『君と僕の忌避進路』

真冬視点

3人と分かれて、僕は彼方さんと帰路についていた

隣で歩く彼方さんを見ながら、少し懐かしい気持ちになる

僕は過去を思い出しながら、薬指にはめられた指輪を見つめる

普通を知らずに育って、僕がそれを知ったのは高校一年のとき

彼方さんは僕よりも少しあとに"普通の幸せ"を知った

でも、まだまだ知らないことだらけで この先1人じゃ生きていけない

だからこれから2人で知っていこう

彼方さんの指についた、僕と同じデザインの指輪

それを見て、思わず顔が綻ぶ

僕の顔を見て、彼方さんは少し恥ずかしそうにした

出会った時とは高校生のときとは比べものにならないくらい豊かになった表情

きっとそれは、僕も同じことだろう

お互いがお互いに救われて、影響されて、惹かれあって

そのうちに、忘れかけていた笑い方も泣き方も全部思い出すことができた

お返しのつもりで、僕の右側を歩く彼方さんの手を握ってみた

少し照れた後、ゆっくりと指を絡めてきた彼方さん

僕が手を握ると彼方さんは絶対に握り返してくれるのだが、この仕草がいつまで経ってもかわいく見える

『また今度』 『いつかまた』

あの頃は明日が来るのか不安で、言うのも聞くのも怖かった言葉

でも、今は違う

『おはよう』 『おやすみ』 『また明日』

全部全部、大切な言葉になっていって

大切な友達がいて、最愛の人がいる

明日はどんな一面を見られるのかなって楽しみになりながら明日を迎える事が できるようになった

少し前の真っ暗だった毎日を塗りつぶすように、たくさんの幸せで埋め尽くして

これからも、2人で光の中を歩いていけますように

『君と僕の忌避進路』番外編 fin

本日夜9時、キャラクター裏話と ストーリー裏話を投稿予定です

もしよろしければ、そちらにもお付き合いください