TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

薔薇の花束と手書きのメッセージカード、そして指輪ケース──

愛しい“あの人“のために用意したもの

きっと、気に入ってくれるはず

“あの人“にキモチを伝えよう

ミサキ

……う、……ん

圧迫感を覚え、ミサキは目を覚ました

ミサキ

(……ここは……?)

ミサキ

ミサキ

え? なにこれ……?

横たわる形で木箱に閉じ込められていた

ミサキ

(なんで、こんなところに……?)

手足を縛られ、思うように身動きができない

じょじょに目が慣れてゆき、白い花と葉、枝が底面に敷き詰められている

ミサキ

(どうにかして、外に……)

腕の拘束をほどこうとするが、緊張と焦りでなかなかほどけなかった

ミサキ

──痛っ

枝の先が肌を切った

血がにじむ

ミサキ

……最悪

数十分後

ミサキ

(ダメ……、ほどけない……)

ミサキ

ミサキ

だ、誰か……!

助けを求め声を張り上げるが──

ミサキ

閉じ込められたの! 助けて……!

人の気配が感じられず絶望感に襲われる

ミサキ

ねぇ、誰もいないの……?!

もう気づいたのか──

ミサキ

ミサキ

その声は──

見知った声に安堵した

ミサキ

ネルさん!

ミサキ

ああ、よかった……

ミサキ

閉じ込められて、出られないの

ミサキ

お願い、ここから出して

ネル

出すわけないだろ

ミサキ

え?

拒絶され思わず耳を疑った

ミサキ

ど、どうして?

ネル

ネル

──俺には大切な人がいたんだ

無視するように声を遮る

ミサキ

大切な人?

ネル

“あの人“と恋人同士になれたとき

ネル

嬉しくてたまらなかった

ネル

同棲をしたときも、肌を重ねあわせたときも…………

ミサキ

…………

ネル

ずっと一緒だと、思っていたのに…………

いつの間にか目から涙が溢れた

ネル

セリ

回想

──羨ましい

女である自分とは違い、目を見張るぐらい美しかった…………

妬みから嫌がらせをした

それでもセリは屈せず、余計に苛立った

なによりも気に入らなかったのは、思いを寄せていたネルがセリのそばにいたこと

あいつさえ、いなければ…………

数日後、歩道橋でばったりと会った

セリ

『──こんばんは』

相変わらず美しい

ミサキ

『(……本当、癪にさわる)』

セリに対する不平がたまりまくり、言いがかりをつけた

セリ

『…………』

呆れたような視線を向けられ、ミサキは思わずカッとなり────

どん

セリ

『…………!』

突き飛ばしてしまった

階段から転がり落ち、セリはぐったりと横たわる

ミサキ

『あ…………』

自分のやったことに恐怖を覚え、その場から逃げ出した

そこは人気もなく、ほかに目撃者もいなかったため、幸か不幸か警察がミサキのもとへやってくることはなかったが…………

ネル

警察は階段を踏みはずし誤って転落──、事故として処理した

ネル

ネル

事故だなんて、あり得ない

ネル

セリに限ってそんなの……

ミサキ

ネル

“あの日“、俺はプロポーズするつもりだったんだ

ミサキ

(……プロポーズ? 冗談でしょ?)

ミサキ

(だって、あいつは──)

ミサキ

──男なのに

ネル

性別なんて関係ない

ミサキ

ネル

こんなことになるなら

ネル

もっと早く、お前の息の根をとめればよかった

ミサキ

…………!

ネル

どんなにセリが反対しようとも、殺るべきだったんだ

ミサキ

あたしに近づいたのは、復讐のためだったの……?

ネル

それ以外なにがある?

ネル

俺が愛してるのはセリだけ

なんで、あたしが好きになる人は──

相手がいたり、妻子持ちばかりなんだろう?

ネル

長居しすぎたな

遠ざかる気配を感じ、必死に呼びとめる

ミサキ

待って、どこへ行くの?

ミサキ

ネルさんのことは、誰にも言わない……!

ミサキ

お願い、ここから出して!

ネル

ネル

──せめてもの餞に

ネル

キョウチクトウを一緒に入れたのに、気に入らなかったか?

ミサキ

キョウチクトウ……?

ネル

白い花と葉、枝が敷き詰められてただろう

ミサキ

ミサキ

(確か、キョウチクトウって…………)

ネル

有毒植物だ

ネル

経口はもちろん

ネル

剪定するとき、枝の切り口から出る汁も危ないらしいな?

ミサキは顔が青ざめていく

ネル

飢えと孤独に苛まれて、逝け

そう吐き捨てると、その場から立ち去った

ミサキ

待って、行かないで!

ミサキ

死にたくない!

虚しく絶叫だけが響く

ミサキ

いやぁぁぁぁ!!

半月後

ネル

『今夜大事な話がある』

セリ

『大事な話?』

ネル

『寄り道せずに帰ってきてほしい』

セリ

『わかった』

“あの日“渡せなかった薔薇の花束と手書きのメッセージカード

《I can't live without you》

──そして、指輪ケース

ネル

あんたのいない世界なんて、やっぱり生きれない

薬を口の中に放り込む

ネル

俺もすぐ、そっちへ逝くよ

瞼を閉じた

ネル

──セリ

一筋の涙が頬をつたい落ちる

ネル

──愛してる

この作品はいかがでしたか?

175

コメント

5

ユーザー

ミサキさんが助かる方法は無かったんですね……。人の命は、重いですからね。

ユーザー

有毒植物で処刑する為、参加ありがとうございました!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚