分に気合を入れて返事を書いた手紙を折りたたんでポケットにしまった。
主
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コメント
3件
ブクマ失礼します!
うわああああああああ(語彙力低下)とにかく好きです( ¨̮ ) 次回も楽しみにしてます!!