トレイ・クローバーは あらゆるモノを惹き寄せる体質であった。 いや、惑わすと言った方が正しいだろうか。
簡潔に言ってしまえば、 タラシであった。
それは、人間、他種族、動物、 ついには 人ならざる者にまで。
これは、恋人のジェイド・リーチを 待っていた時の出来事である。
トレイ・クローバー
トレイ・クローバー
昼下がり。 浅い眠りの底から意識が浮上する。 風邪を引き込んだ俺は 熱に浮かされ、 絶対安静を余儀なくされていた。
トレイ・クローバー
トレイ・クローバー
前時計を見た時は昼過ぎだったから 随分長く眠っていたようだ。 しんと静まり返った部屋。 昼間からこの部屋にいることも、 ケイトがいないことも滅多にないから 熱を出した時特有のなんとも言えない寂しさが襲ってくる。
トレイ・クローバー
トレイ・クローバー
うっかり漏れそうになった涙は 熱によるものかはたまた孤独感によるものか。 こういう時やはり真っ先に浮かぶのは 恋人の顔だ。
ジェイド・リーチ。 オクタヴィネル寮、副寮長。 双子のウツボの片割れで 俺の愛しい恋人。
今の時間帯はラウンジのシフト確認でしているる頃だろうか… 連絡が来ていたら嬉しい。 なんとなしにそんな気持ちで マジッターのDMこうとした── …その時だった。
部屋のドアがノックされる音。
トレイ・クローバー
扉の外から聞こえる、今しがた思い浮かべていた愛しい男の声。
トレイ・クローバー
あんまりにもいいタイミングだったから 寂しかったのも相まって つい嬉しそうな声を出してしまうのを 慌てて抑え、平静を装った。
トレイ・クローバー
トレイ・クローバー
トレイ・クローバー
あぁ、俺の恋人が可愛い。 黒い噂に見紛わない可愛さだ。 できれば直接顔を見て話したいものだが そんなことをしては風邪を移しかねない。 人間の病気が人魚にどう影響を及ぼすか分からないからそれだけは避けたかった。 そんな俺の気持ちを汲み取ってかジェイドも外から話しかけてくれている… しかし、そう思っていた思考を彼は上回ってきた。
トレイ・クローバー
トレイ・クローバー
トレイ・クローバー
ここで俺は違和感を覚えた。 ジェイドは聞き分けがいい方だ。 俺がジェイドを気遣ってのことを 理由にしているなら尚更。
トレイ・クローバー
トレイ・クローバー
違和感は確信に変わった。 だって、ジェイドは俺のことを トレイ、と呼び捨てで呼ぶから。
トレイ・クローバー
トレイ・クローバー
トレイ・クローバー
開きっぱなしになっていたマジッターのDMにはいつの間にか返信の通知が来ていたのだ。
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
フロイド・リーチ
メッセージを見るに フロイドに伝言を頼むくらいには ジェイドは忙しいらしい。
だとすると、今ジェイドとして話してるのは誰だ? イタズラにしては手が込みすぎている。
トレイ・クローバー
トレイ・クローバー
叩かれる扉、段々とゆっくり声のトーンが下がって最終的には人間の声かも定かではない地を這うような声音に変わっていく。
「 あ け て 」
「 あ け て 」
「 あ け て 」
「 あ け て 」
俺は防音魔法をかけて眠り直すことにした。
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♣️3
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♣️3
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♣️3
♣️3
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♣️3
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