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神
昔、神は微笑んでいた。
人と人で助け合い、仲間同士で楽しそうに過ごしていく人間を見て。
昔、たくさんの子供が笑って走っていった。
神はそれを見るのが楽しかった。
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神
神は絶望していた。
下界では叫び声がこだまし、笑う人間などいなかった。
自分の欲望のためだけに人を殺す。
あの笑顔はどこへ行った?
あの優しい、愛しい世界はどこへ消えてしまった?
駆け回る元気な子供はどうなった?
神は嘆いた。
神
神
神
たくさんの人間が死んだ。
神がどんなに頑張ろうと、戦争は終わらなかった。
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神
神は笑うようになった。
涙を流しながら。
泣いたあとが痛々しい涙痕となって刻まれていた
戦争はなくなった。
笑う人間も増えた。
同時に。
笑わない人間も増えた。
知恵をつけ、穢れた心を持った人間は
人を陥れるようになった。
暴力を振るって楽しむ子供も増えた。
神はもう、やめることにした。
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神
神は微笑んだ。
たくさんの穢れた心を持った大人の死体を前にして。
神
神
神
神
神
神
神
神
神
神
神
神
神
神
神は久々に腹を抱えて笑った。
やはり神は泣いていた。
嬉し涙か、悔し涙か。
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神
神は笑っていた。
涙は枯れ果てた。
光のない目で
駆け回る子供たちを見ながら
笑っていた。
神は五つになった子供を殺した。
殺した子供のことを、他の子供には忘れさせた。
でも、神だけは覚えていた。
泣き叫ぶ子供の顔を。
生きたいと願う子供の声を。
忘れられなかった。
忘れてはいけなかった。
これが神の望む世界だ。
穢れた人間などおらず、
ひたすら幸せそうに笑っている。
みんな笑ってほしいと願っていた。
人間みんなが幸せであってほしいと。
でも、そのみんなに神は含まれていなかった。
神だけは、笑わなかった。
それでも、この結末が、
神
今日も、みんなが笑っていた。