TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

もういたくない

一覧ページ

「もういたくない」のメインビジュアル

もういたくない

1 - もういたくない

♥

150

2021年09月04日

シェアするシェアする
報告する

初めて行ったことは大抵失敗するものだ

料理にしろ、運転にしろ、勉強にしろ

無知な状態から、成功を修められるのは 限りになくゼロに近い

だから、私の試みも当然の如く 失敗したのだろう

意識が遠くなっていく中で、私がさいごに思ったのは 「もういたくない」だった

██

あれ?

気がつくと、私は見知らぬ場所に立っていた

家々に囲まれ、草木が手入れされずに生い茂っていた

考えても、私の記憶にヒットしない場所

そうして、さっきまで私は何をしていたのかを思い出す

「ああ、死ねなかったんだ」

初めての試みだった

初めてにしたくない試みだった

でも、やるしかなかった

ずっと会社に勤めてきた

ずっと嫌味を言われてきた

ずっと任されてきた

ずっと責任を負わされてきた

██

でも、しょうがなかった

会社に勤めていたのは、金のため

嫌味を言われたのは、無能なため

任されたのは、断れなかったため

責任を負わされてきたのは、弱かったため

原因は私にあるということに、どうしようもなく気づかされて

大丈夫?

やってくれてありがとう!

仕事代わろうか?

そんな言葉を期待して、ずっと頑張ってきたのは私で

██

・・・

あれ?そうだっただろうか

私は、私はそれでも頑張ってきた理由は…

「なんだったっけ?」

██

・・・

玄関の目の前に私は立っている

ここは私と彼女の家だ。いつも見慣れている家

ドアノブを掴み、引けば同居人が私を待っているはずだ

なのに

どうしてか、私はドアノブを掴むのを躊躇っている

生まれてこのかた、感じたことのない嫌な予感が背筋をなぞる

しばらく立ち止まっていると

ガチャ

と、音が聞こえた。鍵を開けた音だ

そうだ、なんで私は鍵を持っていないのだろう

私は今、何も持っていない

そんなことに今さら気づいていると

紗良

・・・

██

…紗良

同居人がドアを開けた。

紗良

…いってきます

紗良は、浮かない顔で、私を通りすぎた

██

おい、待ってくれよ

紗良は私の声を無視して行ってしまった

██

・・・

私は彼女についていこうとした

しかし、動かない

さっきの嫌な予感が、私を止める

私は何かを忘れている。 それも一つじゃない、たくさんの大切なことを忘れている

「まだ、忘れられたくない。忘れたくない」

私には心配してくれる同僚がいた

それも1人ではなかった

それでも、私は存在しない悪意に晒されて

透明な檻に囚われて

思考を放棄した頭の中には

「死にたい」 という言葉だけが残留していて

だからかな

私が紗良について行って、目にした光景は

さっきの嫌な予感が指し示した答えは

「ゼロに近いことを私は成し遂げたんだ」

それは、当然だった

██

ハハッ、なんだ

██

やっぱり死んでたんじゃないか

私の写真が飾られて、周りの人間は泣いていた

…泣いていた?

██

どうして?

私のことが嫌いだったんじゃないの?

私が無能だったからじゃないの?

じゃあ、結局私は

██

ただ、1人で野垂れ死んだだけか

被害妄想に塗りたくられた世界は、きっと美しかったんだ

その世界に私は溺れていたんだ

そして、溺れ死んだ

本当はこんなにも愛されていて

信頼されていて

友人がいたというのに

██

なんだよ…

██

・・・

私の死に顔は、酷く痛々しかった

「もういたくない」だって?

嘘を言うなよ

私はまだ、いたい

胸がこんなにも痛くて、居たいのに

遺体の私は何も言わない

もう遅いんだよ

██

ああ、そっか

██

もう、居れないんだ

██

もう、痛くないんだ

██

もう、いけないんだ

私は、ただ、そうやって理解して

ボソッと、呟いた

「ありがとう」

この作品はいかがでしたか?

150

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚