拾われ系物語

俺は紫

今日はね、俺の家族について聞いてほしいんだ

我が家は6人家族でね

これが俺、28歳

我が家の長男でみんなのお母さん役として育ててきた

この子は赤くん、26歳

俺と一緒にみんなを育ててきてくれた

そして俺と唯一血が繋がっている兄弟でもあるんだ

この子たちは青ちゃんと橙くん、18歳

7年前に俺たちが初めて引き取った双子

笑顔の絶えない我が家のムードメーカー

この子は黄くん、10歳

俺たちが6年前に引き取った子

ちょっと腹黒い一面もあるけどかわいい末っ子

この子は桃くん、12歳

4年前に引き取った子

今日はこの桃くんと出会った時の話、聞いてくれる？

桃くんと初めて会ったのは俺らが児童養護施設へ3度目の訪問をした時だった

視線を部屋の隅に移すと、座り込んで俯く男の子がいた

男の子の前でしゃがむ

初めて会った時は会話もままならなかった

それでも、俺たちはこの子を育てたいと思った

様々な手続きを終えて、桃くんがお試し期間として我が家へやってきたのは１ヶ月後のことだった

無表情で子供とは思えない諦めたような顔

青橙黄は物心つく前から施設にいたから初めは虐待を受けてきた桃くんの扱いが分からなかった

無反応

「はーい！」

初めて会った時と同じように目線を合わせる

今にも泣き出しそうな顔をして俯く桃くん

少し嬉しそうだ

〜その夜〜

赤くんの様子がおかしい

〜食後〜

部屋に物が散乱している

割られた鉢植え

散らかされた絵本やぬいぐるみ

この行動には覚えがあった

「試し行動」

子供が新しい環境に不安を覚えたりした時に大人が何をしたら怒るのかをはかる行動

調べた時にするべきことは覚えた

絶対に怒ってはいけないし、感情的になってはいけない

カ...チャ...

静かにドアが開いた

扉の方を見ると桃くんが覗いている

警戒したように近づいてくる

目に涙をためて俯く

きっと自分が悪いことをしたのはわかっているのだろう

でも、全く叱らないのも良くない

静かに部屋を出ていく桃くん

その後も...

ガシャンｯ!!

何度もジュースをこぼされたり

叩かれたり噛み付かれたり

その度にダメなことを伝え続けて

それでも絶対に桃くんを否定したりはしなかった

そんな事が落ち着いた頃

初めは甘えてくれるのが嬉しかったけど

だんだんと異変に気づいた

気がつくと桃くんが失禁していた

これも試し行動のひとつ

幼児退行、つまり赤ちゃん返りだ

その名の通り、過剰に甘えてきたり、おもらしをしてしまったり、夜泣きが酷かったりと赤ちゃんのような行動をする

これも、落ち着くまでは見守るしかない

そして試し行動の他にも、桃くんは自傷癖があった

目を離すと刃物で腕を切っていたり、手を血が出るまで噛んだり

その度止めて、なだめて、噛み付かれて

そして

正直、あの頃の対応が正しかったのかは今でも分からない

でも、君が幸せと言ってくれるならきっと正しかったのだろう