顧問
顧問
顧問
日も長くなった部活終わり。顧問が部員全員を招集して演説を始めた。
あくびを噛み殺している人は今は誰もいない。誰もが顧問の話に耳を傾けていた。
それだけ先輩の短期指導の影響が凄かったと言うことだ。 ____俺も影響を受けた。
柔和で爽やかな雰囲気を醸し出している先輩を、視界に入れないように顧問の話に耳を傾けていた。
先輩の簡単な挨拶やコート整備を終えると部員全員の飲み物が置いてあるコートの角に向かった。
さっさと部室に引き上げて帰ろうと思ったけど、俺のペットボトルの下にメモ用紙が挟まっているのに気づいた。
広げてみると整った文字で
「先輩命令。俺が帰るまで待っとけ」 ___とだけ記されていた。
差出人の名前が無くても誰からか分かった。 一瞬だけど捨ててしまおうかと本気で思った。
俺が元通り折り畳んでいると、すぐ後ろに誰かが立つ気配がした
溝口 圭佑
振り返る前に小声でそれだけ言ってその人はすぐに離れて行った。
俺はメモ用紙を乱暴にポケットに突っ込むとペットボトルを持ってコートを後にした。
部室で着替えを済ませて出て来ると、テニスコートにはまだたくさんの部員が残っていた。
その真ん中にいるのは仮の姿の先輩だ。
俺はそれを横目で見ながら校門をくぐった。
俺が本当の意味で先輩と向き合った、最初の曲がり角で20分くらい待っていると先輩が来た。
俺がここで待っていることが分かっていたかのように、先輩は顔色1つ変えなかった。
「この後予定ある?」と訊かれたので「勉強します」と答えたら「どうせ集中出来ないくせに」と一蹴された。
ムカつくけどその通りだった。
__向かった先は駅だった。
先輩は迷わず改札に向かうので、慌てて電車賃を持って来てないことを伝えた。
先輩は百円玉2枚を俺に放ると隣の町までの切符を買うよう指示した。
___ラッシュ時に比べたら全然マシだけど、電車内は混んでいて席は空いていなかった。
ドア付近で「どこに行くんだろう」と思いながらぼんやりと流れる景色を眺めていると、先輩が口を開いた。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
山崎 孝太
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
山崎 孝太
言ってる意味がよく分からなくて先輩の方を見た。
先輩は俺の方を見ずに窓の外を眺めたまま、吐き捨てるように言った。
溝口 圭佑
俺が口を開く前に、電車が次の駅に到着した。
ドアが開くと同時に先輩は俺の顔も見ずに電車を降りた。慌てて追いかけた。
この駅で降りるのは初めてだけどあたりを見物する余裕は無い。 人波をかき分けてスタスタと歩いて行く先輩を見失わないようにするのがやっとだ。
先輩は1言も喋らなかった。
駅を出てマンションが立ち並ぶ一帯を抜けると
高級住宅街に出た。
ガレージに3台も車を停めてる家が何軒もあるし、どの家も門から家までの距離が長い。
テレビや子どもの声が漏れ聞こえて来る家はどこにも無い。 強烈な場違い感を抱きながら先輩の後をついて行くと
先輩は住宅街の端、一際大きな造りの家の前で足を止めた。
「溝口」の文字が彫られている白い表札の横に設けられているインターホンを先輩が押すと、女の人の声が返って来た。
溝口 圭佑
坊っちゃん?
溝口 圭佑
先輩は女の人が言い終わらないうちに、自分の背丈より大きな門を開けた。
俺の部屋の2倍以上ある広大な芝生の庭が目の前に広がった。 先輩は一切振り返らずに歩いて行く。
本気で帰ろうかと思ったけど、ここまで来て帰るのは惨めな気持ちに拍車をかけるだけだ。 そもそも電車賃を持って無い。
覚悟を決めた。
山崎 孝太
溝口 圭佑
俺は綺麗に整備された芝生に足を踏み入れた。
漫画とかドラマでしか見たことがない「お金持ちの家」がそこにあった。
敷かれている絨毯も壁にかけられている絵も、たぶんゼロが5個以上並ぶ値段の物だと思う。
もしかして土足なのかも…と思ったけどそこはそうでもなかった。
インターホンの女の人__たぶんお手伝いさん__がニコニコしながらスリッパを出してくれた。(フサフサしてる)
俺がフサフサもふもふしたスリッパに大変恐縮している間に先輩はさっさと靴を抜いで家に上がった。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
先輩はいつもより少し早口でそう言うと上階に続く階段を上がって行った。
お手伝いさんは、上の階のどこかでドアを開閉する音がしたのを確認すると俺に向き直った。
山崎 孝太
山崎 孝太
お手伝いさんは鼻歌を歌いながら歩いて行った。
ああ見えてとても努力家なんですよ
__一瞬だけその言葉が引っかかって 一瞬だけその場から動けなかった。
リビングも相変わらず広くて豪華だった。
__最後まで俺を友達だと勘違いしているお手伝いさんは、着替えと飲み物を出すと早々に引っ込んだ。
お手伝いさんが用意してくれた服にとりあえず着替えると俺はリビング全体を見渡してみた。
外国の宮殿のようなリビングの一角に たくさんのトロフィーや賞状が陳列されている棚があった。
その数はたぶん百を越えている。先輩とそのお父さんの輝かしい実績___
___の中にいくつか写真立ても並べてあった。
写真立てに納まっているのは 小学校に入学する前くらいから小学校高学年くらいまでの歳の男の子の写真だった。
全国大会優勝のトロフィーを持って はにかんでる写真だったり ラケットを持ってお父さんとのツーショットだったり…
写真の中の男の子は先輩に似てる気がするけど
腕も足も心配になるくらい細くて白い。 華奢と言ったら聞こえは良いけど、言ってしまえば病弱そうな印象の___
溝口 圭佑
戸口から声がした。 練習用のシャツに着替えた先輩が立っていた。
先輩は写真立ての前まで来ると色白で痩せてる男の子を見下ろした。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
先輩は、幼い男の子とお父さんのツーショットが納まっている写真立ての縁を指でなぞった。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
先輩は写真立てから顔を上げると立ち尽くしている俺に向き直った。 ナイフのように鋭い光をたたえた瞳が俺を射抜いた。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
放たれた言葉はもっと鋭かった。
大きな声を出していたわけじゃないのに先輩の声はいつまでも頭の中で響いていた。
先輩は息を吐くと俺から視線を外す。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
先輩は 玄関へと続くドアでもなく勝手口でもなく
リビングに設置されているもう1つのドアを開けた。
一面緑の
綺麗に整備されたテニスコートが目の前に広がった。
部活や昔通ってたテニススクールのコートよりも鮮やかな緑だった。
先輩は倉庫らしき所から、ボールがたくさん入った籠とラケット2本を取り出すと片方を俺に突き出した。
持ち手もフレームも傷だらけだけどよく手入れされた、使い込まれたラケットだった。
溝口 圭佑
___何が、と聞く前に先輩が続けた。
溝口 圭佑
溝口 圭佑
溝口 圭佑
コメント
3件
先輩の過去の話もなんか切ないですね... 前まで結構先輩嫌な奴だと思ってたんですけど今回で結構変わりました!本当はいいひとなんですね...✨(語彙力)でもやっぱり私は孝太君澪さんファンなのでそちらを応援させていただきます。笑笑 今回のお話も最高でした...✨次回も楽しみにしてます!!!!! そして、今回の話には澪さんが出てこなかった...&次回で2章完結... 寂しい...(笑)
元カレ君「次回第2章完結です」 吉田「真面目か」 吉田「作者がTwitterでオレとセンセーのBL書いてたな」 元カレ君「あー俺がひたすら凌辱されるやつ…」 元カレ君「……それより俺たちがコメ欄にいるから柚月君が奥に引っ込んじゃったな」 吉田「あんなビビりほっとけよ」 元カレ君「……」 読んでくださりありがとうございました❗