テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
あ
801
羽海汐遠
13,853
1,162
コメント
1件
読了しました!第2話、一気に緊張感が走りましたね…。キョウカが一人で帰る寂しさと、エゴが消えた瞬間の不安の描き方がすごく丁寧で、心臓がぎゅっとなりました。そしてあの新たな影の脅威と、トワが囚われている展開——「エゴ様」という言葉の衝撃も含めて、ラストのエゴの呼びかけがもうたまらなく気になります。続きが待ち遠しいです!
カリ、カリカリ…
陽光を遮るカーテンの影の中で、 方眼紙の上にシャーペンを走らせる。
その線に迷いは無い。
キョウカ
線が紡いでいたのは、犬… いや、猫だろうか。
キョウカ
…
キョウカ
エゴ
キョウカ
返事はないが、影は中腰で方眼紙を 覗き込み、じっと見つめている。
キョウカ
キョウカ
キョウカ
時刻は、8時24分。
後30秒でHRが始まる。
というのに、教室に響くのは たった一人の声だけ。
キョウカ
放課後。
結局、トワが来ることは無かった。
担任は無断欠席だと言ってたが、 そんな事をするような奴では ないので心配しているようだった。
キョウカ
キョウカ
一人で帰路につく、寂しさと落ち着き。
つい1週間前までは それが当たり前だったというのに、 何故か懐かしさを感じている。
それが紛れもない彼女のおかげで あることは、すぐに見当がついた。
こういう時は、 いつも自分が一人だと思う。
でも次の瞬間、その思考は覆される。 いつもだ。
キョウカ
キョウカ
居ない。
影が。エゴが居ない。
キョウカ
エゴが姿を消すのは そんなに珍しくもない。
だが、いつもは直前に 自分の姿を確認させたり、 目の前でフッと消えたりする。
"見てない間に"なんて事、今までに 一度も無かったのだ。
だから内心、少しだけ 不安のようなものが渦巻いていた。
キョウカ
キョウカ
ベンチに座り込み、帽子のつばを ぐっと下げる。
被った水色のフードが太陽の熱線を 防ぎ、少しの安らぎが訪れようとした
その時だ。
視界の端に、何か黒いものが見えた。
フードで狭まった視界を そちらに向け、それを発見する。
キョウカ
キョウカ
キョウカ
確かに、エゴに似ていた。
しかし、決定的に姿が_ 体の構造が違う。
まず、頭部や手は黒く霞が圧縮 されたように、輪郭に少しだけモヤが かかっている。
これは同じだ。
しかし、繋がっていない。
胴が薄い暗い霧で出来ていて、 首や腕が無いのだ。
頭、霞の胴、両掌。
これら4つのパーツが、独立して 浮いていた。
そして何より、"目"がある。
薄紫の目が。
キョウカ
キョウカ
キョウカ
キョウカ
キョウカ
ブワッ…!!!
突然、その影の身体が霞み、 爆発的に霧散する。
キョウカ
俺の身体が霧に呑まれ、 思わず身構えたが何事も起きず。
そのまま謎の影は上空へ姿を消した。
キョウカ
キョウカ
どうする。どうする…!
トワが攫われた…?影に、なんで?
それより、どうやって助ける…?
俺以外に見える奴を探すか…
いや、そんなヤツ居るのか? 目処が立たないぞ。
俺一人ってことは、俺に用がある筈だ。
俺に用があって、"影"……
キョウカ
ただ一つ。手がかりはそれだけ。
しかしその唯一の救いすら、 今は居ない。
いや、そもそもあいつが言っていた事は本当なのか?
エゴとは違う、たちの悪い敵対的な 影だという可能性は無いか。
そうだ。まんまと乗せられるな。
落ち着け。 衝動的に行動すべきではない。
…なのに
キョウカ
…そのはずなのに
キョウカ
キョウカ
トワ
キョウカ
衝動的に
なるべきでは、ない
キョウカ
キョウカ
ダッ_!!
キョウカ
トワ
トワ
トワ
「良ぃ〜いタイミングで 目覚めたねぇ…」
トワ
反射的な恐怖で、身震いする。
ジャラ…!
トワ
身体は椅子に縛り付けられていて、 いかにも誘拐されているといった 状況。
それにこの部屋。 人気なんて感じないし、物音もゼロ。
反響のみ、綺麗に聞こえた。
トワ
トワ
女は、パーカーに突っ込んでいた 手を出し頭を掻きむしる。
その隣には見たこともないような、 "生物"…?が居た。
黒い霞でできた胴体。 離れた頭と手。
"何か"そのものは浮いていて、 足すらない。
トワ
トワ
トワ
トワ
女が明るく笑い、つま先で地面を叩く。
チョークさながら人指を一つ立て、 女は話し始めた。
トワ
トワ
女が両手を広げ、後ろ向きに倒れる。
…ドサッ
しかし、地面には倒れず、 寸前であの黒い幽霊が女を抱き上げた。
トワ
トワ
口角がぬらりと上がる。
半開き、ギョロリと剥いた瞳孔。
背筋を直に登るような、 嫌な表情だった。
トワ
ゾクッ_
女の爪が首に触れ、顎に伝う。
トワ
人差し指で顎を引き、見物するように 顔を眺めた。
トワ
トワ
_ブワッ!!!
突如、女の背後から 黒い霧が巻き上がり、部屋の壁に 纏わりついていく。
それでも、女の影。"キリ"は従わない。
「トワッ!!!!」
トワ
キョウカ
キョウカ
トワ
キョウカ
トワ
トワ
ズズ…ッ!!
キョウカ
トワ
警告とともに、天井の一部から 黒い霧が意思を持ったような軌道で 襲いかかってくる。
それは1本、2本と増え、そのすべてが 彼の手足に向かって伸びていた。
キョウカ
戸惑い身構える。が、抵抗むなしく 霧は触手のようにして手足に絡みつき、 キョウカの四肢を壁に叩きつけた。
_ドォン!!
キョウカ
トワ
トワ
カツ、カツ、カツ…
スニーカーを軽快に鳴らし、 愉快な足取りでキョウカに近づく。
同時にポッケから片手を取り出し、 迷いなく胸ぐらを掴み上げた。
…ガシッ。
キョウカ
女は先ほどの様子は全く違い、酷く 激昂した様子でキョウカに詰め寄る。
傍から見れば今のこの女の行動は、 目的も動機もすべてが不可解で謎だ。
そんな不理解が、ここに来るまでの間 彼にも静かな怒りを灯していた。
キョウカ
キョウカ
キョウカ
キョウカ
疑問は尽きない。
何故エゴの名前を知っているのか。 何故怒っているのか。 何故探しているのか。
ともかく、この女がトワを攫った 張本人であることは間違いないだろう。
しかも、この影。
こいつは薄紫の目の影を使役している。
ならば下手に刺激せず、 要求を聞いたほうが良いだろう。
キョウカ
キョウカ
ドゴッ!!
キョウカ
キョウカ
キョウカ
女が襟を掴み上げ、首を絞める。
その甲がどんどん顎に食い込み、 呼吸が浅くなってゆく。
キョウカ
ぐっ……!!
より力を、体重を込める。
苦しい。
息が詰まる。
死ぬだろうか。いや、死んでは この女にメリットはない。多分。
でも、手違いが起これば?
キョウカ
首の筋肉に力を入れ、必死に抵抗する。
しかし、日常的に学校以外出ない 発達期のヒトの首の筋肉なんて たかが知れているのだ。
酸素が微かに気道を通るたび、 首筋が鈍く痛む。
痛みが意識を削っていく。
目は見えるのに、視覚に 意識が及ばない。
思考がままならなくなり、 悪寒と感覚のみが強調されてゆく。
キョウカ
意識の一線。
体内の二酸化炭素が そのラインを飛び越えた時、 視界がぐるんと一回転する。
そしてそのまま、視界は 暗黒に落ちていった。
………イ
…………オイ。
なァ、お前
___いや、"俺"。
エゴ