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数週間後
また数週間前と変わらぬような昼休みを過ごす矢羽の姿があった
メモ帳とにらめっこしながら、ペンをゆらゆらさせる
隠しきれない不機嫌な表情に、止まることを知らない貧乏ゆすり
しかし、何もかもが数週間前と同じわけではなかった
「あーあ、疲れたなこの世界で生きるの」
うわ、w
きっつw
飛び交う人生を順当に楽しめている人達の嘲笑に、矢羽は思わず声の元を見つめ、犯人探しをするかのように注意深く様子見する
「花実は全ての気力を失った。もう彼女にあの頃のような生き生きとした光は灯っていない。」
病み落ち展開草
なんか文豪気取りでさすがに笑う
目線に気付かれたのか、彼らは声を潜めて話すようになった
矢羽
再び集中するフリをして耳だけ傾けていると、次第に起こったことを忘れた彼らは再び教室に響くよく通る声で話しだした
「手首からは鮮血が滴り落ちる。気付けば布団はまるで◯人現場のようになっていた。」 さすがにやばくねw
◯人現場てw大げさだな
ま、花実?とやらは痛みに強いんじゃね知らんけど
頭の中で彼らに反論をしかける
「いいよなお前らは幸せで!」
そう、出来もしない妄想をしているのが表情から漏れていたのか、口角も眉毛の位置もなんとなく変ということに気づき、慌てて平静を装う
矢羽
すぐに腕でノートの余白を潰しながら、ペン先を走らせる
気分はまるで極秘情報を扱う探偵かスパイ
矢羽
矢羽
矢羽
連載中の小説のセリフを思いつき次第メモしていると、後ろから視線を感じた
矢羽
田中
田中はいつも通りの笑顔を見せた
矢羽
田中
矢羽
田中
矢羽
滑らかな所作でメモ帳を閉じ、身体を少し後ろへと向ける
田中はまだ弁当に数個のトマトと唐揚げを残していた
矢羽
田中
長針は6を指している
矢羽はこんな日常も話にしてしまえば良いのか、と再びメモ帳に向かった
コメント
2件
田中ちゃんまた弁当残ってる……
田中ちゃんが今のところ唯一の矢羽ちゃんへの善意 陽キャに負けるな!