テラーノベル
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私は、しばらく目の前の現実を信じられなかった。
宮城
玄関に入った瞬間、視界に飛び込んで来たのは、"血痕"だった。
そこには、まるで大きな水溜りの様に、血が広がっている。
宮城
生臭い。
私はここで今すぐに吐いてしまいそうなほどの吐き気を感じる。
とっさに口と鼻を押さえた。
宮城
吐き気を必死に堪えながら、私はリビングへと進んでいく。
そこで私は、これの何十倍、いや、何百倍も信じられないくらいの光景を目にすることになる。
宮城
私は、あまりの悲惨さに言葉を失う。
もはや笑いが込み上げて来そうなほどに、現実が信じられなかった。
宮城
頭が真っ白になる。
もはや先程まで堪えていた吐き気すら消え失せるほどに。
宮城
そこには、東北のみんながいた。
死体となって。
いや、衝撃を受けたのはそれだけじゃない。
山形
山形
宮城
唯一山形が生き残っていた。
それだけなら良かった。
むしろ、そうであってほしかった。
山形は、
山形は………
なぜみんなを食べているのだろうか。
山形
山形
宮城
宮城
山形
山形
山形
山形
山形
ニコニコとした笑顔でゆっくりと話す山形。
いつも通りなはずなのに、今は狂気すら覚えてしまう。
逃げないと、逃げないと………。
でも、恐怖で身体が動かない。
まるで縛られているように。
山形
山形
山形
山形
山形
山形
山形
山形
宮城
本当は今すぐに叫びだしたかった。
でも、喉がそれを許さない。
宮城
叫ぼうと必死に声を出そうとするが、口から出るのは蚊の鳴くような声だけだった。
ありえないほどに心臓の鼓動が早まっている。
それは、まるで心臓すらも恐怖を感じて震えているのかと思うほどだった。
鼓動を少しでも落ち着かせようと、胸に手を当てる。
その時。
"コツン"
手に硬い何かが当たった。
宮城
「緊急都市装置」
この存在を思い出す。
この装置は、七大都市にのみ配られる、緊急装置。
一度だけ使えるのだ。
宮城
私は、
力いっぱい、装置を身体から引き抜いた。
ブザー音が鳴り響く。
山形
今、この最初で最後の一回を使ってしまったのだから、何が起きるのかは私にもわからない。
山形
ドサッ!!!
山形が倒れた。
宮城
どうして山形は倒れた………?
「宮城!!!」
宮城
誰かの声を聞きながら、私は意識を失った。