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あ
801
羽海汐遠
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バツン__!!
キョウカ
暗闇の中、 自分だけに熱々しいスポットライトが 照らされた。
そして、突き刺さる大人たちの視線。
怖い。
呼吸が苦しく、喉が詰まる。
元気に堂々と声を出すことなど、 できるはずもなかった。
先生
先生
先生
キョウカ
キョウカ
皆が中庭で遊んでいる時、 僕はいつも一人だった。
友達が居なかった。
いつも、校庭にある 大きな桜の木の下にいた。
決して日の下には出ず、 影に隠れていた。
明るいのは大の苦手だった。
キョウカ
早く終わってほしい。
何がとかは無い。
この時間も、ここの生活も、 生きることも。
キョウカ
キョウカ
…
そいつは、淡い木陰の中に居た。
一人ぼっちな、僕の隣に。
—9年後—
キョウカ
キョウカ
キョウカ
キョウカ
キョウカ
キョウカ
桜が散り、驚くほど清涼感のある風が 首元を吹き抜ける。
そんなことより、 今日も天からタダ傍観し 熱線を振りまいているあの天体には 最早怒りも沸いてこない。
子供の時と違って 環境も状況も変わったが、相変わらず 明るいとこは苦手だ。
キョウカ
キョウカ
また足を前に出そうとした、その時。
振り返って、塀の影をじっと見つめた。
キョウカ
そこには、誰も居ない。
彼以外には、誰にも見えない。
真っ黒で、輪郭がぼやけていて、 やけに長身の、"影"が突っ立っていた。
キョウカ
振れた帽子を頭に締め直し、 フードをより深く被る。
何事もなかったかのように、 見慣れない通学路を歩き始めた。
ガラ……
がら空きの教室に、 重厚な扉の音が響く。
キョウカ
まず最初に、 窓から差し込む陽の光に怯んだ。
この教室に座席は二つしか無い。
そして俺の席はよりにもよって左側。 日向側とも言える。
最悪だ。
・・ よりにもよって左側から日光が 襲いかかってくるのだから。
_シャッ!!
その後、素早くカーテンを閉める。
落ち着いてフードと帽子を外し、 席に腰掛けた。
明るい教室の中、ここだけ。
ここだけ薄暗く、やけに机が冷たい。
なんとも
なんとも…
キョウカ
目を瞑り、 仰け反ってこの時間を堪能する。
キョウカ
キョウカ
キョウカ
トワ
キョウカ
トワ
トワ
キョウカ
トワ
キョウカ
トワ
トワ
キョウカ
トワ
がしッ
キョウカ
顔を鷲掴みにされ、 顔をじぃっと覗き込まれる。
彼女は口を尖らせ、 眉間にしわを寄せて 俺の面相を睨みつけていた。
トワ
キョウカ
トワ
キョウカ
トワ
キョウカ
トワ
キョウカ
トワ
キョウカ
トワ
キョウカ
トワ
トワ
キョウカ
トワ
キョウカ
トワ
シャッ
キョウカ
彼女がカーテンを思い切り開き、 陽光が梟火に直撃する。
キョウカ
その輝きに我慢しきれなくなった 梟火は、遂にフードを覆い、 鞄を被り机に覆い被さった。
トワ
キョウカ
1週間前に出会ったとは思えない程 息の合った掛け合いは、最早 ここ最近の日課と化している。
俺は人と関わるのが得意どころか 嫌いなのだが、彼女と話すのは そこまで抵抗感が無い。
そういう意味では、 入学直後しつこく話しかけてきた彼女に 少し感謝を伝えるべきなのかも しれない。
トワ
キョウカ
トワ
キョウカ
キョウカ
トワ
キョウカ
トワ
キョウカ
キョウカ
トワ
キョウカ
トワ
キョウカ
トワ
桜が散り、 すっかり新緑が辺りを支配している。
この通りも少し慣れたが、 やはり少し歩き辛い気がする。
トワ
キョウカ
トワ
ずっとこの街に住んでいる。 引っ越しはしたことがない。
だから言える。ここ数年で この街は以前の姿を消した。
大通りにマンションが立ち、 見知らぬ通りや公園が出来上がり
挙句には殆どの木造家屋が 新築に建ち替わりなんかもした。
街の地図が 大規模に変わってしまったのだ。
それこそ、 遠い地に移住でもしたように。
キョウカ
キョウカ
キョウカ
キョウカ
トワ
キョウカ
それでも、楽観視できるほど 普通の出来事というわけでもない。
かと言って、 何か出来るわけじゃないし 何かする理由も特にない。
ただその中でも、 唯一変わらなかったのは…
キョウカ
トワ
彼女は曲がり角で笑顔を向け、 元気に大手を振る。
すぐ真横にデカい人影が立っている というのに、動じないというか 一切触れない。
それはつまり、"自分以外には この影が見えていない"という事。
キョウカ
トワ
キョウカ
キョウカ
彼女が去った後、 風が静寂を運んでくる。
言葉を紡ぐ相手が居なくなったのだから 当然だ。
影はというと、二、三歩こちらに 歩み寄って目の前でこちらを 見下ろしている。
いや、見下ろしているのかは 定かではない。 そもそも目がなく、顔もすべてが 真っ黒な霞みたいな物で出来ている。
だから、何となくこっちを じっと見つめているような気がする というだけだ。
キョウカ
キョウカ
キョウカ
キョウカ
トワ
トワ
トワ
感じたのは、悪寒。
激しいものではないが、 確実に背筋を撫でるような不快感が 彼女を襲った。
トワ
『あれぇ、アンタ知らない感じ?』
トワ
何故。
今まで自分しかいなかった というのに、目の前に突然見知らぬ女が 立っている。
女は吸い込まれるような瞳で こちらをじっと見つめていて、決して 目線を離さない。
トワ
直感で分かる。 この女は関わっちゃいけない、 ヤバい奴だ。
名前を知られているなんてことより 恐ろしい気配がビンビンする。
一刻も早く、この場から 離れなければ。
トワ
トワ
トワ
トワ
_ガシッ!
振り返って駆け始めた瞬間、 手を掴まれる。
恐怖で息を呑み 反射的に女を見るが、変だ。
トワ
女はパーカーのポッケに 両手を突っ込み、5mは離れている。
なのに、彼女の腕は確実に"何か"に 掴まれていて、空に貼り付けに されていた。
コツ、コツ…
ゆっくり、一歩一歩歩み寄り、 逃げ場など無いことを不安や戸惑いと 一緒に分からせてくる。
遂に女の手が、届く。
トワ
トワ
恐怖で、涙が頬を伝う。
怖い。
ただ、無色の恐れが、 胸元から喉元を押しつけていた。
トワ
トワ
トワ
……ドサッ
彼女の身体が脱力する。
しかしその身体は地面に倒れず、 空中で何かに抱きかかえられていた。
勿論、 女は手をポッケに突っ込んだまま。
何かに踵を返し路地を進む。
その後ろを、1m半程浮いた 彼女の身体がついていく。
少し上下しながら、さながら誰かが歩いているように。
両手をパーカーに突っ込んだ女は ピクリとも表情を変えず、 不機嫌そうだ。
しかし突然、口角がぬらりと上がる。
両手を頬に当て俯いた顔には、 まさしく"歪んだ"何かが 張り付いていた。
コメント
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第1話読みました! 梟火くんの、暗がりにしか居場所がない感じとか、小さい頃からずっと影みたいな存在“エゴ”が隣にいるのがもう…すごく気になる。兎和との掛け合いは軽くて笑えるのに、彼女だけがエゴを見えてないっていう切なさもあって。最後の女の人の“エゴ様”って言葉で一気にホラーになった…続きが本当に気になる。丁寧で静かな文体がすごく好みです🥀