雨を弾くほど真新しさのある学ランから、 中学一年生だろうと思う。
この天気の中、少年は晴れやかな笑顔を俺に向ける。 幼さは残っているものの、整った顔立ちだ。
ア ル フ レ ッ ド .
俺 が 先 だ か ら 、
お に ー さ ん 今 日 は
あ き ら め て よ
お に ー さ ん 今 日 は
あ き ら め て よ
ア ー サ ー
な ん で …
俺がそんなことをしなくちゃいけないのか。
ア ル フ レ ッ ド .
同 じ 日 に 同 じ 場 所 で
ふ た り で 死 ぬ の っ て …
ふ た り で 死 ぬ の っ て …
ア ル フ レ ッ ド .
な ん か 、ダ サ く な い ?
ア ー サ ー
い や 、知 ら ね ー し 。
お 前 が や め た ら ?
お 前 が や め た ら ?
ア ル フ レ ッ ド .
え ー 。じ ゃ あ 、
ど っ ち が 先 に 死 ぬ べ き か
相 談 し よ う よ
ど っ ち が 先 に 死 ぬ べ き か
相 談 し よ う よ
ははっと少年は笑った。まるで今から楽しいゲームでも はじめるみたいに。
楽しくて嬉しくてしかたないみたいに。
それは、今から本当に死のうとしているような笑みには、 見えなかった。
っていうか、どうして 「どちらが死ぬべきか」 を話し合わなくちゃいけないのだろう。
見た目からも、明るそうな口調からも、 少年が俺とはちがうことがわかる。
だから 「同じ日に同じ場所でふたりで死ぬのってなんかダサくない?」 だなんてくだらないことを言えるのだ。
そんな軽い気持ちで同じ場所に立っていることが腹立たしい。
ア ー サ ー
俺 は 死 ぬ 。
お 前 が 死 ん で も 。
俺 と 一 緒 が 嫌 な ら 、
お 前 が 諦 め ろ
お 前 が 死 ん で も 。
俺 と 一 緒 が 嫌 な ら 、
お 前 が 諦 め ろ
そう言って、少年に近づき下をのぞき見る。 あそこにたどり着いたらいいだけだ。
制服も心なしか軽くなる。
ア ル フ レ ッ ド .
決 心 が 固 い ん だ ね
ア ー サ ー
当 た り 前 だ ろ
他人と話をし、決意が揺らぐくらいの 気持ちでここに来たわけじゃない。
死ぬなと、死んだら終わりだと、 止める人の気持ちもわかる。
悲しむ人がいることは言われなくても理解している。
それでもなくならない思いを抱きながら、 悩みに悩んで、この決断を下したのだ。
ア ー サ ー
未 来 な ん か 、
も う い ら ね ぇ 。
一 秒 た り と も
も う い ら ね ぇ 。
一 秒 た り と も
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