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思いっきし泣いた(´;ω;`) 目が腫れそう 無理、尊い、死ぬ
ふぁ!?もしかしてpixivやってます!?
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
注意!! ・地雷さんはUターン! ・青黒です ・ハロウィンネタ第2段👻 ・不安になりがち黒さん参戦((( ・nmmn
月見。
黒
青
とある休日の昼下がり。賑わう街の中で、その場の雰囲気に似合わない声色が、そんな言葉を吐き出した。
隣に立っている彼へと視線を向ける。その視線は、とある店の店頭に飾られたカボチャの置き物に向けられていた。
もうすぐハロウィンだ。世間はすっかりハロウィンムード。歌い手グループとして活動している俺達も、そんな行事に乗じた準備をひっそり進めているのだが・・・。
隣に立つ彼の表情は、何処か浮かない顔をしてた。
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彼の名前を呼べば、彼はゆっくり体の向きを俺の方へと変えて、小さく笑った。
黒
青
スタスタと先を歩き始めてしまったあにきの後を慌てて追う。
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彼はもう、いつも通りだった。見慣れた笑顔で、聞き慣れた声色で、いつも通り。
それでも、あの時聞いた彼の言葉。何処か沈んだ声色に、悲しげな表情。
その全てが、俺の頭から離れなかった。
どん底から掬い上げられて、魔法にかけられたシンデレラはカボチャの馬車に乗って舞踏会へ行きました。
0時、魔法が解ける前にと走るシンデレラが落としたガラスの靴を拾った王子様は、その靴がぴったりな人を探しに出ました。
シンデレラの元へと巡って来た時、母や姉がその靴を思うように履けないでいる中、シンデレラだけはその靴がぴったりでした。
あの夜を共に踊ったのが彼女であると知った王子様は、シンデレラを城に迎え入れ、二人は幸せに暮らしました。
───めでたし、めでたし。
昔、読み聞かせで読んでもらったことがあるそんな話を思い出していた。
もうすぐハロウィンだった。街に出ればあちこちにカボチャや魔女の帽子、黒猫の置物なんかが置いてあって、ふとカボチャの馬車を連想して。
一人シンデレラの話を思い返している時、俺の耳に明るい声が届いた。
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声のした方へと視線をずらせば、そこにはお母さんの隣をニコニコと笑って歩く小さな女の子。
その腕の中には、シンデレラの絵本が大事そうに抱えられていた。
楽しそうに会話を重ねる親子が去って行くのを、俺はぼんやりと見つめていた。
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王子様と結ばれる手がかりとなるガラスの靴。シンデレラにとって、幸せの権化。
・・・何百、何千、何万分の一の幸せを、シンデレラは掴み取った。
もし、魔女が彼女の元に現れなかったら?
もし、彼女が靴を落としていなかったら?
もし、彼女のところに辿り着く前に、他にガラスの靴がぴったりの人が現れていたら?
いくつもの奇跡が積み重なった話。お手本のような幸せ。
どんな幸せだって奇跡で出来ていて、当たり前なんて何処にもない。
その幸せが壊されてしまう可能性が0になることなんてないし、今ある当たり前が崩れる日が、いつか来てしまうかもしれない。
・・・この幸せが、壊されるくらいなら。
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ぼーっとしていた俺は、顔を覗き込んで来たないこにはっと我に返り、なんとか返事をする。
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その場を後にする彼の背中を見送り、俺は少しの間その場から動かなかった。
この時何を考えていたかと聞かれれば、言葉にして答えるのは難しい。
それから少し経って、風呂からシャワーの音が聞こえて来て、俺の思考はぼんやりと回っていた。
窓の外には、もうすっかり暗くなった夜の街が広がっていた。
ぱたんと小さな音を立てて、扉が閉まった。
誰もいなくなったリビングに、お風呂から聞こえるシャワーの音だけが微かに響いていた。
賑やかな街の中。夜も遅くなったというのにハロウィンムードが未だ消えないこの街は、俺には嫌に眩しかった。
仮装をして楽しそうに歩く女子、そんな余興に付き合っていられる純粋さも無邪気さも社会に奪われてしまったスーツを着た男性、周りの目を気にも留めず大人数で溜まって騒ぐ大学生。
いつもより明るくて、騒がしい世界。
この明るさが、騒がしさが、溢れる人混みが、どうか俺を消し去ってはくれないだろうかと。
そんなことを考えながら、俺は何処へ行くとも決めないまま足を進めた。
リビング、部屋、寝室、トイレ、家中を歩き回って、玄関に辿り着いた俺は、暫くの沈黙の後、重い口をゆっくりと開けた。
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吐き出された声は、彼の靴が姿を消した玄関に寂しく消えて行った。
どのくらい歩いただろう。
ここは何処で、今は何時だろうか。
スマホも財布も、全て置いて来た。どんな小さい荷物だって持たずに、この身一つで外に出て来た。
中途半端に捨てたりなんかしない。全て脱ぎ捨てて、逃げてしまおう。
もしまろが俺を探す手がかりになるような、そんなガラスの靴みたいな物があるなら、自分から脱ぎ捨ててしまうから。
・・・その拍子に、割れて仕舞えば良い。
ガラスで出来ているくらい、きっとこの幸せは脆くて、衝撃を受けたら簡単に壊れてしまうから。
何かにそれを壊されて絶望へ突き落とされるくらいなら、自分から・・・。
やっぱり、何か悪いことの前兆だった。
あの日の、彼の言葉。あの時強引にでも彼に詰め寄って、その真意を尋ねれば良かった。
自分の表情が歪んでいくのが分かる。何も言わずいなくなったあにきへの怒り?違う。いや、一人で勝手に変な勘違いしていなくなった彼への憤りは勿論あるのだが。
・・・彼が抱えていたのであろう不安に、気付いて助けてあげられなかった自分の不甲斐無さへの怒りだった。
夜の街を全速力で走る。ハロウィンのお祭り騒ぎで賑わう街の人の多さが、今の俺には鬱陶しくて仕方が無かった。
財布もスマホも、彼の私物は全て家に置きっ放しになっていた。
ただ彼自身、その存在だけが忽然と姿を消していた。
連絡も取れなければ、彼の元へ辿り着けるような手がかりなんて何一つとして俺に与えられていなかった。
まるで、探すなと言われているかのような。
シンデレラの王子様ってさ、シンデレラの元に辿り着く前にその靴がぴったりな人に会ったらその人と結ばれてたんかな
あの時の彼の言葉が蘇った。
・・・シンデレラ。
素敵なお姫様を見つけた王子様。0時を迎えようとする時間に慌てて去って行く彼女をそのままただ見送ることが出来ないくらいには、彼女に心惹かれていて。
ガラスの靴という彼女が落としたたった一つの手がかりを手に、また彼女と巡り合う為に沢山の家を回る。
そうして、再び見つけたお姫様。ガラスの靴が繋いでくれた二人の運命を、幸せを噛み締めて、王子様はシンデレラを城に迎え入れ、二人幸せに暮らした。
あにきの考えていることが、そのままそっくり分かる訳じゃない。
・・・でも一人胸に不安を抱えて、良くない方向に考えていることくらい、嫌でも分かる。
だから、蓄積された疲労に悲鳴を上げる自分の脚なんて無視して、ひたすらに走る。
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シンデレラの王子様だって、きっとそうだったんだろう。
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随分遠くに来た、気がする。
眩し過ぎる街の明かりからも、人々のはしゃぐ声からも、大分離れてしまった。
ただ、冬が近付いた秋の肌寒い空気が、静かに俺の身を包んでいた。
ハロウィンのこの夜、もし悪霊がいるのなら。
どうかこのまま、俺を彼に見つからない場所へと連れ去ってはくれないものか。
──彼との、出会いだって。
黒
偶々俺が、俺の歌が、彼の目に留まっただけ。
俺よりも歌が上手いやつなんてこの世にごまんといる。まろがそんな奴らの中の誰か一人を見つけるのが、俺を見つけるよりも先だったのなら。
・・・今あいつの隣にいるのは、きっと俺じゃないんだろう。
俺は恵まれ過ぎてた。こんな沢山の奇跡が溢れた幸せを永遠に享受出来るのは、童話の中の登場人物だけだ。
俺に、そんな資格なんて無い。
だから自分から投げ出すんだ。俺の方から手を離すんだ。
・・・こんな俺のことなんて、見つけてくれなくていいから。
黒
何も言わずに逃げ出して、連絡手段も手がかりも全部置いて来た。しかも何も考えずここまで来たのだ。俺自身もう何処かも分かってないこんなところに、彼が来る筈がない。
・・・来る筈が、ないから。
──後方から聞こえてくる足音だって、俺には関係が無い筈なんだ。
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孤独の空気を切り裂いた大声と共に力強く掴まれた左手が、グイッと引っ張られ、俺の体は後ろを向く。
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なんで、と呟いた筈の言葉は、何一つ音にならなかった。
息を切らして肩を上下させるまろが、逃がさないとでも言うかのように真っ直ぐな視線で俺を捉えていた。
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瞬間、様々な考えや言葉が浮かんでは消え、消えては浮かんで。
震える唇が、そっと口を開き冷たい空気を吸い込んだ。
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きっと、俺じゃなくても良かった。
それが、偶々俺だった。まぐれの出来事。奇跡の出来事。
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パン、と乾いた音が響く。
左頬を襲う衝撃に、ぶれる視界。
じんじんと熱を帯び痛む頬に暫く呆然として、ゆっくりと顔を上げた。
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ワナワナと震える彼が、依然として俺を真っ直ぐ見つめていた。どんな時でも俺を見つめるこの真っ直ぐな目が苦手で、愛おしくて、大好きだったな。
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静かな夜の二人だけの空間に、彼の真剣な声が凛として響く。
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張り詰めた空気の中、叫んだまろはそこで一旦言葉を止めた。
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さっきまでの勢いも声量も無く、ただ懇願するような、か細い声で。
俺のことを突き飛ばすことも、無理矢理抱き締めることも、まろには出来るのに。
恐る恐る、壊れ物を扱うかのような手付きで、そっと俺を抱き締める。
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こんなに、自分勝手な俺なのに。
一人で不安になって嫌な未来を考えて、挙句それに耐えきれなくなって勝手に逃げ出して、迷惑ばかりかけているのに。
どうしてまろは、それでも俺を求めてくれるんだ。
溢れる気持ちは沢山あった。でもこれ以上何か一言でも言葉を発せば、それと同時に涙が溢れてしまいそうだったから。
今の俺に、泣く権利なんてないのに。
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彼の服にシミが出来る。・・・我慢、してたのに。
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どうして、そんな自信を持てるんだ。
俺は簡単に、恐怖に支配されて怯えてしまうのに。悪いもしもを想像して、逃げる様に走り出してしまうのに。
そんな俺の手を、まろは引いてくれる。
その手の温もりが、何よりも強力な魔法のようで。
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抑えきれなくなった涙と、本当の気持ち。
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カボチャの馬車も、綺麗なドレスも魔法も。
ガラスの靴も、何もいらない。
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ただ隣に、君が居てくれるなら。