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太宰治

え、え……? あ、敦くん……?

私は戸惑いを隠せなかった。

中島敦

はあー! なかなかシナリオに外れたことを言うのに時間がかかりました。

中島敦

本当はあなたの名前を聞いた時からピピンと来てたのに。

敦くんは抱きしめた私の腕を、そっと優しく撫でる。

太宰治

ほん、と、本当に、敦くん、なの……?

中島敦

言ったでしょ。僕は中島敦だって。

太宰治

で、でも、それは物語の……

中島敦

なら、なんで俺があなたを先生だなんて呼ぶんですか。

太宰治

あ……

敦くんだった。

愛おしい、あの時の敦くんだった。

私は嬉しくて、嬉しくて、仕方がなくて、幼子のように敦くんに泣きついてしまった。

彼は、優しく私が泣き止むのを待っていてくれた。

中島敦

……落ち着きました?

首を縦に振る。

中島敦

もう、そんなに泣くことないのに。

太宰治

だって、ずっとずっと焦がれていたんだ……

太宰治

君のことを少しでも思い出すたびに、君を好きになって……

太宰治

それに、どうしても、謝りたくて……

敦くんは鼻で笑った。

中島敦

謝るだなんて。何に対してです?

本気にしていない、笑いだった。

太宰治

……君を、裏切るようなまねをして、本当に申し訳なかった……

太宰治

君が死んでから、毎日、私自身が憎くて、悔しくて

太宰治

だけど、死んでしまった人を永遠に追いかけるのも、よくない気がして、忘れようとしたんだ。

だけど忘れられなかった。

太宰治

だから、あの世で君に会ったら、謝ろうと言葉も考えてきたのに……

私の目にはまた涙が浮かぶ。

太宰治

君を目の前にしたら、謝罪の言葉じゃなくて、感謝の言葉しか思い浮かばなくなっちゃった

中島敦

……そう

太宰治

君に出会えたことが、奇跡みたいで、

太宰治

いつもが、充実してた。

涙は、もう止まってはくれなかった。

君より四歳も年上なのに、恥ずかしいとも思ったが、それより君に会えたことが嬉しくて。

太宰治

ありがとう……私を覚えていてくれて

太宰治

こうして、敦くんと過ごせて、毎日が幸せなんだ……

中島敦

……小っ恥ずかしいことを言うのは、今も昔も変わってませんね。

敦くんの顔は、先ほどのような本気にしていない顔ではなくて、

真摯に受け止めてくれる、あの時の真面目な敦くんだった。

中島敦

あんなこと、言ってしまったけど……

中島敦

あなたのことは、きっとずっと好きだったんでしょうね。

中島敦

だから、ついこうして話しかけてしまった。

中島敦

僕も、あなたのことが忘れられなかったんです。

彼は優しく微笑んだ。

太陽のような温かい笑顔だった。

私は改まったような顔で、彼の手を取る。

中島敦

彼は何かを察したような笑みで、こちらを見つめる。

太宰治

敦くん

中島敦

なんでしょう

太宰治

今度こそ、私の恋人になってはくれませんか

顔がほてって、乾いていない涙のせいで、うまく彼の顔が見れない。

だけど、ぼんやりとした輪郭が笑んでいることだけはわかった。

中島敦

もう、俺を裏切りませんか?

太宰治

そのような真似はしないと誓う

中島敦

俺以外の人に告白も、心中の誘いも、一人で勝手に入水したり、……しませんか?

太宰治

君が私の光だ。光がある今、そんなことはしない。

中島敦

……俺、結構欲深いけれど、それでも、いいんですか?

太宰治

君じゃなくちゃダメなんだ。

太宰治

過去も、今も。

彼は輝いた太陽のような、朗らかな笑顔で、

中島敦

それなら、あなたの恋人になってもいいですよ

なんて目に涙を溜めて言うものだから、私もつられて、涙がまたもや目から溢れる。

愛してる

二つの声が同時に重なった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

楽しんでいただけたら、幸いです。

もし、リクエスト等がございましたら、このコメント欄に書いてくださると嬉しいです。

あなたも君も裏切り者

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