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🌹 第3話 ふたりきりの小さな旅
菜月
金曜日の放課後、鞄を肩にかけようとしていた私に、菜月が少し照れたみたいな顔で声をかけてきた。
紬
菜月
その言い方がなんだか可愛くて、 私はすぐ頷いた。
紬
菜月
――なんで知ってるんだろう。
でも嬉しくて、 胸が少しあたたかくなった。
◆ 当日。
駅前で待ち合わせをすると、 菜月は珍しくちょっとだけ緊張して見えた
菜月
紬
言われ慣れない言葉に気恥ずかしくなりながら、ふたりで並んで歩いた。
◆ 図書館
菜月
菜月は私が手に取ろうとしていた本を、 サッと先に持って差し出してきた。
紬
菜月
そう言って微笑む。
その笑顔は、 “良い友達”として自然すぎるほど自然だったけど、どこか胸の奥がざわつく。
◆ カフェ
チーズケーキを前に向かい合って座った時、菜月がゆっくり話し始めた。
菜月
菜月
紬
菜月
菜月の声は穏やかで、 紬の言葉を一つひとつ噛み締めるみたいだった
なんでもない休日なのに、 なんだか“特別な日”みたいに感じた。
◆ 帰り道
夕焼けの中を並んで歩いていると、 菜月がふいに呟いた。
紬
菜月
そう答えた私の言葉に、 菜月は小さく首を振った。
紬
その声は、一瞬だけ寂しそうで、 胸の奥がぎゅっとなる。
何か言いかけたけれど、 菜月はすぐ笑ってごまかした。
菜月
その笑顔。 やっぱり優しいけど―― 少しだけ、影があった。