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主
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主
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主
主
主
しにがみ
僕がそう言うと ペンは再び動き出す
どうして俺の事わかるの?
間違いない、このペンを 動かしてるのはらっだぁさんだ 見えないけど、わかる
あの時から、数えきれない程 時は経ってるのに
僕がペンを走るのをずっと 見ているからか、文字は震えてる 色々な思いに押しつぶされそうに なりながら、ペンはフラフラと 舞って、ことん、と机に 落ち着いた
しにがみ
口にしたことなんてなかったから まるで夢のような心地だった
しにがみ
しにがみ
静かだった 何故だか、外の音は聞こえない サッカーボールが跳ねる音も 吹奏楽部の音色も、テニス部の 掛け声もおしゃべりの声も なんも、なんも聞こえない この空間は切り取られたように しかもらっだぁさんは 見えない。僕は1人で 喋ってるようなものだ
しにがみ
ペンは浮かない 僕の次の言葉を待っている
しにがみ
しにがみ
しにがみ
前世の記憶が フラッシュバックする
地下探索に出かけた
ぺいんとさんを引っ張って 奥にずんずんと進む らっだぁさん
それを見てクスクスと 笑うクロノアさん
僕たちを襲うモンスター 剣を振りかざすトラゾーさん 怪我をした緑色さん 治療をするコンタミさん お互いを守りながら戦う レウさんときょーさん
僕も負けじと剣を振るう 掠めた頬から流れる血 眩む視界、限界は近い 1匹のモンスターを 取り逃がす。
嫌な予感、激しい動悸 その奥には、 らっだぁさんと…
…らっだぁさんの声 駆けつける足音 地面に散らばる アメジストの紫 その真ん中は真っ赤だ! 赤!赤、赤、赤!
真っ赤に染まった、 僕の、僕の親友
しにがみ
そう言った、僕の言葉は 信じられないくらいに 淡白だった
僕が喋らないのを見てか ペンがゆっくりと動き出した さらさらと、1人ぼっちの 空間に響く音
俺が、ぺいんとを殺した
あまりにもすんなり 言われたからか 僕は思わず笑ってしまった
しにがみ
全部俺のせい
ぺいんと、俺のこと 庇った
後ろから来たモンスターに 首を一発
首が繋がってるのが不思議な くらい深い傷だった
しにがみ
違う
しにがみ
違う、そうじゃないだろ らっだぁさんのせいじゃない
ごめんね、しにがみくん
ぺいんとに、幸せに なって欲しい一心だった
今度の世界では 楽しく生きれますようにって
ペンはどんどん動く だんだん速くなって 綺麗で大きな字は崩れてく
人1人殺すくらいの勢いで 産まれてきてくれたら よかったと思ったよ
でも、ぺいんとは また優しく、 生まれてきたから
心配になったんだ だから思わず付いてきたんだ
俺は、ぺいんとが 心から幸せって思える日まで 傍にいる
僕は項垂れる がくり、と音がするくらい
違う、そんな言葉が 欲しかったんじゃないんです
しにがみ
地面に散らばったアメジスト あれは……
しにがみ
しにがみ
しにがみ
こめかみが汗を伝う
しにがみ
しにがみ
しにがみ
しにがみ
しにがみ
本当は、らっだぁさんに 謝って欲しいんじゃない らっだぁさんのせいだって 思ってるんじゃない お前のせいだって目一杯 叱って欲しかった
じゃないと、こんな記憶を 抱えてぺいんとさんの 隣にいるなんて、もう無理だから
昔から感情のない子だって 言われてきた 当たりえでしょ こんな前世の記憶があるんだから こんなにも痛烈な記憶が 自分のせいで死んだ親友を 見たんだ
悟るもん、悟るさ 今更もう、なんも感じないよ
でもさ、 大きな罪を抱えてるのに 裁かれないっておかしい そうでしょ?
僕が何も喋らないのを 見て、らっだぁさんは ペンを走らせた
憶えてるのは しにがみくんだけ?
しにがみ
そっか
次のらっだぁさんの 言葉に僕の世界は揺れた
辛かったね
しにがみ
辛かったでしょ 誰も憶えてない 誰にも言えない
やめてくださいよ なんですか、それ
凄惨な記憶を抱えてること 1人で抱えて、 よく頑張ったね
しにがみ
苦しくて、息を吐いた その息は、脆弱だった こめかみに汗が伝う そのまま頬を流れて、落ちる
……いや、汗じゃない
やめてくださいよ
そんなこと言われたら 僕、弱くなっちゃう
しにがみくんはよく 頑張ったよ
ペンは止まらない 宙に浮いて、文字を 書き続ける
しにがみくんは 誰かに罪を裁いて 欲しかったんでしょ?
前世で、ぺいんとを 死なせちゃった罪を
頷く、頷くことしか 出来ない
裁かれなくていい
許されれば
しにがみ
僕がそう言うと らっだぁさんは大きな バツを書いた
もう許されてるよ
しにがみ
ぺいんと、しにがみくんといて 幸せそうだもん
だから、大丈夫
もう、許されたんだよ
はー、と長い息を吐く 文字はみるみるうちに 滲んだ
そっか
しにがみ
僕がそう言うと ペンはゆっくり動き出して 僕のおでこに こつん、と突き
これからもぺいんとを宜しく
ペンはそれきり 動かなくなった
その瞬間 サッカーボールの跳ねる音も 吹奏楽部の音色も、テニス部の 掛け声も、お喋りの声も 聞こえなかったはずの全ての 音がこの1人ぼっちの空間に 流れ込んできて
僕の啼泣をかき消した
主
主
主